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失敗しない研修プログラム選定の方法

以前、研修効果を上げる為に考慮すべきポイントについて解説させて頂きました。簡単に言ってしまえば研修プログラムの質も大事ですが、研修前後の取り組み方が非常に重要です、という内容でした。

とは言え、やっぱり研修プログラムの内容も当然重要なので、今日は失敗しない研修プログラムの選定方法についてお伝えさせて頂きます。

良くある失敗パターン

まずは陥りがちな失敗パターンから。
私は営業担当としてお客様から相談を受ける事も多く、時にこのようなメールでの依頼があります。

研修内容  :新管理者へのリーダーシップ研修  
研修目的  :管理職必要なリーダーシップを発揮できるようにする
研修実施予定:2020年12月
日程    :1日
対象人数  :20名
予算    :50万

○月○日までにご提案をお願いします。

仕様書のような内容が送られてくるケースです。
もっと前段からお客様と一緒に企画が出来ていないお前の営業不足だろうという突っ込みは置いといて… まあ、ここまでシンプルな相談は中々無いですが似たような依頼のされ方は結構あります。

特に初めて外部へ研修委託を考えているお客様に多いように感じますが、このような簡単な仕様書形式で複数社へ同じ依頼をして、まずは提案をもらってから決めるというパターンです。

この後どうなるかというと
プレゼンを聞いて提案書を眺めてみると、どの会社からの提案も似たり寄ったりに感じ決め手に欠けてしまい・・・
・価格が安い
・講師の経歴
・知名度 
あたりを判断材料に稟議を上げ、決裁者も選定者が言うなら任せるよ、という事で良くわからないまま承認し実施に至ってしまう。
もしくは悩んだ結果、決められずに時間切れになり、前年からの変更無しという決断に。

結果的にこれで研修目的を達成できれば良いのですが、決定根拠や目的が明確でない為、受講者から「なんでこの研修を受けるの?」というシンプルな問いに対して、納得してもらえる回答が出来なかったり、そもそも研修の効果が出たのか?出てないのか?がわからなかったり。

といった結果になっています。

また、提案の前に仕様書の部分をもう少し詳しくヒアリングを出来る機会を頂き、質問をしてみると…

営業「御社で考える管理職のリーダーシップってどのような事ですか?」
お客様「・・・、まずは部下を持つので部下を的確にマネジメント出来る事です。」
営業「的確にマネジメント出来るって具体的にはどういう事ですか?」
お客様「・・・・・」
営業「部下の状況を把握して的確にコーチングするスキルとか?」
お客様「あ、それです。そんな感じです。」
営業「他にはどんな事が必要ですか?」
お客様「・・・・・・・、他の企業はどんな風に考えてるんですかね?」
営業「会社によってそれぞれですけど、主体性だったり課題発見力だったり」
お客様「それ良いですね!そんな感じで提案ください」
※あくまでも例です。

ちょっと過度な表現になってるかも知れませんが、企画者が研修の目的や必要なスキルが具体的に言語化出来ていない事に多く直面します。

こんな事ある?って方もいるかも知れませんが、営業をしてるとホントに似たような事が起こります。

前回のnoteでも似たような事を書いていますが、研修プログラムを決定しようとする前に、まずはその研修の目的や参加者に身に付けて貰いたいスキルを具体的に言語化・視覚化しましょう。

こんなところを踏まえて本題に行きます。

失敗しない研修プログラムの選定方法とは

「失敗しない」為に必要なポイントは以下3つだと考えています。

・研修の成果を上げる為の目標や条件が明確である事。
・その目標や条件に満たした研修プログラムを選定する事。
・プログラムの選定結果が関係者を納得させている事。

目標設定が大事な事は前回から再三お伝えしておりますが、失敗しない為には更に、その目的を達成できるプログラムを選定する事。そして、決裁者だけでなく参加者、参加者の上司がプログラムの選定に納得してもらう事が重要です。(参加者やその上司が選定プロセスに関与する事は無いと思いますが、いざ問われた時に納得してもらえる説明が出来るように、という意味です。)

その為には、なんとなく結論ありきで決めるのでは無く、選定プロセスが存在し決定の過程と根拠が明確である事が必要です。その選定プロセスが本日お伝えしたい「失敗しない選定方法(プロセス)」です。

この研修プログラムの選定方法は以下5つのステップを辿ります。

①目標設定
②目標の評価尺度設定
③目標の重要度判定
④候補案の列挙
⑤候補案の評価/決定

この5つのステップはフレームワークにもなっています。それぞれのステップでサンプル事例「新管理者のリーダーシップ研修」(スライド)を置いてますので併せて参考にして下さい。
※サンプル事例の中身は思い付きですので余り気にしないで決め方にご注目ください。

①目標設定

ここではまず、研修プログラム選定における要件や条件を「目標」として設定します。

研修実施に求める期待成果や、予算や日数などの制約条件。受講者が研修後にどうなっていて欲しいのか?どんなスキルを身に付けさせたいか?決裁者や経営層、現場の声を反映させ研修実施の目標を全て言語化し列挙します。

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②目標の評価尺度設定

後で研修会社から提案を受けるわけですが、その提案内容が目標にどれだけ合致しているか的確に評価する必要があります。
なので、ここでは研修外会社から提案を受けた候補案が目標にどれだけ満たされるか評価する方法・尺度を決めておきましょう、というところです。
研修の目標や条件整理は出来ていても、どう評価するか曖昧なまま最終的になんとなく決まってしまってるというケースも良くあるので、実は大事なステップです。

ここで難しいのが定量化出来ない目標です。
例えば「実践的なプログラムである事」といった目標。「実践的」をどう評価する?というのを難しいですが言語化して決めておく必要があります。難しいですが、必要に応じて目標をより具体化させ、後で定量的に客観的に評価できるようしておきましょう。
定量的に評価出来ない場合は、「主観的に判断する」として、どの様に判断したか後で根拠を具体的に残しておきましょう。

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③目標の重要度判定

①で挙げた目標は重要度が異なるはずです。絶対条件の目標もあれば、「あった方が良いよね~」レベルぐらいの目標もあると思います。なのでここでは挙げた目標の重要度を整理し把握しておくフェーズとなります。

まずは、必須の目標(MUST目標)あった方が良い目標(WANT目標)に分類します。もし必須の目標が無ければMUST目標無しでもOKです。

次にWANT目標の重要度の違いを重みの点数で優劣を付けます。点数の付け方は1番重要な目標にまず10点を付け、その後はその最高点の目標と残りの目標を比較評価し点数を付けていきます。上から順に点数を付けて行くと何となく軸がぶれて曖昧な点数付けになってしまうので、1番重要な目標=10点と基準値を作り、それぞれ比較評価する事で点数が付けやすくなります。10点が付く目標がいくつあっても構いません。

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④候補案の列挙

ここはプログラムの候補案を挙げるフェーズです。研修会社に提案してもらう事が多いと思いますが、ポイントは①②で挙げた目標を評価出来るように依頼をする事です。
例えばこのサンプル事例で言うと、「このプログラムを過去に実施した企業数を教えて下さい」など、何をどう評価したいのかを伝え依頼をすると効率的です。丸投げしてしまうと目標が考慮されていない提案が来てしまい、再確認する事で無駄な時間を要すことになってしまいます。

また、もし研修の見直しという事であれば、現状維持の案も候補案に含めましょう。後々評価して行くわけですが、現状維持の案と最高評価の案で大差が付けば、見直しをした方が良いという説得材料になり、一方であまり差が無いのであれば、「労力掛けて見直しする必要ある?」と再考するきっかけになります。

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⑤候補案の評価/決定

いよいよプログラムの最終選定に入ります。

まずは1次予選です。④で挙げた候補案がMUST目標をクリアしてるか確認します。MUST目標=必須ですのでこの条件に満たさなければ研修プログラムとして不適格という事で予選落ちになります。

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最終予選は残った候補案がWANT目標の条件にどれだけ満たされているか確認し、ここでも点数(スコア)を付けて行きます。

点数の付け方はスライドを見て頂いた方が分かり易いと思いますが、一応以下の手順です。

1)各目標、それぞれどの候補案が1番条件を満たしているか?を確認し、1番満たしてる候補案に10点を付ける。残った候補案と10点ついた候補案を比較して残った候補案のスコアを付ける。
2)全ての目標ごとに候補案に点数を付けたら、重要度の重みスコア掛け算する。
3)掛け算した結果を全て足し上げて総合点を算出する。

1番高い総合点を出した候補案が1番適した研修プログラムだと判断出来、最終決定します。

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この選定方法のポイント

この選定方法のポイントは点数を出す事では無く、意思決定の経緯が視覚化されるプロセスになっている事です。視覚化される事で関係者を巻き込み合意を取りながら進め易くなっています。
承認をもらう際も結論だけでなく評価の過程や根拠が視覚化されているので承認者との議論もしやすくなります。
1度点数計算して終わりでは無く、もう1度目標が正しいか?重要度は適切か?等振り返る事も可能です。

また点数が1番高い=正解では無い事も補足しておきます。実施して初めて正解かどうか判断できるので、決定したら正解になる様抜かり無く準備を進めて行きましょう。
上手く行かなかったときにも視覚化されてる選定プロセスを振り返る事でのどこが間違っていたのか後で確認する事も出来ます。

選定の経緯と根拠を視覚化して残しておくことで沢山のメリットがあります。是非このプロセスをベースに実践してみてください。

最後に

この5つのステップ(フレームワーク)はケプナー・トリゴー社が提供するKT法・決定分析(DA:Decision Analysis)をベースにした考え方です。詳しく知りたい方は1度講義を受講してみてください。

フレームワークを辿るのが面倒な方も最低限この3つを抑えて取り組んでみてください。

・候補案を選定/評価する前にまず研修に必要な目標を確認する
・何となくで決めるのでは無く、評価基準に基づいて評価して決める。
・合意を得やすくする為に結論と根拠を視覚化する。

最後までお読み頂き有難うございました。

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