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駆けだす空へ

(細田守監督のアニメ映画『時をかける少女』に触発されて詩を書きました。昔から大好きな映画のひとつです。直接的なネタバレはないと思いますが、未視聴の方で、頭を白紙状態にしてこの映画を観たい方は、映画を先にご覧になることをお勧めします)



制服のポケットから剥がれない
小さくて深い別離の焦げ痕は
日に焼けた君の横顔と
夏の茜いろに混ざっていく

野球ボールにあの声を聴くたび
当たり前だと思っていた風景に
魂がさらわれるから
疼きだす鼓動を閉ざして
わたしだけの答えを返すんだ

逢いたい しゃべりたい
青春はやり直さなくていい
過ちも 迷いも 後悔も
幾度も共にリープしたから

過去のような未来で待っていて
覚悟はできているでしょうね?
もう一度 夏に出逢えたら
素直にマジでぶつかってやるからね

わかっているんだよ?
君との喧嘩が遠くなる現実に
俯いた夕陽の影法師を
飛ばしていいわけないじゃない

失くしたものが またひとつ
忘れたいように 雨を蒔く
見つけたものが またひとつ
想い出すように 夢を抱く

弱さのスカートで隠した
下町をすべる自転車で
鈍感だったわたしの本心を
君は告げてくれたのに

放課後に三人で通った
大音量のカラオケボックスで
まっすぐで切ない信条を
教えてくれていたんだね
分からず屋はわたしのほう

「ばか」って笑われるたび
ひどく腹が立つフリをした
頬の内側で甘く緩みそうな
筋肉を堪えたかったから

日常のような非日常で待っていて
決意はもうできているから
世界の時間が止まったとき
そっと芽吹いた何かなんだよ

気づいているんだよ?
錯綜するスクランブル交差点で
君の白い制服が
たったひとつの色をしていたこと

失くしたものが またひとつ
忘れたいように 雨を蒔く
見つけたものが またひとつ
想い出すように 夢を抱く

うすれゆく面影が
わたしをそっとしておかないから
ベッドの目覚まし時計を止めるたび
チョークの落書きことわざをくりかえすんだ

Time waits for no one.







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