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就農2年の零細農家が、野菜よりも先に絵本を届ける理由。

愛媛県は今治市で、少量多品目栽培を行っている、荒木貴大と申します。

一昨年の6月に就農し、もうすぐで農家を名乗って2年が経とうとしています。

1年目、2年目の売上はどちらも100万円に満たない、まさに零細農家です。


ただ、ヤギを飼ってます。(かわいいです。)

そんなピヨピヨのぼくが、この度クラウドファンディングをスタートさせました。

「農家がつくる寝る前の絵本」プロジェクトです。
今回は、そんな本業がまだまだ未熟なのにもかかわらず、なぜ他のことにも手を出すのか、そんな話を少しだけ。と言いつつ3,000字ほどになりますが、お話していきたいと思います。

・農家になって生まれた疑問
・なぜいま絵本なのか。
・農家がストーリーを考える意味
・これからの展望

農家になって生まれた疑問

みなさんは、野菜を選ぶときどんな基準で選んでいるでしょうか。

多くの方が「値段」だと思いますし、また多くの方が「なんとなく」だと思います。

ここ15年くらいは直売所などが全国各地で注目を集め、取り組みを含め「より農家が身近に」なってきたように思います。

スーパーなどでも地域の生産者の顔写真を加えて地元野菜コーナーを設けたりと、「誰から買うか」という部分に少しずつ光が当たっていることも事実としてあるかと思います。

ぼく自身も、全国的に有名な愛媛県今治市のモンスター直売所「さいさいきて屋」で販売しています。

すべての生産物、加工品に名前が入ることで、消費者は、どの生産者が作ったものかを確認することができます。

出荷し始める前から、ここに一つ疑問がありました。

「これって生産者から買ってるわけではないんじゃないか。名前こそあるけど、その人がどんな顔して、どんな人なのかはわからないよね。」

という疑問です。

深く自分の思考を堀っていくと、ぼくの一番の理想は「農家が直接、消費者へ届ける」ということだったんです。

おそらく多くの農家さんがこう考えていると思います。

ただ、あまりにも理想論すぎて、今の日本全国の台所事情を支えることはできません。

だからこそJAのような巨大な組織が誕生し、どんな時期でもどんな作物でもどんな場所でも購入できる素晴らしいシステムが構築されました。

ただ、その一方で、農家の顔は見えなくなってしまったのです。

その状態がしばらくすると、カウンターパンチのように生まれる考えが、先ほど話した極端な理想論です。

これを実現する形で、全国各地で直売所と同じように多く開催されるようになった「マルシェ」のようなものがあります。かつては日曜市とか、朝市のようなものが全国各地にあり、その形を変えてまた脚光を浴びているんだと思います。

「安全・安心」というものの究極形は、やはり「知っている人から買う」だと思うんです。

一度マルシェで会ってお話した人は「知っている人」になり、買いやすくなる。

それからその人の名を知ることとなり、直売所や、直接購入するようになる。これこそ理想形です。

ただ、一方で農家さんからすると、この「マルシェに出る」ということが非常にハードルが高いという現状があります。

その理由はいくつかありますが、農作業が優先される、人と話すのは得意ではない、自分の作物はそこまで。。などなどです。

比較的そういったものを得意とするぼく自身ですら、どうなんだろーって気持ちになっています。

ただ、それが理想であることに疑いはありません。

なぜいま絵本なのか。

ここでようやく出てきますが、ではなぜ絵本なのかということです。

それは、「絵本が、生産物より先に、コミュニケーションの入り口」になりうるんじゃないかと思っています。

自分が作る作物がどのような影響を与えるか、それを先に知ってもらうこと、それを知ってもらった上で、自分の特徴を乗せて販売する。

そんな形ができるんじゃないかと想像、妄想しています。

農家さんそれぞれが、自身の作物の特徴を記す紙を作成するのがもちろんベストではあるんですが、それを全ての農家さんができるわけではありません。むしろやっている人が少数派です。

そしてさらに、その内容は文字だけ、難しいともなると、また読んでもらえなくなります。そして、読むと捨てられるリスクすらあります。

やっていること、伝えたいことは山ほどあるのに、消費者には伝わらず、徒労に終わることもよくあると思います。

実際農業だけではなく、どのプロダクトにも同じことが言えると思います。

その「コミュニケーションの入り口を絵本」に持ってくることで、読み聞かせしてもらう子どもたち。さらには、絵本を読む親、その双方が絵本に愛着を持つのと同時に、その野菜への愛着を高めてくれるはずです。

そうしてうっすら見えてくるのが、その野菜の持つ特徴、農家さんの顔、特徴、その他もろもろです。

農家から直接消費者へ、より「安全・安心」に届けるためのツール。

それこそが「絵本」なんじゃないかという結論になったわけです。

農家がストーリーを考える意味

本屋さんには、所狭しと棚にこれでもかと絵本が並べられています。

さらに、その入れ替わりも激しいでしょうし、出版社を通じて出されるものの多くは、厳しい競争を勝ち抜いて出版にまで至ったんだと思います。

そして、農家さんの場合多くは書籍という形で、「農家を増やす」もしくは「作物をうまく育てる」という観点から本という形を作っています。

どれも農家さんが実際に手を動かした視点からの指摘で、本当にいろんなパターンで紹介されています。

ただ、絵本という分野では、どうでしょう。

かわいく、おもしろく、わかりやすくという作り方では、野菜に関しての絵本もかなりの数が出版されています。

中にはもちろん農家さんが監修したという絵本もあると思います。

ただ、今回のプロジェクトについては、最大限ぼくの想いを入れた形でスタートし、進めてもらっています。

実は絵本の中に、生産者を紹介するページ、野菜の効果等を紹介するページも一緒に入れ込む予定です。

もちろん絵本のストーリーもかなり面白い内容に仕上がりつつありますが、やはり最終目標は、「野菜を身近に」感じてもらって、「野菜を買う理由をみつけてもらう」ことです。

その中身を、実際にどうしたら野菜が売れるかを日々考える農家が自身で組み立てるということで、当事者意識はもちろん、一緒に販売をしてもらえる他の農家さんも同じ目線で販売することができると思っています。

これからの展望

実際、クラウドファンディングを開始し、出版できる体制が整った上で、次の展開を考えています。

いままでの部分で語ってきたように、農家さんが直接販売し、コミュニケーションのツールにしてもらうことが第一です。

その他にも、できれば「本屋さんの流通に乗せない」体制を目指しています。

今回のクラウドファンディングのリターンにもあるように、全国47都道府県でのアンバサダー制度。

全国の直売所での販売。

特別ECサイト、Webサイトでの連携と販売。

自費出版という状態でどこまでいけるかわかりませんが、多くの人に届けることが大事なことはもちろんですが、目的はあくまで「農家と消費者をつなぐツール」でありたいと思っています。

第一弾は、ニンジンが主役です。

第二弾はまだ構想段階ですが、時期的には夏野菜になるかと思います。

これをどんどんシリーズ化し、現在ぼくが栽培しているような西洋野菜まで広げたいと妄想しています。

栽培技術すらまだ平均点に達していない男が、まずはじめにと始めたこのプロジェクト。

賛否はもちろんあると思います。

絵本だけ売れても全く意味はありません。それを通じた野菜への興味・関心がすべての最終地点です。

そのために、まずはこのプロジェクトを成功に導いていきたいと思います。

まだまだ、語り足りないですし、このプロジェクトがどのようにして生まれ育ったかという部分もまた後日書いていきたいと思います。

現在(2月13日19時)、目標金額に対して31%の達成率です。まだまだ1万部まで程遠いですが、少しずつでもみなさんにこの魅力を伝えていければと思っています。

どうぞよろしくお願いします。

荒木 貴大


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