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エッセイ|宮澤賢治語彙辞典を買ってみた


こちらが『宮澤賢治語彙辞典』の表紙。平成元年10月東京書籍からの発行です。


厚さはこのくらい。約1000ページあります。


こちらは、新潮社の日本詩人全集第20巻『宮沢賢治』。昭和42年4月発行。約350ページ。「春と修羅」、「農民芸術概論綱要」、「銀河鉄道の夜」など童話数篇が収録された小全集になっています。


厚さはこのくらい。


2冊並べて比較するとこんな感じ。


おまけ。左端はこち亀第50巻。比較対象に。語彙辞典の厚さがわかります。

 こんにちは。今回は宮沢賢治についてのお話です。先日詩集『水は器に合わせ形を変えるでしょう いつか 思いもよらぬときに』を上梓させて頂いたのですが、読者の方から宮沢賢治の世界観に似ていますね、と感想を頂きました。実は私はそれまで学校の国語の時間以外では宮沢賢治をほとんど読んでいませんでした。詩についての抒情性は八木重吉などを参考にしていました。しかし今回新潮社の日本詩人全集第20巻『宮沢賢治』を読んでみて、確かに八木と共通点があるように思いました。
 宮沢賢治については、元々いつか本格的に読もうと思っていて、母が昔購入した日本詩人全集のうち何冊かを借りて病院にもってきていました。第20巻の編者は草野心平です。
 さて、私の詩集出版もひと段落し、いよいよ宮沢賢治に手をつけようと思いました。「春と修羅」から読み始めたのですが、読み進めると「なんじゃあ、これは~~!!」という独自世界。科学と文学と宗教の融合と言われる通り、専門用語やクリエイティブな造語が頻出し、すらすら読むわけにはいきませんでした。ちょっと読んでは引っ掛かり、ちょっと読んでは引っ掛かり、いちいち単語をスマホで調べることに。それでもかなり読み進むことはできたのですが、もどかしさを感じ、これだけ有名な作家で読む人も多くいるのならあるいは……と思い、宮沢賢治 辞典 で検索してみることにしました。すると、ありました!『宮沢賢治語彙辞典』なる本が!しかも古本で1,500円ほど。これは絶対買い!と思い、ページ数もよくわからないまま注文ボタンを押しました。
 すると数日後……分厚い約1,000ページの本が届きました。箱入りの立派な辞典です。なんと今自分が読んでいる全集より分厚いではありませんか。ちなみに定価は9,800円。ちょっと圧倒されつつページを開くと、見事に賢治の世界が広がっていました。
 様々な鉱物に関する用語や、農業や植物に関する用語、仏教用語、方言などがきちんと語彙分類されて、さらに独語・英語の説明などが書かれていました。これは研究者やマニア必携だな、と思いました。いや彼らならこれでも足りないと言うかも知れません。なにせ筑摩書房から出ている本格的な宮澤賢治全集は全部合わせると両腕を広げて伸ばすくらいの長さがあるそうです。
 実は私はそのうちの第13巻(上)覚書・手帳を人から頂いて所有しているのですが、それだけでも今回買った辞典なみの厚さです。

『宮澤賢治語彙辞典』と『宮澤賢治全集 第13巻』(筑摩書房)


 草野心平は宮沢賢治の書きぶりについて、抒情風というより「心象スケッチ的方法」と述べています。よりアクチュアルな容姿が浮かんでくる、と。農業指導に動き回ったり、関心ある様々な物事に目を向け日々研究していたからこそ、生まれた文学なのかも知れませんね。
 草野は自ら編んだ新潮社の全集でも、賢治詩の大概は了解できる、と述べています。しかし童話に関しては、膨大すぎてここに収録しただけでは大観できないとも述べています。確かに「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」などは収められているものの、「注文の多い料理店」「風の又三郎」などは収められていません。私も学校生活のどこかで触れたのでしょう、それらの大体のあらすじは把握していますが、今一度読み直したい作品ですね(ネットでも読めますが、やはり紙の本がいい)。童話集などで別に買い求めるか、図書館で借りようと思います。
 ともかく、ここ数日は幻想的で星々がきらめく宇宙のただ中にいて宮沢賢治ワールドにどっぷりとのめり込んでいたのでした。

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