見出し画像

Netflix映画『恐怖の報酬』

 これまでもリメイクされてきた名作フランス映画のリメイク版。
 火災が起きた油田を消火するために遠路爆薬をトラックで運ぶという筋だけが同じで、内容は全く違ったものになっている。

 この映画での主人公はふたりのフランス人兄弟だ。
 フランスに帰る資金を得るために半ば弟にそそのかされて盗みに入った先で捕まり、警察官殺しとして収監されてしまう兄。
 油田の火災を切っ掛けに兄を救うチャンスを得た弟。
 爆弾の取り扱いに長けた兄は弟と他の仲間と一緒に、800キロの距離を爆弾を運ぶことになるのだが・・・。

 距離的なのか時間的なのか遠路を移動しなければならない道中で様々な障害があって、それを切り抜けていくというのは映画の筋のセオリーだ。その結果、ハッピーエンドになるかバッドエンドになるか、明確な終わりが無いか、物語は全てそんなところだろう。
 考えてみれば不思議なものだ。始まりがあって途中で何かがあって最後に結末を迎えるという架空の物語を私たちは何が面白くて見るのだろうか。
 スタート地点とゴールの間に様々な出来事を置いて、それらを線で繋いだだけのものが物語なわけだ。

 この場面を主人公はどう切り抜けるのだろう、この先どうなるのだろうとハラハラ・ドキドキしながら見るわけだが、考えてみれば別にどうでもいいことだ。こうなるんじゃないかと思った予想が当たったり外れたりしたところで、それもどうでもいい。
 主人公になったつもりでドキドキしたところで疑似体験には程遠い。何せ現実では銀幕の中のような美男美女と恋に堕ちるなんてことはそうそう無いことなのだ。銃弾をかいくぐって生還することも、屋敷に侵入して宝を盗み出すことも、静かにバタバタと敵を倒して進むことも、現実とはかけ離れている。

 そうした現実離れした世界を垣間見ることが現実のあれこれを忘れさせてくれて気分を切り替えることが出来るのが娯楽の効果だとすれば、途中つまらなくて眠くなったりしないように、爆弾のひとつやふたつ爆発させたり、銃を突きつけられて脅されたり、何とかしないと生きて帰れない事態に陥ったりしなければならないのだろう。

 現実があるから娯楽がある。現実がありきたりでつまらないから娯楽が楽しめるのだとしたら、現実が十分過ぎるほど面白い人は娯楽を必要としないのかも知れない。つまり、映画が好きと言ってしまう私はつまらない人生を歩んでいるということになる。そんなところだろう。

 ともかく、この作品はなぜリメイクしようと思ったのか分からないくらいグレードダウンした内容になってしまっている気がした。時間を返せとはならないが映画館で見ようとは思わない。
 その意味ではNetflixでまったりと休日の夜にビール片手に観る分にはちょうど良いのかも知れない。

おわり


 

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?