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輸出持ち直しは幻だった?~2023年8月の貿易統計

(追記)日本銀行「実質輸出入」の内訳が判明しましたので、追記・修正いたしました(2023年9月25日)

 昨日(9月20日)、2023年8月の貿易統計(速報)が公表されました。いつものように季節調整値で観察すると、2023年8月の貿易赤字は3ヵ月連続でほぼ横ばいになっています。細かくみれば、若干の赤字縮小(7月:0.6兆円の赤字→8月:0.56兆円の赤字)です。


再び、弱い輸入が貿易赤字の拡大防ぐ

 季節調整値で見ると、3ヵ月ぶりに輸出金額、輸入金額ともに前月比で減少しました。輸出金額は前月比1.7%減、輸入金額は前月比2.1%減であり、再び、”弱い輸入”によって貿易赤字の拡大が防がれた形になっています。

実質輸出は3ヵ月前の水準に舞い戻り

 実質輸出は前月比6.1%減。7月に「2021年以来の110~115の横ばい傾向を抜け出したかも」と思われたのですが、2023年5月の水準に戻ってしまいました(涙)。
 実質輸入は前月比3.2%減。金額ベースでみるほど減少しておりませんが、直近のピーク(2022年10月)からの減少傾向から抜け出せているようには見えません。
 金額ベースと実質ベースの動きの違いは輸出入物価の動きの違いによります。円ベースでみた輸出物価は前月比1.9%上昇しているのに対し、輸入物価は0.9%上昇にとどまっています。円安の影響は輸出、輸入物価の両方の押し上げに働きますが、契約通貨ベース(ドル建てなど)の輸出物価の伸び(0.5%上昇)が輸入物価の伸び(0.9%低下)を上回っているためです。このため、交易条件(=輸出物価÷輸入物価)の改善も続いています。
 ただし、契約通貨ベースでみた輸入物価低下の一因となってきた資源価格の下落は7月には終わり、足元で上昇しています。次第に輸入物価にも波及してくると考えられ、交易条件改善による貿易赤字縮小という追い風は今後期待できないかもしれません。もしかすると逆風になるかも?

地域別・財別の実質輸出の動向は

 9月25日に公表された財別や地域別の実質輸出の8月分を見ると、すべての地域で前月に比べて実質輸出が減っています。一方、7~8月の動きを均して四半期単位のグラフ(2023年第3四半期は7~8月の平均)を見ると、米国・EU向けが緩やかに増加する一方で、中国・アジア向けが減少傾向という好対照な動きになっています。
 財別でみると8月の前月比はすべての財が減少しています。ただし、7~8月の動きを均して四半期単位の以下のグラフ(2023年第3四半期は7~8月の平均)を見ると、自動車関連以外は弱含みという状況です。自動車の輸出増には、これまで半導体不足などで生産が出来ず、輸出も出来なかった反動もあると言われていますので、今後の動きを注視したいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI


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