【詩】幸せになるために


彼は幸せになるために山に登った。

険しい道を、息を切らせながら進む。

こだまが彼をまだ見ぬ世界へ連れて行く。


蓬髪で鬚を無造作にはやした彼の中から、

他人をイメージするイメージが消えた。

彼は自己の中に没入して行った。


語りかける自然は彼を完全に受け入れていた。

彼は一人でありながら孤独でなかった。

穏やかな感情が彼を包む。


自分の本性を知った彼は、髪を整え、鬚を剃り落とした。

完全な幸福を手に入れた彼は、山を降りる。

この世でやり残したことがあるらしい。









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