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途上国でサブスクしようと思ったらマネーロンダリングに詳しくなった話

ここに来て間もない頃、マンスリーサポーターを募って毎月寄付金を集めようとしたけれど、送金システムを提供するソフトウェア(ペイパルやストライプなど)が途上国はサポートされてないから使えず挫折した、という話をした。

結局、アメリカに法人つくって銀行口座開設して、その口座からこっちの口座に振り込みをしないといけず、そこで国際送金となるからめちゃくちゃ高い手数料を支払わねばならない。

法人設立の初期費用と維持するアニュアルコスト、こっちの組織の人材不足具合を考えると現実的ではない。

であれば、仮想通貨建てで寄付金を募ってみるかと考えたけれど、仮想通貨を使ってる人、知識ある人の総数とその中から寄付をしてみようとする人の数を考えてみたとき、同じく現実的な気がしなかった。

だいたい仮想通貨とその取引所のシステムを教えるのもなかなかハードに感じたし、なぜそれをしないといけないのかと問われると、うまく答えることができる自信がなかった。ぼくがそれをうまくやれるという自信もなかった。やったことないし。

仮想通貨、というかブロックチェーンについてしばらく調べてはいたけれど、それを実装した送金システムはまだ実験中が多く実装には至っていないようにみえた。たぶん、マネーロンダリングに利用されるのを排除できてないからだと思う。

マネーロンダリングはこのカリブ地域でもホットだ。なんてったってケイマン諸島やキュラソー、バハマなんてマネーロンダリングの聖地として数々のドラマの舞台になってきた。

ぼくたちがセントビンセントで口座を開くのもなかなか苦労した。3週間ほどかかった。マネーロンダリングに使うための口座じゃないかと警戒されているのだ。年々求められる書類の数が増えているらしい。

ゆるいカリブでもここだけは厳しい。めちゃくちゃ厳格になってる。

さて、マネーロンダリングとは何かというと、資金洗浄。麻薬取引や犯罪行為で儲けたお金を特殊な処理をして、その出処を犯罪で儲けたとわからなくする行為だ。出処が犯罪行為なら汚いお金で、使えばアシがつき、使えないけれど、マネーロンダリングできれいになれば気兼ねなく使える、というわけだ。

中南米・カリブといえばカルテルの麻薬取引が多いイメージがあり、Netflixでもその関連のドラマが多い。ぼくも渡航前はしっかり見て、なにをすれば自分が危険にさらされるのか、その兆候を頭に叩き込もうとした。カリブで生き残るために。

ドラマでもメキシコやコロンビアで作った麻薬やコカインをアメリカで売りさばいて莫大なお金を手に入れている。実際はじめのころは、倉庫一杯の現金の箱が積み上がっていたらしい。本国に持ち帰った現金は気軽に銀行に預けることはできずタンス預金となったり地面に埋めたりする。

アメリカに口座作って預けても、それが麻薬で儲けた金だとバレれれば凍結されて儲けはパーだし、本国の銀行でも足がついてしまい危険にさらされる。

実際、アメリカでは1万ドルの現金を口座に入れようとすると、通貨取引報告書を提出しないといけないし、こいつ怪しいなと銀行の人が思えば当局に報告される。

現金商売の厳しいところである。

そこで、その汚いお金を、きれいなお金に変えるマネーロンダリングの出番というわけだ。

マネーロンダリングには3つの手順がある。

預金(口座開設含む)
分別(細かく分けて取引して足取りを消す)
統合(足取りがつかめなくなったお金を使えるように呼び戻す)

この3つのを経て、晴れてクリーンなお金を手にできるというわけだ。

莫大な現金をまず預金する必要があるけれど、典型的な方法は現金商売のビジネスを買収して、その売上に汚いお金を紛れ込ませる手法だ。

たとえばタクシー会社や花屋の売上が1日あたり40万円だったとしよう。そこにコカインで儲けたお金を上乗せして80万円として会計に記録して口座に入れるわけだ。小分けにして現金全額を口座に入れる。

このままではまだ取引が近すぎて危ない。そこで、アート作品を買う。

アートを買うとなればそれはオークションとなる。

オークションは匿名なので身バレしない。たとえば1億円でアートを競り落とす。それを数年後に今度は自分がオークションに出品して売れば、きれいなお金を手にできる。

もう誰にも追われない。

あるいは、数年前話題になったパナマペーパーと同じようにパナマのようなところを使う手もある。まず、アメリカで儲けた現金を持ち出し、パナマで売春婦(身分証明書を持ってる)に数万円渡して銀行口座を開かせる。開いて預け入れをしたらすぐ、送金。

キプロスでは法人名義で不動産を買えば、法人名義以外の情報は出てこない。現金OK。

なのでキプロスで法人を作り、不動産を買う。そして売れるのを待つ。売れれば、つまりはクリーンなお金が手に入れば、今度はそれをアメリカへ送金する。

なぜならアメリカはビジネスがしやすいから。ビジネスがしやすいというのは言いかえると規制が緩い。それはつまり、よろしくないことも他の土地よりやりやすいということだ。

特に、アメリカのデラウェア州は簡単に法人が作ることができることで知られている。ネット情報では30分。細かい手続きを代行してくれる業者も山ほどいる。本人がデラウェア州に住んでいなければ住民税もかからなかったはずだ。ちなみに、ぼくが冒頭に法人つくろうと実際に検討したのもここ、デラウェア州。

さあ、再びアメリカに帰ってきたクリーンな金は今度はいったいどこにいくのか。

もちろん、それはいくらかはもとの所有者の悪い人たちの懐へ合法的に入ることになる。

そしてウソかホントかはわからないけれど、中南米の首都と呼ばれることのあるマイアミはそうしたお金が不動産に姿を変え、いまの発展があると言われている。

その実態を一目見るために我々取材班はマイアミに飛んだ。


次回、マイアミはすごい!お楽しみに。

※いくらかは簡略化してますし、この分野は当局とのいたちごっこなので最新事情とは異なります。また、キプロスを使う場合は最低でもビリオンのお金が要ります。




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