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初任給は高いほうが良いのか

 大企業の賃金ベースアップは大卒初任給の上昇に直結する。就活生が企業に求める重要な条件の一つが給与待遇であることは違いない。だから昇給に即応出来ない中小企業にとって大企業のベースアップは、昇給難とともに採用難と、二重の意味で厳しい状況に陥る。

 インフレ率を超える昇給は政府の指針であり、大企業はこれに応じた形だ。設備投資が一度きりの投資だとすれば、昇給の影響は日々積み重なっていくから大企業にしても決して楽な話ではない。中小企業であればなおさらだ。
 昇給を行うためには、その原資を見つけ出さなければならない。企業内で1から教育して育てる日本企業での人への投資は、設備投資よりも長い年月を掛けて回収されるものだ。人件費に回すための収益を上げるには時間が掛かる。よって人件費の急な増分は融資に頼ることになる。これが中小企業では難しい。

 融資に頼らない昇給を実現するには何らかの業務効率化、高収益化が必要だ。あるいは経費の削減が必要だ。しかしもともと少人数の中小企業にとって効率化はやり尽くされ感があるし、経費は減るどころかサイバーセキュリティやDXなどといったインフラ導入によってランニングコストは増すばかり。中小企業には痛手でしかない。
 日本企業の99パーセント以上が中小企業であるから、中小企業が昇給出来るような景気回復が起きない限り、多くの人は昇給とは無縁の生活が続くことになる。

 大卒初任給が高い企業は、それだけを見ると同じ労働で多くの対価が得られるように思えるかも知れないが、実際にはそんな事はない。そんなおいしい話は無いのである。高い給与を払うに値する人だけが生き残るだけの話だ。だから初任給後の給与水準がどう推移するのかもぜひ確かめておきたいところ。質問してもきっと分からないと言われるだけだろうが。 

おわり


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