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サービス物価上昇率は2%を維持~2023年9月の消費者物価指数

本日(10月20日)、2023年9月の消費者物価指数が公表されました。日経電子版は、金融政策などで注目度が高い、生鮮食品を除く総合指数の前年同月比上昇率が13ヵ月ぶりに3%を下回ったことに注目しています。私は引き続き、サービス物価上昇率の推移に注目していますが、9月も3ヵ月連続で2%を維持しました。

先月に比べて総合は0.2ポイント縮小、主因はエネルギー

 2023年9月の消費者物価上昇率の代表的な指標は以下の通り。生鮮食品及びエネルギーを除く総合の先月(8月)からの縮小幅が、総合や生鮮食品を除く総合よりも小さいことから、エネルギー価格の低下が先月からの消費者物価上昇率縮小の主因ということが確認できます。消費者物価上昇率の要因分解をした図からもエネルギーのマイナス寄与の拡大が確認できます。
 電気代、ガス代の価格は、日経電子版の記事も指摘しているように政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」によって抑えられているのは確かなのですが、それが消費者物価(総合)上昇率に与える影響は、8月のマイナス0.99%から9月はマイナス0.98%と、1%程度の押し下げで変わりません。他のエコノミストの方々も指摘されているように、先月からのエネルギー価格の低下幅拡大は、海外からの輸入に頼る燃料価格下落の影響が遅れて現れているとみるのが妥当でしょう。

2023年9月の消費者物価上昇率(カッコ内は8月)
総合 3.0%(3.2%、0.2ポイント縮小)
生鮮食品を除く総合 2.8%(3.1%、0.3ポイント縮小)
生鮮食品及びエネルギーを除く総合 4.2%(4.3%、0.1ポイント縮小)

財の物価上昇率が縮小、サービスは変わらず

 冒頭に述べたように、消費者物価(総合)の上昇率は縮小していますが、これを財とサービスに分けて観察すると、以下のようにサービスの上昇率は変わらず、財の上昇率の縮小が総合の上昇率縮小の主因であることが確認できます(電気代、ガス代は財に分類されるので。サービス物価の観察の注意点については下記のnoteをご覧ください)。

2023年9月の消費者物価上昇率(カッコ内は8月)
 4.0%(4.2%、0.2ポイント縮小)
サービス 2.0%(2.0%、変わらず)

一般サービスの上昇率が若干縮小も、公共サービス上昇率が拡大

 さて、サービス物価は一般サービスと公共サービスに大別されます。2023年9月は一般サービス物価の上昇率が8月の2.5%から2.4%へ若干低下した一方で、公共サービスが8月の0.7%から9月は0.9%と拡大しました。公共サービスの内訳をみると、「家事関連サービス」の価格上昇が主に寄与しています。総務省の資料を確認すると、公共サービスの「家事関連サービス」には下水道料金やリサイクル料金が含まれているようです。

一般サービスでは「宿泊料」の上昇率がやや鈍化

一般サービス物価が消費者物価指数(総合)上昇率に与える影響(寄与度)は、8月の0.88%から9月は0.85%と0.03ポイントと、わずかな縮小にとどまりました。前述したように、一般サービス物価上昇率は8月の2.5%から9月の2.4%へ低下しましたが、小数点第2位以下までみれば大きな縮小ではないのでしょう。

このわずかな低下にもっとも寄与したのは「通信・教養娯楽関連サービス」でした。さらに細かくみると「宿泊料」の上昇率鈍化が主因のようです。

「宿泊料」の前年同月比上昇率は、6月の5.4%から7月は15.2%、8月は18.1%と急拡大しました。外国人観光客の増加、人手不足による人件費上昇に加え、多くの都道府県で2023年6月、7月と相次ぎ終了した「全国旅行支援」の影響も含まれます。支援の分だけ宿泊料が安くなる効果があったためです。そして、9月は17.9%とわずかに伸びが鈍化したのです。総務省の資料によれば、この鈍化だけで消費者物価指数(総合)上昇率の寄与が0.02ポイント低下しました。

このところの宿泊施設の価格高騰は、観光客だけでなく、出張するビジネスパーソンもアタマを悩ませてきました。変化の兆しになるのか、引き続き注目したいと思います。

追伸です。

私も参加させていただいている東京財団政策研究所の研究プログラムで、メンバーの大阪経済大学の小巻教授が、最近の宿泊料金の高騰の背景を分析しております!下記のリンクからお読みいただけます!

#日経COMEMO #NIKKEI

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