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#363 『自分の心の三畳間を持つ』

本日は、作家の童門冬二さんの「自分の心の三畳間を持つ」についてのお話です。童門さんは東京都で都立大学事務長や知事秘書、広報室長、企画調整局長、政策室長という職を歴任して、退職後は作家として活動をしてきました。

"20代の頃、2人の師と共に、私を支えてくれたのが書物だった。いまもそうだが、当時から本に対する飢えがものすごくあり、無我夢中で本を読み漁っていた。駅前の闇市には古本屋が一軒入っており、そこの店主が勉強熱心な私に目をかけてくれ、様々な本を読むことができた。私は毎晩、電気が消えるまで読書に明け暮れていた。"
"中でも、一番大きな影響を受けたのが太宰治である。まだ仕事や急な社会の変化に不信を抱きつつも何かを求めてやまなかった時、たまたま手に取った太宰治の本を読んでいると、「かれは人を喜ばせるのが、何よりも好きであった」という僅か一行の言葉が目に飛び込んできた。それ以来、私は太宰治に深く心酔するようになり、この言葉はいまでも己を貫く信条となっている。"
"もう一つ印象深いのはフランスの思想家・モンテーニュの『エセー』という作品に出てくる、「人間は誰でも自分の心の三畳間を持つべきだ」という言葉である。人間は周りに邪魔されることなく、たった一人になってじっと物事を考えることのできる場を持たなければならない、とモンテーニュは言う。そういう意味では、私は読書をすることによって自分の三畳間というものを確立していったと言えるだろう。それは小説家となったいまも変わらない。"
"これまで歩いてきた道を振り返ると、「人生は起承転結」だというのが実感である。私自身、下積みの20代を経て、30歳の時に課長試験に合格。都庁勤務となってからは都知事の美濃部亮吉さんの側近として広報室長や企画調整局長などを務め、その経験をベースに、いま歴史小説を通してリーダーの心得や組織のあり方を描いている。まさに「転」の連続だといえよう。"
"「あれをやってみたい」「こういう人間になりたい」という自分の信念を持つことだ。そのためには、いろいろな本を読んだり、人から話を聞いたりして、手探りで生きる時期が必要だろう。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/12/29 『自分の心の三畳間を持つ』
童門冬二 作家
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※Photo by S. Tsuchiya on Unsplash