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業務用3Dプリンター市場を成長させる! ~ 業界ポータルShareLabリニューアル

みなさんは、日本の産業用途の3Dプリンター活用が、世界に大幅に遅れていることをご存じでしょうか?

金属やプラスチックの加工においては、削って加工する除去加工や、型を使う成型加工が主流ですが、素材そのものを吐出し積み上げる付加製造(アディティブ・マニュファクチャリング=AM)技術が、ここ最近、再び注目を集めています。

実は、3Dプリンターを支えるこの技術の大元は日本人が発明したのですが、基本特許は1980年代後半に米国メーカーが取得し、以来、欧米企業を中心に発展を遂げてきました。

2010年代には、個人がモノづくりを担うとするメーカーズブームのコア技術として期待が高まりましたが、加工精度や価格、活用技術などの問題で沈静化。その後、漸進的に技術を進化させてきました。現在は、中国メーカーの発展にも、めざましいものがあります。

今、あらためて注目を集めている理由は主に二つ。一つには、欧米において航空・宇宙や自動車、医療分野最終製品への適用が進んできたこと。もう一つには、コロナ禍や国際情勢の変化による消費地生産技術への関心が高まってきたことがあります。

そんな世界の潮流に大きな遅れをとっているのが日本です。

海外に遅れる最終製品への3Dプリンター活用

業務用3Dプリンターは、日本でも試作品レベルでは活用されています。しかし、最終製品での活用が遅れています。その背景には、

  • 優れた加工技術がある分、新しい方式に対しての慎重な姿勢

  • 日本で重視される品質面での高い要求に応えられるプレーヤーの不足

  • リスクをとって市場を牽引する強力なリーダーの不在

  • その結果としての、産業全体での協力体制の弱さ

などに理由があると考えられています。

ふりかえれば、明治維新の産業振興や、第二次世界大戦後の産業育成は、政府がリスクを引き受け、需要を作り出し、海外からの学びを後押ししていました。

3Dプリンターの価値は、既存工法の置き換えではなく、抜本的な新工法を設計・製造プロセス全体に適用してはじめてフルに発揮できると考えられており、一企業ではなかなかリスクが取りづらい状況があります。

実際、米国では今年5月に「AM Forward」と呼ばれる産業振興策が発表されました。大手メーカーにAM技術で製造された部品の購入を促し、部品メーカーにはAM技術導入の資金や技術支援を提供、そしてその過程を通じてAM技術の標準化を行なう、というものです。

日本でも公の支援や取組はありますが、海外ほどの大きなうねりとはなっていません。業界をあげた3Dプリンターの活用政策が望まれるところです。

しかし、個々の力の集約は、国にしかできないものではありません。

業界を掘り下げるバーティカルポータルの意義

BtoB製造業のデジタルマーケティング支援を行なうイントリックスは、本日、業務用3Dプリンターのポータルサイト「ShareLab」をリニューアルしました。シェアラボ、と呼んでください。

当社のミッションは「日本のIndustryをInternetでInnovateする」こと。ブランディングやマーケティングがあまり得意でない日本の製造業は、対外コミュニケーションを強化することでもっと大きな価値を発揮できると考え、コンサルティング・Web制作を通じ、多くのBtoB製造業のデジタルマーケティングをご支援してきました。

しかし、お客様に深く寄り添うこのスタイルは、個別の企業をじっくりご支援するには良いものの、業界全体を後押しするものではありません。でも、私たちのミッションは、Industry=製造業全体、を変革すること。

そこで始めたのが、BtoBの業界ポータルです。BtoB製造業は非常に細分化されているため、アペルザさんやイプロスさんのような製造業全体のポータルとは別に、特定業界の深堀ポータル(いわゆるバーティカルポータル)が併存すべきではないかと考えました。

例えば、3Dプリンティング造形物には、3Dプリンター、材料、3DCADソフト、3Dデータ、設計ノウハウ、出力ノウハウ、出力サービス企業、装置メンテナンスが関わります。まだ発展途上の技術ゆえ、課題解消のためのナレッジシェアやアドバイス、活用事例、コミュニティへのニーズも高い。3Dものづくりの将来像には、データ流通市場もあるはず。きわめて多岐にわたる要素の存在に、バーティカルなポータルの存在意義を見出したのです。

5年前の開始時は試験・分析業界を対象にしていたのですが(ShareLabの名はその名残です!)、成熟市場よりも、①成長性があり注目度も高いが、②市場が立ち上がりきっていないので情報が散在している、業界こそがポータルで情報集約を図る意味があると考えなおし、3年前に業務用3Dプリンターにシフトしました。

マーケティング支援と、その先に目指すもの

実は、ShareLabの運営チームは理系でも製造業出身でもないので、ゼロから業務用3Dプリンターのことを勉強しました。製造業バックグラウンドの方は沢山いらっしゃるので技術的な知識はみなさんに教えを乞い、市場を盛り上げるために必要なもう1つの要素であるビジネス・マーケティング視点に軸足を置いて業界の成長に貢献していきたいと考えています。

今回のリニューアルでは、機器やメーカー検索の使い勝手を向上し、比較機能や、資料・カタログ、イベントなどの関連情報の検索機能を追加しました。これまでご提供してきた業界ニュースや活用事例、市場を俯瞰した独自視点の記事なども引き続き強化を図りながら、多くの3Dプリンター関連企業のマーケティングをご支援していきます。

ShareLabの概要

ただ、ShareLabが実現したいのは、単なる情報の電子化による利便性ではありません。インターネットのパワーを活かして今は散在するナレッジの融合を加速し、日本の業務用3Dプリンターが世界に追いつき追い越す業界全体のムーブメントの一助となることです。

バーティカルポータルの雄である医療業界のエムスリーや、自動車業界のマークラインズの展開を踏まえると、人材紹介や共同リサーチ、トライアルの斡旋、教育プログラムやコンサルティングの提供、そして材料データベースの整備など、3Dプリンター業界のあらゆる方々に欠かせないプラットフォームとして実現しなければならないことは、山のようにあります。

今から10~20年後、すべての製造業が3Dプリンターを当たり前に使うようになった時、課題相談や装置・材料探し、設計データ入手に、ShareLabも当然のように一緒に使われている。

そんなことを夢見つつ、今はなによりも、業界関係者の皆様から信頼を得られるポータルづくりに邁進していきます。

ShareLabをどうぞよろしくお願いいたします。

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