8/11 『ありえない』が『ありえるかも』に変わった出来事

 『きのう何食べた?』というマンガ&ドラマで、主人公のシロさんには、佳代子さんというご近所主婦(主夫)友達がいる。シロさんと佳代子さんは、同じスーパーに通っていて、ひと家族では食べきれない量の食材、例えば3玉売りのキャベツや箱入りの桃をいっしょに買って分け合いっこしたり、おいしい料理のレシピを教え合ったりする仲だ。そもそも出会いのきっかけがスーパーのスイカの大玉を買って分け合うことだった、はず(確認はしてない)。

 そんな出会い方、現実にはない、と思っていた。スーパーで自分ちには多過ぎる食材が並んでいたら、「使い切れないからもったいない」と思ってあきらめるだろうし、あきらめきれなかったら毎日そればっかり食べる覚悟で買うだろうし、もし数日中に人に会う予定があれば迷惑じゃなさそうだったら分けて持って行って渡すだろうし。同じ食材の前で他人が悩んでいたとしても、声をかけることはしないだろう、と、そう思っていた。

 ところが。

 今日、お買い物に行って。よく行くお店の中をぶらぶら物色していたら。わたしからしたらお母さんくらいの年齢のご婦人が、お隣にいた旦那さんらしき男性に向かって「あのセット、外側のバッグだけほしいのよね~」と言っているのが耳に届いた。わたしは、前からそのセットの中身の小物だけほしいと思っていた。バッグは使わないから中身だけほしいなぁ、と思っていたのだ。利害の一致。win-winとはまさにこのこと。

 いつものわたしだったら、いろいろ考えて踏みとどまるのに、今日のわたしは、あまり深く考えることもなく、気がついたら後ろからご婦人に声をかけていた。「あの、すみません、お話聞こえちゃったんですけど……」今思い出すと、結構恥ずかしい。けれど、ご婦人は、わたしの提案を受けてすぐに快諾してくれて、なんならご婦人の方が積極的にそのセットを取りに行き、レジに並ぼうとしてくれた(わたしが他に買うものがあったので、レジはわたしが済ませた)。お会計を済ませて、お店の外に出て、お金のやりとりと、セットをばらして戦利品を分け合い、お互いにお礼を言いあって別れた。

 これが、例えば、ご婦人がわたしと同じマンションに住んでて、オートロック前で再会とかしたら、「あらーあのときの!」とか言ってお友達になる可能性だってなくはないな、と思った。少なくとも、お買い物で、声をかけていっしょに買って品物を分け合う、までは自分の身にも起きた。シロさんと佳代子さんのようなお友達化も、全然ありえるな、と思った。

 マンガの素敵なシーンを読んで、「まぁ、マンガの中だからな~、現実じゃなかなかねぇ」とため息をつくこともあるけれど、そんなマンガの設定っぽい出来事だって、意外に普通に現実で起こるのかもしれない、と思った。

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