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アニメ好きは知っている!アニメ制作会社の厳しい需給環境

Revueのサービス終了に伴い、そちらに掲載していた記事をnoteに移設しています。本記事は、Revueにおいて 2021/9/19 に掲載したものです。

2022/12/15

「やりがい搾取」という言葉があります。やりがいにモチベーションを求め、給与を安く人を働かせることです。ただ、“搾取”ならば、会社が大儲けしているのが前提です。しかし、そもそも会社も儲けてない場合は「やりがい搾取」より深刻です。

搾取にも至らないアニメ制作業界

アニメ業界はまさにその典型です。アニメ制作に関わりたいアニメーターの給与は低く、そして制作会社は火の車です。倒産もしばしば。

ではどう稼げばよいのか。これまではテレビの放映枠をCM先として増やし、DVDやグッズによる売上で稼いできました。しかし、テレビの枠や制作側の供給量には限度があります。高原状態で止まってしまいました。

アニメの放映権総額は国内外で半々程度

アニメは各地域ごとに放映権やグッズの販売権を売っていくビジネスです。主な市場は、日本・中国・米国・その他くらいの4地域に販売していますが、日本が最大で半分程度を占めていて、中国や米国で4割ほど、残り地域すべてで1割程度となります。

もともと日本がほとんどで米国がちょこっとというところから、中国での日本アニメ人気の高まりと経済成長に伴う市場拡大によって国内:国外で半々まできたという状況でした。

2017年は海外SVODが日本アニメを競って買っていた

しかし、ある時米国市場で競争激化が起こりました。2016年頃からNetflixやAmazonが日本アニメを買いあさりはじめました。もともと海賊版の日本アニメを流しており、その後ちゃんと放映権を買うようになったFunimationとCrunchyrollの2社が主な買い手でしたが、そこにNetflixやAmazonといった大手SVODが参入したわけです。俄然、アニメ制作会社は盛り上がりました。

Netflixは物量ではなく数本のオリジナルにこだわり、制作されたアニメを買うのではなく一部の制作会社のリソースをまるっと買い上げていきましたし、Amazonはこれまでのように制作されたアニメの放映権をいくつも買い取る形で「Anime Strike」というサブスクサービスをはじめました。

この時は一時的に日本アニメの制作会社まわりの需給バランスがタイトになり、価格があがった瞬間もありました。

(参考:米Amazonの日本アニメ配信サービス「Anime Strike」終了 - https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/07/news015.html

撤退、そして合併から再度厳しい環境に

しかし「Anime Strike」は1年あまりで撤退となり、Netflixのオリジナルの本数は変わらず、制作会社の人材まで利潤が行き渡ることなくこの流れはしぼみました。

さらに去年末には、日本アニメによる外貨獲得のためソニーがFunimationに加えてCrunchyrollという米国の日本アニメSVODを買収し、ロールアップしてしまいました。

これで海外の出口の大きいところをソニーが独占してしまうことになりました。制作会社としての収益は増えません。

(参考:ソニーが「1222億円買収」したアニメ配信会社“クランチロール”とは何者か? …キーは“鬼滅”関連のあの企業 - https://www.businessinsider.jp/post-225974

中央線沿いに設定するなどもっと制作会社に寄り添うべきでは

今回、Netflixは六本木に制作拠点をつくったそうです。しかし、これは果たして人材争奪に寄与するのでしょうか?せめて多くの制作会社が存在する中央線沿いに作るべきだったのではないでしょうか。

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