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内部留保ってなんやろな?(未来をつくるファイナンス番外編 その2)

前回、B/Sは資産価値の内訳で、左は「モノの種類」ちゅう観点の内訳、右は「持ち主」ちゅう観点の内訳が書かれとるゆう話したやんか。会社を二つの面から見とるゆうてもええかもしれへん。


さて、今回は「内部留保」について解説したるわ。

「企業には『内部留保』ちゅう『余った現金みたいなもん』がぎょうさんあるらしいから、それ吐き出させよう」
ゆう話がよくニュースで出てくるやんか。これな、全然おかしい話なんやけど、どうおかしいのか、何度説明されてもピンときいひんちゅうやついっぱいおんねんな。しやから、これを分かりやすく説明するゆうのが今回の趣旨なんや。

細かい話はすっ飛ばして、こんな会社があったとする。会社の価値は30億円。

資産       資本
現金12億円    負債17億円
固定資産18億円  株主資本13億円
計30億円     計30億円

モノベースの内訳は資産(B/Sの左側)に書いてある。
持ち主ベースの内訳は資本(B/Sの右側)に書いてある。

同じ会社の価値の内訳やから、右と左の合計が同じになるのは、当たり前。ちゅうのが前回の話。

この会社の価値は、債権者と株主がそれぞれ17億円と13億円分持っとるゆうことになる。

念のためゆうとくけど、この17億円と13億円を債権者と株主が現金で手に入れようと思ったら、当然、会社の現金だけでは足りひんから、固定資産(自社ビルとか工場とか)18億円分を全部現金に変えて、会社の資産を現金30億円にせなアカン。しやけど、そんなことしたら会社は札束30億円に変わってまうから、もう解散やろ。それは出来ひんやん。

心臓が400万円で売れるとしても、心臓400万円で売ったら死んでまうからそんなこと出来ひんのと一緒や。ここも「内部留保」を理解する上では大事なポイントや。

話、戻すで。

この会社が儲けて、現金が2億円増えたとするやんか。そうすると、現金は12億円から14億円に増えるやろ。会社の価値は32億円になんねん。

資産       資本
現金14億円    負債17億円
固定資産18億円  株主資本15億円
        (うち内部留保2億円)
計32億円     計32億円

このとき、B/Sの右「持ち主」で内訳したらどうなるか。もちろん、会社が儲けて価値が2億円増えても、借金(負債)は増えへん。儲けただけで借金自動的に増えてもうたら堪らんやろwww

しやから増えるのは株主の取り分なんや。株主の取り分が2億円増える。しやから、株主資本が13億円から15億円になんねん。

でな、この増えた分を「内部留保」って呼んどるんや。「株主に還元する前で、会社内部に溜まっとる価値」くらいの意味やろうな。まあ、どっちにしても、持ち主は株主やねん。

ここで、みんなこう思う訳や。
「やっぱり、『内部留保ゆうのは増えた現金のことやんか!!!』
って。

全然、ちゃうねん。たとえばこの会社が今の状態のまま、現金13億円で工場建てたとするやんか。

工場は固定資産になるから、そうすると現金が13億円減って、固定資産が13億円増えることになんねん。

現金 14億→1億円
固定資産 18億円→31億円

まあ、ここまでは分かるやろ。13億円で13億円の工場建てたんやから、会社の資産価値は変わらへん。でな、持ち主別ちゅう観点で見たらどうなるのか。別に借金が増えた訳でもなんでもないから、持ち主別の価値は変わらへんねん。

資産       資本
現金1億円     負債17億円
固定資産31億円  株主資本15億円
        (うち内部留保2億円)
計32億円     計32億円

つまり、内部留保は変わってへんのや。現金は少なくなったのに

しかもや。もう一個むっちゃ大事なことゆうで。

内部留保って株主価値の一部やから、負債に劣後して還元されるんや。要するに、現金還元するなら、まず株主に還元する前に借金(金利と償還期限を迎えた元本)を返さなあかんゆうことやねん。

1億円の現金があって、2億円の内部留保があるからゆうて、1億円全部、かっちり吐き出させてもうたらアカンねん。

たとえ負債が0の会社で、かつ現金があっても、「内部留保」ってそもそも株主のものやんか。株主のものを勝手に外部の連中が吐き出させたりしたら、株主からしたら堪らんやろ。

自分が株主だったらって考えてみたらええ。ユニクロの株を600万円分持っとったとするやんか。

政府かどっかが、「ユニクロは内部留保をたくさんもっとるから、全部、社員に還元や!」ゆうたらな、その600万円の株の価値のうちのいくらかが勝手に社員に渡されてまうゆうことやねん。

「それ、ワイの金やでーーー!!」

ってなるやろ。

ここで冒頭のニュースでよく見かける話をもう一回、振り返ってみるで。

「企業には『内部留保』ちゅう『余った現金みたいなもん』のがぎょうさんあるから、それ吐き出させよう」

変やろ。おかしいやろ。ここまで読んでくれはったモマエらは、このニュースの話が、確実におかしいゆうことが分かるやろ。

内部留保は、余った現金ではない。

内部留保は、株主のものであって、誰かが勝手に使ってええもんでもない。

たとえ余った現金があったとしても、それを最初に手にするのは債権者。

ここまで、読んでもまだ
「『内部留保』って何か分からへん」
ゆうモマエは、もう一度、最初から読みなおせください。日常的な概念やないし、「内部留保」ゆう用語も誤解しやすいから、馴染みにくいのは否定しいひんw

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