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「子育て部」副部長

ご存じのとおり、白血病の数度の抗がん剤-輸血治療(”地固め療法”)では、毎回、ガン化した白血球をゼロにするにともない、抵抗力ゼロの状態になる。

そのため、病棟はクリーンルーム(無菌室)滞在、15歳以下は面会できず、飲料水は殺菌密封を開封後1日で飲み切れる量のものにする。
病院の自販機・コンビニより単価の安い水やお茶、コーヒー紅茶やパックジュースを買いまわっておいて、今は週2で運んでいる。

土曜は、「僕なしで、電車に乗ってパパさんに着替えと飲料水を届けてもらう」というミッションを、小5の弟君リーダー・中2のお姉ちゃん付き添いでこなしてもらった。

これには3つ、理由があって……

1つには、パパさんが白血病になるまえにうけて、自動的に僕に回ってきた某中学校某PTA某部会副部長の業務、「地域防犯巡回当番表の最終調整とExcel化」を、僕が日曜夕方までに終わらせるため。

もう1つには、お姉ちゃん弟君にも「パパさんの家族看護」における諸業務で、徐々にリーダーシップを発揮してもらうため。
今回弟君には、自分のスケジュール帳に「表」を書いてもらった。
僕が聞き取った水曜日時点の在庫数を転記し、前日アイテム補充数の最終確認メールをもらって更新し、自分のスケジュール帳に補充数を書いてみて、数どおり、キャリートランクに入れて点検する。

ほぼ、社会人がふだん、業務でやっていることと同じレベルの流れをなぞってもらった。

安全に往復して、看護師さんに受け渡しの中継ぎをしてもらい、もらって帰ってきた着替えを洗濯機に入れるところまでがお仕事。
警備窓口で書く書類の項目も、メモして持って行ってもらった。

なんでお姉ちゃんが今回リーダーから外れたかというと……

絶賛思春期で、昨日の夕方からご機嫌が悪かったためだ!(爆笑)

脳みそが大人になろうとホルモンバランスを崩すので、とうぜん嵐のようにご機嫌は変わり、認知が不正確になり、誤解や誤爆が頻発する。僕に対してもご機嫌の悪いところを出してくれるのは、ありがたく思わねばなるまい。(「こういうもんだ」ということに、慣れてないと、びっくりするし、つらい……)

さすがに、飲料水2L1本+500ml9本の入った重い重いトランクを、ぶーたれた14歳に任せるのは恐ろしい。
「ひとりでいけば」とまで言い放っていたので、階段やエスカレーター付近でバランスを崩して荷物ごと転倒・けがという事態にならないことだけ注意してやってくれ、と指示して送り出した。
(もしも弟君1人の場合は軽めの重量、といいう ”B案” があったのだが、同行してくれそうだったので、トランクから一時的に出してみたペットボトル5本を、そそくさと入れなおした)

弟君リーダーに、帰還後報告を聞いたら……

「駅へ歩いていく途中で、お姉ちゃんは ”なんか取り憑いたのか” ぐらいご機嫌になって、病院の駅におりたときには、笑い話にすっごく笑ってた」
「あとね、警備員さんのところで書く紙は、僕がものすごく時間がかかってたから、途中でかわって書いてくれた」

健全な10代だー、よかったぞー。


僕は冬から今週まで、おおいなる考え違いをしていたのだが……

「子供さんたちに急な不運の悪影響が及ばないように」

と、あやうく身を挺して風よけになるところだった。
そういうのを「子育て」とは言わない。
独身で、現時点で自分の彼女ナシ歴を少しばかり更新している身の上では、考えが浅いのも無理はない話で。

子供たちを保護・養育する施設にかかわっていたある人に、妃殿下時代の美智子さまがかけられた言葉をきいて、1週間ほど考えていたのだった。

「どんな境遇でも、幸せになれる子に」
というお言葉がけを頂いたそうなのだ。

そうだ。確かに、

「どんな境遇でも、幸せな大人になれる力、を持った子に育つようなサポートができているかどうか」

僕は、この点を心がけるべきなのだ。

何年か前に死んだこの子たちのママさんのほうが、僕の血縁なのだが……

おもしろい写真が出てきた。
弟君が幼稚園ごろだと思うのだが、ジャケットの背中を「仮面ライダー鎧武(ガイム)」のパッチワークが埋めている。これが生きてたときのママさん作だそうだ。

なぜこういうことになったかというと、当時の戦隊もののグリーンとおそろいのジャケットを弟君に買い与えたはいいが、

「背中の虎の顔がこわくて着れない」(グリーンは好きなのに)

と泣いたらしい。

それで手芸店で、仮面ライダー鎧武の布を買ってきて、上からふさいだと。


なるほど。
そういうテイストの路線ね。


「子育て部」副部長……
ちょっとだけ、地ならしをして
子供さんたちが「幸せな大人になれる力」をつけられるようにする。

急に拝命して、まだ右往左往してるけれど。

「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!