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宝探しで冒険でスリル満点なのに競技性が高くて熱い、噂のスポーツ

こんにちは、引きのあるタイトルにしたいと思ったらなぞなぞみたいになってしまいました。

紹介したいスポーツは「オリエンテーリング」です。
森や山や市街地といった多種多様なフィールドで、高速で高度でスリル満点のナビゲーションを求められるこの競技は今、トレイルランナーやアドベンチャーレーサーのような過酷なフィールドを走破するアスリートから、地図に親しみながら身体を動かすのを楽しみたい老若男女にまで、広く関心を持たれています。
大学に入っての出会いから、その魅力について書いてみます。


泥まみれで秘密基地をつくって遊んでいた子供の頃に戻ったような

私は屋外で遊ぶのが好きな子供でした。
運動神経が悪くて鉄棒や野球のような運動はてんでダメでしたが、その割にはやたらと外で遊ぶのが好きでした。
自転車で友達とどこまで遠くに行けるか挑戦してみたり、河川敷の大人から見えない場所に秘密基地をつくったり、原っぱで日が暮れるまで虫取りや鬼ごっこをしたりして遊んでいました。特に、大人に見つからないような知らない場所へどんどん入って行って、汚れるのなんか全く気にしない、そこで今までに見たこともない生き物だったり変な形の石だったり謎の廃棄物だったり、新しい発見に出会う、というのが幼少期の外遊びの醍醐味だったように記憶しています。
(そうして遊び疲れて帰った後の夕飯の美味しいこと!)

同じような記憶をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、小学校高学年~中学生くらいになると、段々とこういう「やりたい放題の野性的な外遊び」からは離れていきます。私の場合も、周囲の遊び方がテレビゲームやカードゲームなどに変わっていくのに合わせて、また中学受験のための塾通いが始まったりして、段々とこういう遊び方は少なくなっていきました。

恐らく、中学・高校でも潜在的にこういう遊び方をしたかったのではないかと思いますが、ある程度学校という社会に馴染むには「みんなと同じ」をやらないといけません。
選んだ部活動での友人関係も素晴らしかったので特に後悔はしていませんが、一方で「子供に戻ったように外遊びをしたい」なんて、当時は思っていても言える環境ではなかったというのも、また事実です。

幼少期何度も遊んだ鶴見川の河川敷 with 自転車(写真はもう大人になった2017年)

志望した大学の部活動紹介に、猛烈に惹かれる

高校2年生の確か夏頃、学力も勘案して東北大学の農学部に志望校を定めました。その時に大学生活をイメージするため、サークルや部活動を結構入念に調べていました。その中で一際私の目を引いたのが「オリエンテーリング」です。
うろ覚えですが、東北大学オリエンテーリング部のWebサイトにはこんな説明が書いてありました。

・地図とコンパスを手に自由自在に野山を駆け、チェックポイントを探して設定されたコースを走破するタイムを競う。
・全国大会があり、東北大学は過去にも全国優勝を何度も達成している強豪校。特に「インカレ」と呼ばれるその大会の団体戦に向けて部は熱く盛り上がる。
・大学から始める人ばかりなので、努力次第には全国上位の選手になれる。

当時の記憶を元に

一つ目の「自由自在に野山を駆け」という項目はまさに私が子供の頃から好きだった要素なのでぶっ刺さりました。加えて、そこに普通の人は絶対に入らないような森の中を笑顔で走る選手の写真が掲載されていて、

「あぁ、こういうの、やってみたかったんだよなぁ、、、」
と強く惹かれました。

また当時から、ランニング×チームスポーツの代表格「箱根駅伝」が大好きで、選手たちのひたむきな姿に何度も心を揺さぶられ、目頭を熱くしていました。
しっかりとした「競技」の基盤があって、さらにチームスポーツの熱さも体験できる、そして何より今までスポーツでは何の実績もない自分自身がその熱さの主役になれるかもしれない。二つ目、三つ目の項目はこうした観点から、やはり私の心にぶっ刺さりました。

15年続けている今だから言うわけでもなく、
「これは自分のためにあるような競技なのかもしれない」
と直感したのは今でも覚えています。

余談ですが、この3要素は本当に自分の指向にかなり合っていたようで他にも、強豪であるトライアスロン部や、自然を自由に探索できるワンダーフォーゲル部にも惹かれました。きっとそれらを選んでも素晴らしい学生生活だったのではないかと思いますが、やっぱり3つが完璧に揃っていたのはオリエンテーリング部でした。

大学1年生の時に出場した10人リレー、雨が降っても泥だらけになっても
一緒に走ったり喜んだりできる仲間と出会えたのが嬉しかった

ちなみに現在の東北大学オリエンテーリング部のWebサイトはこちらです。

オリエンテーリングとは?

すみません、こんなマイナーなスポーツは本来この項目から書き始めるべきだったのですが、出会いまでのストーリーを重視して3章まで後回しにしました。
とは言っても、概要は先ほども書いた、以下の文章に尽きます。

地図とコンパスを手に自由自在に野山を駆け、チェックポイントを探して設定されたコースを走破するタイムを競う。

ルールの細かいところを説明したらキリがないですし、私が下手な言葉で説明するよりも次のような動画を見ていただいた方が魅力が伝わるでしょう。
(もう少し詳しく知りたい方向けの情報もこの記事の中でご案内します)

【動画】オリエンテーリング概要

日本学生オリエンテーリング連盟が作成した動画です。たった1分でオリエンテーリング競技者がどんなフィールドを走っているのか、森の中でどんな動きをしているのか、引いてはどんなスポーツかが伝わってきます。

【動画】日本学生オリエンテーリング選手権ハイライト(2023/10/14 スプリント競技部門)

大学生の日本一を決める通称「インカレ」です。
オリエンテーリングは森の中を中心に行われるスポーツなので中継や観戦が難しいという欠点がありましたが、2012年頃からZakioさんというスーパーエンジニアがボランティアでハイライト動画を作成してくれています。
掲載したのはスプリントという公園や市街地を舞台にした競技時間15分程度の短距離種目です。抜群のスピード感で、観戦していても見応えがあります。

【動画】日本学生オリエンテーリング選手権ハイライト(2019/3/17 リレー競技部門)

まさしく高校生の私が憧れた学生選手権の団体戦です。コロナ渦以前の大会ですが、男子が近年稀にみる接戦で語り草となっている名勝負です。今見ても目頭が熱くなります。

【動画】全日本オリエンテーリング大会ハイライト(2023/11/4 ミドルディスタンス種目)

社会人も学生も同じ舞台で競う、真の日本一を競う大会です。インカレも全日本もほぼボランティアによる運営ですが、こうした素晴らしい舞台を用意していただけることで、社会人アスリートとして頑張っている人がたくさんいます。それだけに競技でも運営でも、オリエンテーリングを続けている人は活き活きとして、いくつになっても魅力的な方が多いです。
ちなみに、こちらのハイライトは選手権という最上位クラスを特集していますが、年代別の体力に合わせたクラス設計がされており、どんな方でも日本チャンピオンとなるチャンスがあります。

【動画】オリエンテーリングをしている人の視点

ここまでの動画はオリエンテーリングをしている人を外側から観るという視点での紹介が多くなりました。なので、実際にどんな競技かはちょっと伝わりにくいかもしれません。
そこで最後に、GoProなどのアクションカメラを装着し、競技者の一人称の視点から撮影した競技中の映像を紹介します。これらは競技中にどんなチェックポイントを見ているかという観点で、撮影した人自身の反省材料にもなりますし、基本的には競技者同士の姿が見えない競技だけに、上達したい人が上手い人の視点を学ぶのにも非常に有効です。
ここで紹介するのは日本トップレベルの選手ですし、非常にスムーズにコントロール(※オレンジと白のフラッグ)を見つけているように見えますが、道すらもない森を正確に進むのは難しく、ちょっとした迷子になることはレース中に何度も発生します。それだけにコントロールを見つけた時の喜びはどんなコースを走っていても筆舌しがたいです。

社会人アスリートが多く集う全日本リレーオリエンテーリング大会の一幕
全力で挑戦し続ける人はいつだってかっこいい

オリエンテーリングと出会ってから

さて、自分で掲載した動画を改めて観ていたら、自分の経験などもはや記載不要なのではないかと思うくらい満たされた気持ちになってしまいました。。。
大学4年間で出会ったことはもちろん、社会人になってからのことも含めると、もう何万文字を使っても書き終わらなそうな濃密な経験をしています。書き出すと本当にキリがないのでこの出会いの中でも最も素晴らしかったことを一つ挙げてみます。

好きなものを「好き」だと言えること

先ほどの章の動画を見て、どんな感想を抱いたでしょうか?
「ワクワクした、かっこいい、やってみたい」というポジティブな感想を抱いた人もいれば、
「危ない、汚れそう、疲れそう、自分には無理」というネガティブな感想を抱く人もいるでしょう。

私もオリエンテーリングの大会に参加した時にしばしば「この倒木危ない!」とか「湿地にはまって靴汚れて最悪!」とか「このコースキツ過ぎる、もう無理ふざけんな!」とか思ってますし、後者の意見にも全く同感です。
特に興味もない人に「オリエンテーリング」について説明して理解してもらうこと自体が面倒なので最近はあまり話していませんが、むしろ一般的には後者の意見を持つ人の方が多いんじゃないかなと経験的に思っています。
こういう趣味を持つ私は、今でも「変人」の類で間違いないでしょう。
しかし、だからこそ、中学・高校の頃の私はきっと「世間の声」なるものを勝手に想像して「自分の声」を内に秘め、自分で自分を抑圧してしまっていたのだと思います。

大学でオリエンテーリング部に入って何よりも一番良かったのは、好きなものを「好き」だと言えることでした。自分の「変人」性はきっと世間には見せていけないものだとばかり思っていましたが、少なくとも部の仲間の中には同じ類の「変人」が結構います。
世界には「大自然を駆けるのが好きな人」や「泥だらけで遊びたい人」がちゃんといて、自分が発信したり行動したりしていれば出会うことができるんだ、ということに部活に入ってから気付くことが出来ました。

私はこのオリエンテーリング部の仲間たちに囲まれて、好きなものを好きと表現することで、久しぶりに新鮮な空気が吸えたような清々しい気持ちになったのです。

たまたま自分の「好き」が世間の大多数が思う「好き」ではなかったからといって、それが公序良俗に反しない限りは、恥じることも隠すこともないのだなと思っています。
「好き」という感情自体は、どれもそれぞれの人が少しずつバランスを崩した「偏愛」であり、同じ崩し方をしている人の数が多ければ「常識人」、少なければ「変人」と分類されているに過ぎません。
私の人生は、「常識人に分類されるため」ではなく、「最高の友となれる変人と出会うため」にあるのだ、と考え方を変えることができました。

私が拙いながらも文章を書くようになったのもこの時期からです。
現役時代のインカレ前後で自分の気持ちを部活の会報に書くなどが始まりでしたが、この時に仲間たちが受け止めてくれたことで「自分も何かを表現していいんだ」という勇気をもらえたように思います。
だからこそ媒体をいろいろ変えながらではありますが、こうして文章を書くことは今でも続いています。

3年生の時の秋のインカレ、東北大オリエンテーリング部の仲間たちと

もっとオリエンテーリングのことを知りたくなった人、やってみたくなった人へ

入間市OLCオリエンテーリング体験会の様子(毎月開催)

現在でもオリエンテーリングを始める人の動線は「オリエンテーリング部のある大学に入って始める」が圧倒的に多いです。一方で、競技の特殊性も相まって、大学から始める以外の動線がオリエンテーリングを全く知らない人にとって難易度の高いものになっているという課題が浮き彫りになってきています。
オリエンテーリングをやってみたい人が、オリエンテーリングをできる環境へアクセスしやすいように、オリエンテーリングに取り組む仲間たちが少しずつ環境を整備しています。
最後にオリエンテーリングをやってみたくなったという人向けのお役に立てる情報を紹介し、この記事を締め括りたいと思います。(どれも地道なボランティアで、その姿勢・理念・行動力には頭が下がります。)

オリエンテーリングのことをもっと知りたい:どこオリ

オリエンテーリングの基本的なことがわかりやすく掲載されたサイトです。2024年にリリースされたばかりで、地図登録機能やオリエンテーリングができるフィールドの検索機能など、オリエンテーリングを好きな人たちがオリエンテーリングをやるために必要なことを詰め込んだ、愛に溢れるサイトです。

オリエンテーリングを体験してみたい:入間市OLC体験会

私の所属している地域クラブ「入間市オリエンテーリングクラブ」では完全な初心者の方にオリエンテーリングのいろはを教える体験会を実施しています。3回の講習を通してオリエンテーリングの大会に一人で参加できるようになるまでを習得できるような講習としており、もちろん1回体験するだけの参加でも構いませんし、1日で3回分を完了するガッツのある方もいらっしゃいます。
1回目、2回目の参加は無料で、公園を歩いている人がふらっと参加するような場合もあるので、本当に何も知らなくて構いません。もしこの記事で興味を持った方はぜひお越しください。

【おまけ】オリエンテーリングに取り組むアスリートの高いパフォーマンス

先日オリエンテーリング界隈に衝撃が走りました。
スイスの現役オリエンテーリングチャンピオン Matthias Kyburz選手(34)がパリマラソンを2時間7分44秒というタイムで走破したからです。
彼はこのレースでパリオリンピックのスイス代表に内定しました。

オリエンテーリングは不整地の山や谷を高速で走破する過酷なスポーツとしての一面があり、高度な身体的負荷が求められますが、レクリエーションで経験している人も多いせいか、「オリエンテーリングを真剣に競技として取り組んでいる」と言っても、若干軽く扱われてしまうことも時々あり、そのたびに残念な気持ちになります。(フルマラソン3時間切り、などは比較的伝わりやすいのと対照的に。。。)

もちろんKyburz選手はパリマラソンに向けたトレーニングを積んでいたとのことですが、そういった背景からもオリエンテーリングのトップ選手が有名で注目度の高い競技で活躍したという事実は我々オリエンテーリング競技者に大きな感動をもたらしてくれました。

最後に

この記事を読んでいただいた方にオリエンテーリングの魅力を伝えられたのであれば、これに勝る喜びはありません。ここまでお読みいただきありがとうございました。
また、参考情報としてたくさんの動画やサイトを掲載させていただきました。作成者の皆様にも厚く御礼申し上げます。

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