あしながおじさん

ほしいのは、こんな友達/あしながおじさん

「あしながおじさんがほしい」なんて、学生のときによく友達とぼやいていたことを思い出す。

例えば「援助交際」がしたいとか、今でいう「パパ活」がしたいとか(同じか)特に深い意味があったわけではなく、ただ単に「定期的に何もしないでお金が欲しい」くらいの他愛もない会話だったと思うけど、いかにあしながおじさんを読んだことがないかがバレる恥ずかしい会話だったなあと今ならわかる。

あしながおじさんは「不幸な少女がパトロンから寄付金をもらって幸せに暮らしました」なんてお話しでは全然なく、才能を見出された少女が(もちろん初めての自由に多少浮かれはするけど)正しく努力して正しく花開いていくむちゃくちゃに好感の持てる物語なのです。

【あらすじ】
孤児のジルーシャ(ジュディ)に月に一回学校生活の様子を手紙で送る約束とともに、大学にいれてくれるという幸福が訪れる。幸福をもたらしてくれたのは名も明かさない謎の紳士。ジュディは「あしながおじさん」と名付け、日常をユーモアたっぷりに書き綴るのでした。

ジュディは聡明で、自分のやりたいことや素敵だと思うことに忠実かつ真っ正面から向き合うかっこよさもある子です。

初めはあまりの孤児院との生活の違いに驚いたり、戸惑ったり、恥じたりしていましたが、努力することで、年相応のわくわくやときめきを見つけていきます。

納得のいかないことがあると、支援者であるあしながおじさんにもきちんと噛み付いて「怒っている」と伝えるところもかわいくてだいすき。

大学生活が始まってからはすべてジュディの手紙形式で物語が進んでいくのですっかりジュディに感情移入してしまいます。これもジュディの文才がゆえになのかもしれません。

もともと、ジュディが大学に行くことになったきっかけである「文学の才」についても論文が教授に認められたり、自分で小説も書き続けたりとおじさんから見込まれた通りの活躍も少しずつ見せてゆきます。

元気でおてんばのイメージがあった冒頭から、徐々に思慮深い女性に変わってゆくところも手紙を通して伺うことができるのもおじさま目線になれて微笑ましいポイント。

そのなかでわたしが最もだいすきなのが、ジュディが「幸福になるほんとうの秘訣」を見つけたと書いたところです。

おじ様、私は幸福になるほんとうの秘訣を発見しました。それは現在に生きることです、いつまでも過去のことを悔やんだり、未来を思いわずらったりしていないで、今のこの瞬間から最大限度の喜びを捜し出すことです。

さらに、こう述べます。

たいていの人は生活しているのではなく競争しているのです。地平線の遥か彼方の決勝点に一刻も早く着くことばかり熱中して、息を切らせてあえぎながら走っていて、自分の通っている美しい静かな田園風景など目に入らないでいるのです。

このページは何度も何度も読んで、元気をもらいました。わたしはすぐにくよくよしがちなのですが、結局いま自分がどうしたいのかなんだよなあ、といい意味で開き直ることができるのです。

ジュディには本当に幸せになってほしい…。と、すっかり愛おしく思っているととびきりのサプライズが最後に待っているんですよね。

何がいいって、サプライズの部分までも手紙にところ!いかにジュディが動揺し、嬉しかったかがありのまま伝わってきて。こっちまで興奮させておいての最後の二行。とてつもなくキュンとさせてくるの本当にずるい。

『あしながおじさん』気が付いたらわたし何度も何度も読んでいる気がします。そしてきっとこれからも何度も何度も読むんだろうなと思います。




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