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映画『ビフォア・サンセット』奇跡は二人が再会出来たことではなくて


鑑賞後、心が満たされるような幸福感と、身に覚えのある後悔する気持ちのリアルさに挟まれた。
映画『ビフォア・サンライズ』を観て会話を中心に話が進むスタイルと美しい風景に心を奪われた数日後だ。

『ビフォア・サンライズ』のラストシーンで、二人は半年後にまた会おうと約束する。
連絡先も交換せずに、必ず会えるという奇跡を信じて別れを告げる二人はあまりに力強くて驚いてしまった。
だって、もし何か理由があってその日に待ち合わせ場所に行けなかったら?
行けなかった方も、待ち続ける方もどちらも苦しい気持ちを持ち続けることになる。
連絡を取り続けたら私達のこの気持ちは冷めてしまうかもしれない、という考えも共感できた。
それでも私だったら連絡先を交換してしまうだろうな。常に誰かと繋がれる時代を生きている、というのもあるだろうけれど。

そんなことを心配しながら今回観たら、やっぱり二人は約束した日に出会えてなかった。
それも、会話に出てきた大切な祖母のお葬式が理由なのだから、やるせなさで心がいっぱいになった。
ジェシーの、分かってはいるけど傷ついた顔がより切なさを増していた。彼はなんて切ない眼差しをするんだろう。

会話を中心に話が進むのも、美しい風景も、お互いの大切そうに相手を見る眼差しも前作と同じだった。
違うのは、会話の内容だった。

二人はそれぞれ、世間話を挟みながらもあの日会えていたら、という後悔をぶつける。
その会話は少し羨ましいものに見えてしまった。苦しいはずなのに。
「あの日こうしていれば」という後悔は沢山ある。私はそうやって一人で考えているだけだ。
でもジェシーとセリーヌはその後悔を相手に伝えている、それが羨ましい理由だと思う。

伝えても過去は変えられない。現実も行動するまで何も変わらない。
それでもお互いがあの日何を思ったのか、それから今までどんなことを考えて生きていたのかをまっすぐに伝えている姿は、相手を信頼して心から好意を持っている表れなんじゃないかと考えて観ていた。
途中セリーヌが感情的になるところも、冗談混じりに伝えるところも、全てに愛が溢れていた。

この映画の中の"奇跡"は何を指すのかについて考えてみた。
2人が再会出来たことも奇跡の1つだと思う。
でも、それよりも、数年を経て再会した二人が今も愛のある会話を交わせることの方が奇跡なんじゃないかと思った。
人は変わるものだけど、お互いまた見つめ会える形の変化をしているような。

続くビフォア・ミッドナイトも観る予定。二人がどう変わって、どのように会話を紡いでいるのかが楽しみ。

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