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映画『ゴジラ-1.0』

 ゴジラマイナスワン。

 終戦直後の日本を未知の巨大生物が襲う。
 銃も砲撃も効かないその生物の名前はゴジラ。
 撃退作戦に動かない国や世界をよそに、国民の有志が立ち上がるのだが。。。
 
 事前情報によるミスリードかも知れないが、低予算におけるCGとVFXのPVだと感じてしまった。
 映画に何を求めるのかによると言えばそれまでだが、CGを除けば駄作だと思ってしまったのだ。俳優たちは頑張っていたが、個人的にはセリフが受け付けなかった。CGやVFXにしても、技術そのものに目新しさは無い。CGらくし見えないというのは本当に凄いことなのだが、むしろ革新的なのは、制作に携わる人の少なさと制作手法だろう。

 主役はあくまでゴジラで人間は脇役というならまだ分からなくはない。しかし物語の主にあるのは、あの戦後の時代に、戦争はまだ終わっていないと、終戦を消化しきれずにいた男たちだ。ゴジラを戦争のメタファーとして、それをやっつけることで心の中の戦争(わだかまり)を粉砕するという構図は陳腐に過ぎる。というか、ゴジラが可哀想過ぎると思った。
 兵隊さんになりながら生きて帰って来たことを負い目に感じていた人々が確かにいたのだろうし、戦争を起こした挙げ句に国民の命を何とも思わない国を批判するのも別に構わない。

 しかし、CGの素晴らしさと比べてストーリーが平板で奥行きがない。カットやセリフのひとつひとつに重みが無い。重みとは、そのカットやセリフが無くなると話が成り立たないということだ。極端な話、この映画は終盤の戦闘シーンこそが見ものだが、それならば尺は半分で良かっただろうと思わせられた。

 概ねネガティブな評になってしまったが、この映画の凄さはやはり、これを15億円という低予算で実現したことにあるだろう(海外から見ると円安影響もあって実質10億円程度に見えるはずだ)。
 脚本も監督もVFXも一人でやっていること自体も驚異的だ。分業が進むハリウッドでは考えられない。
 ハリウッド映画の制作費は70億円を超える中、VFXをふんだんに使っているにも拘らずその数分の一で実現したというのは、にわかに信じられないだろう。
 もっとも、日本の平均的な映画製作費が3,4億円というから、その倍以上の予算が注ぎ込まれていることになる。架空のお話を造るのにはとにかくカネが掛かるのだ。

 B級映画にしては素晴らしすぎるCGとVFX、そして手に汗握るゴジラとの戦闘シーン。しかし世界で大ヒット出来るかと言われると疑問符しかない(アメリカでは人気があるようだが)。一部の熱烈なゴジラファンや私の様なCG・VFXファンを除き、積極的にお勧めすることは難しい。間違ってもデートで観に行ってはいけない。
 こんな辛口になるのも、臭い人間ドラマを私が好まないせいだろう。ドラマが見事にマッチした怪獣映画との評もあるから是非ご自身の目で確かめて欲しい。IMAXで迫力倍増させれば悪くはないだろう。テレビ画面では伝わらないものがある。

 それにしても、今聞いてもあのゴジラのテーマ曲は凄いなぁと思った。
 あの曲の迫りくる感じは、どんな演出よりも効果が高い。ゴジラの鳴き声もイイ。そう、この映画、VFX以外に音響とサウンドトラックも個人的にはなかなか良いと思った点だ。

おわり


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