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1969年から2017年にタイムスリップしたサイゴン娘 映画「Cô Ba Sài Gòn」

映画は1960年代と思われるサイゴンの街並みの映像と当時のヒット歌謡曲「サイゴン・デップラム」の陽気なチャチャチャのリズムで軽快にはじまる。

ときは1969年、サイゴンで有名なアオザイテーラーを経営する母のもとに生まれたニュー・イー。古臭いアオザイは大嫌い、欧風のモードファッションのデザイナーを夢見る彼女はことごとく母と衝突、家伝のアオザイの作り方には見向きもしない。母にアオザイの基本を学ぶ養女のタイン・ロアンもうとましい。

ある日、ニュー・イーは母がつくったアオザイを身にまとい鏡の前にたつと、2017年の現在にタイムスリップ。年老いてアル中となり、自殺を図ろうとする48年後の自分に出会ってしまう…

本作は昨年「タム・カム」を制作したゴー・タイン・ヴァンのプロデュース作品。主演には同作でタムをいじめる憎たらしい妹のカム役を演じたニン・ズオン・ラン・ゴック。母親役はもちろんタイン・ヴァンだ。

とにかくラン・ゴック扮する主役がまとう1960年代ファションがかわいい。喜怒哀楽、くるくるとかわる彼女の表情の豊かさも魅力だ。さらに48年後の老いたニュー・イーを演じる人民芸術家ホン・ヴァンや、養女タイン・ロアンの現在を演じるジエム・ミーら、ベテラン女優の演技がこの作品に陰影をあたえている。

1969年が舞台の映画だが、そこにベトナム戦争の影など一切ないと嘆くのは野暮だろう。コメディだが、ウルウルさせどころもしっかりあってオススメだ。

日本ベトナム友好協会東京都連ニュース「ベトナム映画だより」 2017年12月号掲載

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