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見習いたい!と思ったマネージャーの振る舞い

お客様に人財育成の課題を聞くと優先順位は別にしてほぼ100%マネジメント層の育成に課題があると伺います。管理職研修、マネージャー研修、次世代リーダー研修と種類は多少違えど、マネージャー、もしくはマネージャーにとしてこれから活躍してもらいたい人へ、マネジメントスキルを学ぶ必要があると考えられています。

マネージャーになる多くの方は、営業であれば営業成績の高かった人、研究開発であれば新技術をを開発した人など、現場のハイパフォーマーが殆どです。そのマネージャーが過去に経験した業務領域であれば豊富な経験が発揮出来ますが、部下育成やモチベーション喚起などマネジメント系の仕事は今までの経験も殆ど無い為、多くの方が苦戦します。そこをカバーする為に人財育成担当の方々も、リソースを割いてあらゆるマネジメントスキルを学んで貰おうと試行錯誤しています。

しかいマネージャーは激務です。最近はプレイングマネージャーも非常に多く、なかなかスキルアップの時間がありません。本来であれば合宿など数日間じっくりと腰を据えてマネジメントについて考え、学ぶ必要があるとわかっていても、十分な時間は取れず、長くても2日、多くは1日で行われる研修に参加するのが精いっぱい。考課者スキルや社内ルール、労務系など盛りだくさんの内容を短時間でぎっしり詰め込まれ、一体何が身についたのかわからないまま実務に戻る方も多いのでは無いでしょうか?

今日はそんな忙しいマネージャーの方々に、私が部下として経験した「見習いたいと思ったマネージャーの振る舞い」を3つご紹介します。普段学ぶ時間が少ないマネージャー方々が、部下をマネジメントする際に少しでも参考になれば嬉しいです。

①感心を持つ

昨年、テレワーク中にいきなり国際郵便で大量のインスタントコーヒーが届きました。購入した覚えも無くちょっと不安を覚えながら開けてみると、”Thank you for your hard work. ・・・”とメッセージがあり、送り主は当時のシンガポール人のマネージャーでした。

メールでお礼をすると「普段なら日本で食事をご馳走出来たけど、今はコロナで日本へ行けない。その代りに日頃の頑張りに少しでも感謝を表したかった。」との事。

なぜインスタントコーヒーだったかと言うと、私がポロっと言った一言から。ちょうどその1年ぐらい前にシンガポールへ出張した時、かなり特徴的な甘いインスタントコーヒーをオフィスで出されて、「おいしいだろ?」というから社交辞令も含め「日本でも飲めたら良いなあ」と言ったんですね。それを覚えてたようで、私を喜ばせようとわざわざ国際郵便で送ってくれました。

同じ上司の話ですが、去年の夏季休暇の直前には「今回は確か両親の家に帰るんだよね?家族と良い時間を過ごしてね!」とメールが送られてきました。この時は1on1の雑談時にチラッと実家に帰る事を話したことを覚えていたんですね。この他にも、娘の入学式で休みを取れば、「おめでとう!」というメールが来たり、よく私が言ったちょっとしたプライベートの事も覚えてるなーと嬉しくなる事がありました。

なぜ、彼がこのように仕事以外の話を覚えてたかというと、メンバー一人一人に興味や感心を持っているからです。メンバーに感心を持つと仕事や評価以外の視点を持ち、メンバーが発信している小さな関心事にも気づく事が出来、その関心事を有益なコミュニケーションに変える事が出来ます。

私は単純なのかもしれませんが、感心を持って貰えるとマネージャーの温かみを感じます。やっぱり嬉しいし、仕事へのモチベーションが上がりやマネージャーへの信頼にも繋がります。

プライベートに踏み込むコミュニケーションは昔よりも難しくなり、テレワークになりそもそも雑談が出来る時間が減っていますが、是非メンバーに感心を持って接し、ちょっとしたメンバーの関心事に気づき、温かいコミュニケーションを図ってみて下さい。

②挑戦させる

マネージャーにはメンバー育成という一つの課題がありますが、多くの人が苦戦しているようです。ハイパフォーマーだったマネージャーは、自分は出来た事を「なぜ彼(彼女)は出来ないんだ?」とメンバーが過去の自分と違うことに戸惑い、育て方がわからないという声を聞きます。

しかし、今までの私のキャリアを振り返ると、マネージャーから何かを教育されて成長したという記憶は殆どありません。自分が一番成長した時は、何事も挑戦させてくれるマネージャーのメンバーになった時でした。

新卒で入った旅行会社では、私は入社直後から「海外添乗の仕事がしたい」と言ってました。英語も話せず、それまで海外旅行は1回しか経験が無いくせに、兎に角いろいろな国へ行ってみたいとの思いで、その思いを言い続けました。海外添乗=激務というイメージから周りで添乗したいという人は殆どいなかったにも関わらず、私に経験が無いという理由で3年目が終わるまでは全く経験させて貰えませんでした。

しかし、4年目の春にマネージャーが変わるといきなり海外添乗を命じられました。そのマネージャーはまだ私の事を良く知らないはずなのに、前々から私が海外添乗に出たいと言い続けていた事を知り、背中を押してくれました。しかも最初から一人だけで添乗するツアーを任せてくれました。
初めての海外添乗は比較的短めな3泊5日のミラノ行き、全8名参加の小さなツアーでした。

ツアーの前にマネージャーと同行で、ツアー企画者の所に添乗員として挨拶に行った時、ちょっとした会話からトラブルに…

企画者:「松本さん、ミラノは何回ぐらい行った事あるんですか?」
松本 :「いやー、今回初めてなんですよー」
企画者:「えっ?初めて?」

当時はまだ若く、とても純粋素直だった私は馬鹿正直に「行った事無い」と答えてしまいました。そんな奴にこのツアーを任せて大丈夫か⁉と企画者の方の表情がみるみるうちに曇っていったのを良く覚えています。

咄嗟の判断でマネージャーに「大丈夫ですよ、私も一緒に行くので。」と言って頂いたお陰でその場は事なきを得ましたが、すでに同じ時期にフランスへ添乗が決まっていたマネージャーのスケジュール調整が大変。収益も大きく減ってしまいましたが、3泊中1泊だけマネージャーもミラノに来ることが出来、企画者へは嘘にならずに何とかツアーも無事に終了しました。

その2か月後にはドイツのツアーを任されました。今度は完全に一人です。ここでは私の注意喚起が甘かったせいで、ホテルロビーに集合中のお客様の荷物が盗まれるという大きなトラブルがありました。

その翌月はイギリスのツアーを任せて貰らいました。

というように、失敗が続いたにも関わらず次から次へと添乗の経験をさせてもらいました。こもマネージャーは私の失敗を責める事無く、失敗から学べば良いというスタンスでチャレンジさせ続けてくれました。失敗続きの若造に海外ツアーを任せる為の社内調整は相当大変だったようですが、その結果2年後にはVIPや人気ツアーも任されるようになり、ヨーロッパツアーは松本に任せておけば大丈夫と社内で言われる程、専門性が高まりました。

この経験から、メンバーの育成は挑戦させる事が大切だと感じます。挑戦する機会を与え、時に尻拭いをしながら環境を整え、失敗から気づきを与え、そしてまた挑戦の機会を与える。メンバーは勝手に育っていくと思います。

③勇気を与える

年初にセールス全体のキックオフミーティングがありました。3日間のオンライン開催で全世界からセールスメンバーが参加し、著名スピーカーの話を聞いたり、Awardの発表があったり、セールストレーニングのセッションがあったり、英語が出来ればとても有意義なイベントだったと思いますが、英語が苦手な私にとってはかなり苦痛の時間でした。

特に3日間のうちに6回あったトレーニングのセッションは地獄。9名程度のチームに分かれ、ディスカッションやワークショップをするのですが、殆ど何を言っているのか理解できず、ちょっとは発言したものの、的を外したり、伝わらなかったり、沢山の恥をかきました。

そしてもう無理だと思ったのは3日目に予定されていたロープレ。恥をかくだけなら良いのですがロープレだと相手にも迷惑をかけてしまう。3日目はそれが3セッションもある。英語に自信の無い私は2日目のセッションが終わった後、メールでチームのリーダーに辞退を申し入れました。

そのリーダーはニュージーランドのカントリーマネージャー。2日目まで英語力が乏しい私がいるチームのファシリテートに苦労もしていたので、私の申し出にはすんなりOKすると思っていました。

彼から来た返事はとても長く、最初は日本のカルチャーを褒めたり、自身が第2外国語を苦労して学んだ事が書かれてました。最後の方に回答があり「日本語を理解してあげられなくて申し訳ない。君が英語のセッションで苦労してる事はよく理解できる。辞めたいなら辞めてもよい。ただ、この時間は全員に均等に学んで欲しいと計画している。難しい機会だけど挑戦するならとても有益な学びと経験になるはずだから全面にサポートする。一緒に挑戦してみないか?また明日セッションで会おう!Kia Kaha!」とありました。

私はまだ不安が大きいのと、相手に迷惑がかかるという気持ちが強く、セッションには参加するけどロープレは辞退したい旨の返事を送信しました。

翌日、ロープレの時間はZOOMのブレイクアウトで「それじゃあペアを作って始めるよー」と何事も無いように進行していきました。誰とペアを組むのかドキドキしていた所、そのリーダーとペアとなりました。

リーダーからは「このまま、何もしなくてもOK。ロープレが難しかったら、雑談でもOK。難しい事は無いからロープレに挑戦しても良いよ。どうする?」と問答法で責められ、そこまで言うならと思いロープレにトライしました。

ゆっくりな英語で進行したロープレは出来た!とは言えませんがどうにかこなし10分間を乗り切りました。残り2回あったロープレは他のチームメンバーとペアになりましたが、そのリーダーが同席し補助しながらどうにか時間が過ぎ去りました。正直ロープレから何かを学べたと言う事は無かったですが、英語のコミュニケーションにちょっと自信がつきました。

ここで、このリーダー(マネージャー)から学んだ事は勇気を与える事の大切さです。

例えば通常業務でメンバーにちょっと難しい業務を与えた時、「出来ない。」と言われたら多くのマネージャーは承諾し、別のメンバーに任せると思います。しかしこのマネージャーは、「出来ない」と言われた事をすぐ承諾するのでは無く、まず受け止め、共感し、勇気づけ、挑戦を促しました。
出来ないと思った事を辞めさせる事は簡単ですが、勇気づけ挑戦を促す。そのメンバーが一歩踏み出し挑戦出来れば一つの成長に繋がります。

ちなみに、メールの末尾にあったKIA Kaha!とは「強くなれ」のような意味のようです。

https://nzbenricho.com/kia-kaha-aotearoa/

まとめ

今回はマネジメントの振る舞いについて、概念的な事では無く事例紹介のつもりでメンバーとしての実体験を書いてみました。

感心を持つ、挑戦させる、勇気づける。

当たり前のような事かも知れませんが、メンバーとの関わりに課題を感じるマネージャーの方々に少しでも参考になれば幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました。




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