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分析力とはなにか?それを構成する4つの要素とは

「分析が得意です!」と面接でアピールする人がいます。しかし、それは具体的には、どういうスキルがあると言っているのでしょうか?

人によって言葉の定義が曖昧になると困るのが、特にこうした面接のシーンです。面接官Aの評価コメントで「分析力がある」と書かれていたけれど、面接官Bは分析力があるとは感じなかった、なんてことはよくあるでしょう。その時、面接官Aと面接官Bとふたりの評価そのものが違ったのか、分析力という言葉の定義が違ったのかがはっきりしないのは困りものです。

マーケティング界隈で仕事をしていると「あなたのいう“分析”って一体何なんですか?」と不思議に思うことがあります。特に感じるのが“レポーティングツール”です。

ある数値を見やすくグラフを作ってくれるツールがしばしば「分析ツール」という呼び名で売られているのです。

しかし、よく考えてみてください。これって視覚化するツールでしかなく、分析するのはそれと向き合っている人間なのです。「分析ツール」は「(あなたのかわりに)分析(してくれる)ツール」ではなく「(あなたに)分析(させるための)ツール」なのです。

共通言語としての「分析力」とはなにか?僕は「事象に対して意味をみつける能力」だと考えます。その能力は「切替・俯瞰・分解・比較」の4つに行動をいかに行えるのかによって支えられています。

事象に対して意味をみつけるとは

分析力をつけるために、この4要素について、説明をします。分析とは「事象に対して意味をみつける能力」と書きました。そのためにはまず、事象そのものを把握するという基礎行動に加えて、把握した情報を処理するという2段階が必要になります。

1段階目の把握という行動にとって重要なのが、ひとつめの「切替」です。そして、2段階目に入り、その事象をマクロで見るのがふたつめの「俯瞰」、ミクロに見るのが「分解」です。ただ、その事象そのものだけを見る内の目線だけでは分析する世界が狭いので、そこに他社との比較という外の目線を入れるための「比較」を加えます。

ではひとつずつ、深掘りしましょう!

①切替:見る角度を変えることによる発見

ひとつめの能力は「切替」です。

円柱は、上からみると丸だけど横から見たら四角であることを発見する能力のことをいいます。具体例としては、常識を疑うなど、人の気づけない点に気づくことができることなどです。

人間だれしも、どうしても視点が固定化されて「XXに違いない」と感じたら、頭がどんどん硬直化し、「YYかもしれない」と違う意見を持てなくなるのです。しかし、分析という行為を行うにあたり、この思考の硬直化は大敵です。

物事を立体的に捉え、同時にこう見えることもあると2次元3次元を行き来するかのごとく、柔軟な発想力を持つ人は、分析力があると言えるでしょう。


切替力:同じものを見て、様々な視点からの意見を持てる能力

例えば電通の日本の広告費 2023を見てみましょう。「イベント・展示・映像ほかの成長率が最も高い!デジタルじゃなくてリアルの時代だ!」と考えるでしょうか?ここでは「切替」が必要です。

電通「日本の広告費2023」 https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0227-010688.html

なんでイベントが伸びたんだろう?と考えます。コロナによる外出規制があったよなと皆さん思い出せるはずです。これが「切替」です。

②俯瞰:個別事象からトレンドの把握

ちいさな事象や事実の積み重ねから、もっと大きなトレンドを把握する能力が「俯瞰」です。道端の人々の服装の変化から、今の流行や社会トレンドを認知できることなどを言います。

データ分析を行うとき、そのデータはN=1の大量の積み重ねです。大量のNを漠然と眺めていても何も見えてきませんが、N=1ひとつずつをしっかり見つめていく中で、大きなうねりを導き出すことが必要です。この能力は、分析において欠かせません。例えば、「それぞれの時代のSNSの趨勢をまとめろ」という課題があれば、このスキルがとても大切になるでしょう。

俯瞰力:個別事象の積み重ねから、その繋がりをあぶり出す能力

さて、もう一度「日本の広告費」を思い出してみてください。

2023年にはイベントが大きく成長した!という見方は怪しそうだ、という「切替」を行ったわけですが、では「俯瞰」してみてみようと考えます。というのは、それこそ新型コロナ感染症拡大という数年に渡る大イベントが世界で起こっていたわけですから。

全国的に見たときの1度目の緊急事態宣言は2020年4月7日からでした。コロナウイルスが話題になりはじめたのが2019年の12月でしたでしょうか。ということで、2019年は通常どおりの年であったといえるので、そこまで戻ってみます。

電通「日本の広告費2021」https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0224-010496.html

2019年にはイベントで5677億円もあったことがわかります。つまり足元で成長した!といっても3845億円にすぎないのです。これは「成長」ではなく「回帰」や「回復」といった単語が適切でしょう。

このように、ひとつのデータから脊髄反射的に結論を導くことなく、「俯瞰」を行うことが分析にはたいへん重要です。

③分解:数式やカテゴリでの細分化

ある事象をより小さい単位に意味ある形で分ける能力が「分解」です。たとえば、本質をあぶりだすのに最適なかたちで、売上を価格×数量だったりプロセスを時系列だったりで分けることです。最もイメージしやすい能力ではないでしょうか?

ただし、この分解という行為も一筋縄ではいきません。それは本質を導くかたちでの分解ができて初めて分析力があるといえるからです。本質を導くとは、解きたい課題を解きやすくする分解ができているかどうかです。

分解力:本質を捉えたかたちで細分化する能力

この「分解」、コンサルティングファームでよくあるケース面接などで最も利用される分析手法でしょう。

月額課金サービスの売上高を分解するのに、平均単価✕ユーザー数とするか、新規顧客の売上+既存顧客の売上とするか、この選択は何を解きたいか?によって変わってくるでしょう。アップセルが課題になっているのであれば平均単価を切り出すように分解することが必要でしょうし、解約率が課題になっているのであれば解約率があらわれる既存顧客の売上を切り出してあげる必要があるでしょう。

④比較:複数事象の相違点の発見

最後は、類似する複数事象のうち、同じ点や違う点を様々な軸であぶりだす「比較」の能力です。同じ業界の2つの株でアービトラージできることなどを指します。

僕は昔、証券会社で株式アナリストをしていましたが、この「比較」の手法でよく同僚とディスカッションしていました。例えば「業界Aで1位と3位が合併する。このとき、2位に何が起こるか?」というようなディスカッションです。こうしたことは当時、しばしばあったのですが、ちょっと違うけど似たようなことがあった、ほかの業界についてを参考にするのです。

「業界Bでは2位と3位だったが、1位は4位以下を買って、1位の座を守ろうとした。結果、業界再編が加速した。投資家目線で儲かったのは業界4位以下の銘柄を買っておくこと」とか「業界Cでは1位と3位が合併したが、2位は海外に活路を見出し、国内事業は安定させるという方法をとった。この業界Cでは日本と海外とのあいだにそこまで障壁はないタイプの業界だったから」とか、色々な情報が出てくるのです。

これらをもって「業界Bの2位と3位の合算したシェアと業界Aの1位と3位の合算シェアは似ているので、同じことが起こりそう」「業界Aは国内と海外では法規制の観点でまったく違う市場といえるので、業界Cの動向は参考にならないな」というように、業界Bや業界Cとの相違点に着目して業界Aの行く末を分析することができます。

比較力:すべての物事は似ている点と違う点が必ず存在するが、それらをあぶり出す能力

分析とは何をどうすることなのか具体的に語りたい

分析ができる、分析をしてほしい。そういう主張や依頼をする際には、より具体的に語ることで相手の理解を深めることができるでしょう。

そのために、“分析”というワードを動詞に置くことは避け、もっと具体的なワードに置き換えてみてください。もっとスムーズなコミュニケーションができるはずです。

※この記事は、NewsPicksトピックにて掲載中の「うず潮アタマ対策塾」の記事の転記です。ぜひNewsPicksでフォローをしてください
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