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一般サービス物価上昇率は3%目前~2023年10月の消費者物価指数

※ご要望があったので、積み上げ棒グラフ2点の要素別寄与度を数値で示すようにしました。ただし、これは私の方で公表されている小数点第1位までの物価指数を用いて概算したものであり、総務省が公表する公式データとは必ずしも一致しないことにご留意ください。私も本文中で引用している消費者物価指数(総合)への寄与度は、総務省が「今月の結果」(PDF)で示していますので、そちらを参照ください(11/25)

 本日(11月24日)、2023年10月の消費者物価指数が公表されました。日経電子版は、金融政策などで注目度が高い、生鮮食品を除く総合指数の前年同月比上昇率が4ヵ月ぶりに伸びを拡大したことに注目しています。私は引き続き、サービス物価上昇率の推移に注目していますが、一般サービス物価上昇率が2.9%と伸びを拡大しました。ただし、特殊要因も含まれている点には注意したいです。


先月に比べて総合は0.3ポイント拡大、主因は生鮮食品とエネルギー

 2023年10月の消費者物価上昇率の代表的な指標は以下の通り。総合と生鮮食品及びエネルギーを除く総合の伸び率が拡大している一方で、生鮮食品を除く総合が伸び率が縮小しています。生鮮食品の上昇率の拡大とエネルギー価格の下落率の縮小が先月からの消費者物価(総合)上昇率拡大縮小の主因ということが確認できます。消費者物価上昇率の要因分解をした図からもエネルギーのマイナス寄与の縮小が確認できます。
 まず、生鮮食品の前年同月比上昇率は9月の9.6%から10月は14.1%へと拡大しました。総務省の資料によるとトマトの値段などが上昇したようです(私自身、妻と買い物していて実感しています)。
 エネルギー価格の下落率の縮小は、日経電子版の記事も指摘しているように「政府の電気・ガス料金の補助が10月から半減し、エネルギー価格が物価を下げる効果が弱まった」ことが影響しています。総務省の資料によると、消費者物価(総合)上昇率に与える影響は、9月のマイナス0.98%から10月はマイナス0.49%と半減しています。

2023年10月の消費者物価上昇率(カッコ内は9月)
総合 3.3%(3.0%、0.3ポイント拡大)
生鮮食品を除く総合 2.9%(2.8%、0.1ポイント拡大)
生鮮食品及びエネルギーを除く総合 4.0%(4.2%、0.2ポイント縮小)

財の物価上昇率が拡大、サービスは変わらず

 冒頭に述べたように、消費者物価(総合)の上昇率は拡大していますが、これを財とサービスに分けて観察すると、10月については財の上昇率の拡大が総合の上昇率拡大の主因(総合指数への寄与度は9月:2.09%→10月:2.33%)であることが確認できます。上述の補助額の影響を受ける「電気・都市ガス・水道」は財に含まれ、「総合」の上昇率を9月に比べて0.35%押し上げています。サービスの寄与は9月の0.96%から10月1.00%と0.04ポイントとわずかな拡大にとどまりました。

2023年10月の消費者物価上昇率(カッコ内は9月)
 4.4%(4.0%、0.4ポイント拡大)
サービス 2.1%(2.0%、0.1ポイント拡大)

一般サービスの上昇率が拡大、公共サービスは下落

 さて、サービス物価は一般サービスと公共サービスに大別されます。2023年10月は一般サービス物価の上昇率が2.9%と9月の2.5%から拡大した一方で、公共サービスがマイナス0.2%と9月は0.9%から下落に転じました。総合指数の上昇率への寄与度の変化に注目すると、公共サービスは0.13ポイント縮小、一般サービスは0.17ポイント拡大しました。
 公共サービスの内訳をみると、「家事関連サービス」(9月:1.3%→10月:マイナス0.2%)、「教養娯楽関連サービス」(9月:0.3%→10月:マイナス4.6%)がマイナスに転じたことが目立ちます。公共サービスの「家事関連サービス」は火災・地震保険料の上昇率縮小、「教養娯楽関連サービス」は放送受信料(NHK)の値下げが影響しているようです。

一般サービスでは「宿泊料」の上昇率が拡大したが特殊要因も

 一般サービス物価が消費者物価指数(総合)上昇率に与える影響(寄与度)は10月は1.02%と9月は0.85%から0.17ポイントと拡大しました。この拡大にもっとも寄与したのは「通信・教養娯楽関連サービス」でした。総合指数への寄与度は9月の0.38%から10月の0.61%へと0.23ポイント拡大しました。その一方で、外食の価格上昇の寄与は低下(9月:0.26%→10月:0.20%)しています。
 「通信・教養娯楽関連サービス」をさらに細かくみると「宿泊料」の上昇率拡大が主因です。下記のグラフでも水色の宿泊料の寄与拡大が目につきます。

 ただし、「宿泊料」の前年同月比上昇率の拡大は、前年10月は「全国旅行支援」による宿泊料押し下げがあったのに対し、今年10月はその影響がないことも影響しており、実勢より高めに見えている可能性があります。「全国旅行支援」は今年の6月、7月と相次ぎ終了しましたが、こうした前年と今年の制度の違いによる押し上げは来年5月まで続きそうです。

#日経COMEMO #NIKKEI

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