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IT介護 -ITを扱えない人たちの介護-

覚える気がない人の相手をする。それは教えるというものではなく、人の仕事を補助するという介護である。これが『IT介護』という言葉の由来です。(本文の最後より)

今日は最近思っていたことを投稿。

「何もしてないのにパソコンが壊れました」、「添付メールってどうやってやるの?」、「気になったWebサイトを開いたら変なのがインストールされました」etc.

noteにアクセスするような人だとこのような質問をされたことを一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

パソコンやスマートフォンをうまく使いこなせないという人はどの職場にも一定数存在していますよね。

私はこういった方に対して、使い方を説明したり代わりに操作したりしてフォローを行うという行為に対して『IT介護』という言葉を広めていきたいと考えています。

IT介護とは

本投稿でいう『IT介護』とは、

「ITリテラシーのない人へ、パソコンやスマートフォン等の情報機器の操作方法、ExcelやWord等のアプリケーションの操作方法、ITを使った業務運営の支援を過度に行うこと、またかれらの代理として行為を過度に行うこと」

を総称した概念となります。

IT介護という言葉はもともとSNSで出てきた言葉で、最初に取り上げたのは以下の記事。

ただし、こちらの記事では『IT介護』の概念について説明をしていません。また、SNS内でも『IT介護』という言葉が何なのかということは議論されていませんでした。そのため、上記の定義で、私が勝手に『IT介護』について定義し、今後の議論の土台を作り上げていきたいと考えています。

以下では上記の定義について、詳細を説明していきます。

ITリテラシーのない人

先ほどの『IT介護』の概念の説明では、「ITリテラシーのない人」に対する行為として大きく3つの行為について分類を行っています。

ではそもそも、「ITリテラシーのない人」とはどのような人なのでしょうか。「ITリテラシー」については以下のような説明がされてます。

コンピュータやスマートフォンなどの情報機器や、インターネットなどの通信ネットワーク、ネット上のサイトやサービスなどを活用し、自らの目的を達するための情報の取得や評価、加工、作成、公開、伝達などができる能力「IT用語辞典 e-Words」より参照(参照日:2020.12.27)

端的に言えば、自分の目的のためにITというものを使うことができる能力が「ITリテラシー」となります。

このため、その逆を指している「ITリテラシーのない人」とは、

自分の目的のためにITというものを使うことができない人

ということになります。

そんな彼らのためにどのような行為を行うことが『IT介護』になるのかというと、それは次の3つの行為になります。

1.操作方法の支援

パソコンやスマートフォン等のIT機器の操作方法、ExcelやWord等のアプリケーションの操作方法の支援を過度に行うこと

使いこなせる人にとっては何でもない行為でも、IT機器、アプリになれない人にとっては、どうすればよいのかわからないということが多々あります。

・パソコンの電源の入れ方がわからない。
・Excelのマクロの使い方がわからない。
・インターネットへのつなぎ方がわからない。etc...

IT機器、アプリ問わずこのような初歩的な操作について支援する行為も『IT介護』の一つの要素となります。

2.業務運営の支援

ITを使った業務運営の支援を過度に行うこと

お客様や関係者との間での電子メールのやりとり、より多くの人に知ってもらうためにWEBページの運用、Excelやツールによって作られる管理台帳etc...

今の時代、どの組織でもパソコンとインターネット、そして社内の専用システムを使用して業務運営を行っています。

社内の専用システムの使い方が分からない人に対して、その使い方を説明すること、質疑対応をする行為も『IT介護』の一つの要素となります。

そして、

・○○日に月締めなのでそれまでにシステムにデータを入力してもらう。
・システムのパスワードの再発行を行う。etc...

といったシステムを基盤にした業務運営の支援をする行為も『IT介護』の一つの要素となります。

3.代理としての行為

代理として行為を過度に行うこと

IT機器、アプリ、システムになれない人が上の立場にあるとよく発生するのですが、他の人に代わりにやってもらうということがあります。

・Wi-Fiの設定方法知らないから代わりにやって
・この社内サイトの使い方わからないから代わりやって

このような形で行う代理行為も『IT介護』の一つの要素となります。

何が問題なのか

ここまで読まれた方は、これらの行為の何が問題なのかと疑問に思われる方もいるかもしれません。

分からないことがあるときに操作方法を質問したり、代理で行うことを依頼したりというのは誰しもがあることです。
スマホを新しく手に入れた年配の方がお孫さんに使い方を質問したり、入社や異動で新しく来た人が社内システムの使い方を質問することはよくある光景です。

しかし今回あえて『IT介護』という言葉でこのようなことを定義したのは、これらの行為を「過度に行う」人がいるからです。

少し調べれば分かるようなことを質問すること、同じようなことを何度も質問すること、こういったことのために、その質問を受けた側の人は本来やるべきことに集中できず、生産性が下がるのです。

なぜ『IT介護』という言葉が必要なのか

『IT介護』という言葉が生まれる背景として「デジタル・デバイド(digital divide)」という状況があります。

「デジタル・デバイド(digital divide)」とは、個人のITリテラシーの差により生じる格差のことをいいます。

パソコンやスマートフォンといったIT機器が急速に発展したのはここ20年ほどであるため、物心ついたときから日常生活でパソコンやスマートフォンを使っている20代、30代よりも上の世代でこのようなIT機器をうまく扱えない人がいるのは当然ではあります。デジタル・デバイドは当然発生します。

しかしながら、企業での仕事において、パソコンを使った作業が当たり前になりつつある中で、IT機器をうまく扱えないというのは致命的なものがあります。Windows OSの端末であれば、ExcelやWordを用いた資料作成は一般的なことであるし、電子メールでのやりとりも日常的なものです。

そのため、パソコンやスマートフォン、そしてその中にあるこれらのツールの基本的な操作を知らないとなると仕事に大きな支障がでるわけですが、そのような支障が出るたびに、IT機器に詳しい若手や情シスがそのフォローを行うことになります。

そういったフォローを「過度に行う」ことによって助けるということを超えたものが対応者の負荷として生じます。これがまだ覚える・学ぶという過程の中であれば、仕方の無いことなのかもしれません。

しかし、覚える気がない人の相手をする。それは教えるというものではなく、人の仕事を補助するという介護である。これが『IT介護』という言葉の由来です。

日本の経済にとっても、デメリットでしかないので、より大きな議論がされることを望みます。

※1:2020/11/23に本文の構成を一部修正。
※2:2020/12/27に本文の目次と定義の詳細説明を追加する形の大改版を実施。旧版(2020/11/23版)は↓に転記




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