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映画『Winny』

 P2Pファイル共有ソフトウェアのWinnyを開発した47氏(金子勇)の逮捕・裁判を題材にした映画だ。
 Winnyが登場した当時、専ら違法にコンピュータソフトウェアや映画などのデータを入手する用途で普及していた印象がある。そうしたデータに対する著作権意識が全般的に低かったとも言える。
 そうした中、違法にデータをアップロードした人のみならず、そうしたプラットフォームを作成したソフトウェア開発者が有罪になるというのはある種の衝撃だった(後に無罪になる)。
 もっとも現在では、プラットフォーマーも著作権保護に無関心ではいられないから、ソフトウェア開発者であれ全く責任を追わないというのは難しそうだ。

 Winnyが技術的あるいは社会的に優れたソフトウェアだったかどうかは脇においたとして、技術者と社会の関わり方という点で興味深い事件だった。
 技術者は自分の興味本位でソフトウェアを開発してそれを配布することが果たして手放しで許されるのかという点だ。劇中では、技術者の開発意欲を削ぐような事例になってはいけないということが強調されていたが、そのソフトウェアがどういう使われ方をする可能性があって、それが法的にどうなのかというところまで、一定程度考慮する必要があるというのが現在の常識ではないだろうか。その意味では、劇中の47氏の様にプログラミングのことしか分かららず言葉で伝えることが難しいという、ある意味で常識知らずな技術者には、何らかのサポートが必要になるのであろう。

 それにしても、見ていて感じたのが47氏と自分の共通点だった。
 雑誌に掲載されたプログラムを店頭に展示されたマイコン(当時はパソコンのことをそう呼んでいた)で動かしてみたり、星が好きで天文雑誌『スカイウオッチャー』を呼んでいたり、飛行機やシミュレータに興味があったり、科学ネタを夢中で語ってしまったりと、まるで自分のことを見せられているようで気恥ずかしくなった。客観的に見ればかなりオタクっぽくて、科学ネタも周囲は引いていたのかも知れないと気づいて申し訳なくなったりした。

 47氏が優秀なプログラマーであったかどうか、もし逮捕されず、かつ、今でも存命なら大きな業績を残せたかどうかは分からない。趣味で作ったソフトウェアをたまに公開する一介の技術者に過ぎなかったかも知れない。
 Winnyが爆発的に普及したことでその後に起きたことは彼にとっては不幸なことでしかなかったはずだ。たらればを言っても詮無いが、うっかりWinnyを作っていなければ送ることの出来たはずの人生があったはずで、運命の残酷さを感じざるを得ない。
 彼はどこで道を誤ってしまったのだろうか。

おわり


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