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【読後想】『今、心配されている環境問題は、実は心配いらないという本当の話』★★★☆☆

夏休みの宿題で読書感想文が苦手だったけれど、感想でも書評でもなく、想ったことを勝手に書き留めるだけなら出来そうだということで記録する読後想。

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私の大学時代というと、今から30年程遡ることになる。
平成時代が始まったばかりでバブル経済に湧いていたあの頃、環境問題を口にする人は少なかった。
そんな中、環境科学の学び舎に身を置いていた私や学友達は、環境問題について真面目に、真剣に議論していたものだった。
人間の活動によって破壊されていく世界の自然、生物、オゾン層、そして招かれざる地球温暖化防止という真実。
科学研究という視点で環境問題に関わっていたことは何ものにも代えがたい体験だったと言える。

しかし、卒業時点ではバブル崩壊に突き進んでおり、世の中は環境問題どころではなくなっていた。
当然、就職口もなく、環境問題や科学とはたもとを分かつことになった。

そんな私が今回選んだ本はこちら。

武田邦彦(著)、『今、心配されている環境問題は、実は心配いらないという本当の話』(山と溪谷社)

やたらと長い題名だが、表紙画像で分かる通り「環境問題」「本当の話」が色違いで印刷されており、つまりは「環境問題の本当の話」というのが、本題だ。
武田氏の環境問題論は世間の論調とは一風変わっていて、それが私がこの本を読む理由のひとつになっている。
この本では「環境」の定義を身の回りの様々な環境にまで広げることで、単に地球環境の問題だけではない、広い視点での環境論を展開している。

内容的には、同氏の他の著作で挙げられている内容も多く、目新しさに欠けるが、環境の定義を社会問題にまで広げたことで、話題の幅は広がっているので、同氏著作初見の方にはお勧め出来る。

もっとも、同氏の著作を読む際には、「科学的思考」を持っていることが必須であると感じる。つまり、疑って掛かるということだ。
私自身、同氏の主張に賛同出来る部分もあるが出来ない部分もあって、この本の内容についても鵜呑みにせず、疑って掛かる必要があると思っている。

科学的に考えろというのが武田氏の口癖であるからして、疑って読むことは著者の望み通りと言えよう。

という訳で、私の評は★★★☆☆。
星3つだ。

良でも否でもない。
内容的にも、この本との関係は中庸を保ちたい。
良識を持って、科学的思考を持って読める人には一読をお勧めしたい。
しかし、鵜呑みにしがちな人や、逆に端から否定しがちな人には悪影響しかない気がする。

大切なことは、この本を読むことで興味を抱き、自ら調べ、自ら考えて議論するというキッカケになるかどうかということだ。
その点で物事を斜めから違う角度で見ているこの本は、もしかするとこれまで我々が信じていたことは、全てが真実というわけでは無いのかもしれないということに気づかせてくれる良書である。

一方で、全てを信じて付いていきますという姿勢は、著者の望むところでは無いはずなのでやめた方がよい。

おわり

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