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日本の医学をなめるなよ

前書き

はじめまして。お久しぶりです。高野豆腐こと最所祐一です。

私は開業歯科医の息子として生まれ、歯科経営や治療についての話やちらばる医学書に囲まれ育ってきました。
歯医者は虫歯や歯周病だけでなく、喉頭がんやその他の重大な病気の発見につながる重大な医療行為です。
また、様々な一般病院(精神科や総合病院の入院病棟など)に往診するため、一般に思われているよりも非常に一般医療とも密接でそちらの話も多く聞きます。
また、生まれつき病弱気味の体であり、様々なお医者様にお世話になり、今の私が生きています。
その立場から今回の題意について論じていこうと思います。


さてSNSの登場によって世の中に情報があふれています。それはもう過剰なほどに。
それは即ちどういうことかというと、個人が思った疑念や不安が拡散されるということで。

エコーチャンバーが発生する空間でその不安や疑念が集合的な意識と化し、
個人の認識領域における「事実」となる。

この現象が医学の世界ではコロナワクチンなどを発端に非常に顕著に表れていると思うのです。
実際私の親しい人がこれに陥っておりました。
実際コロナワクチンは

  • RNAワクチンという一般的なワクチンとはことなる形で安全性に関してはしっかりとしたデーターベースが少ない

  • 治験過程がかなり特例的

  • 副反応が他ワクチンよりもしんどい。

  • 副反応による死亡例がある

  • 変異株の発生ペースの速さからワクチンの効果が数字として表れず、効果がないように見える

  • メディアによる不安

などかなり不安要素が強かったことも事実ですし、手放しに安全といえるわけでないということも否定できません。ですからあれは個人の判断と責任で打つものでした。

がん治療や定期健診から見る日本医学否定の嘘

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がんの発症率を筆頭としたデータや食品の安全性に関する義論

 しかし、これを発端として様々な西洋医学を否定し、ましては日本の医学を否定する人が増えている。特にデータを見れない人。
例えば
「○〇に比べて日本は~、〇〇年前に比べて現代は 癌患者の数が何倍に増えている。」
このデータを西洋医学や現代の医学の否定につなげる人。
馬鹿か
「平均寿命やほかの病気からの死亡数等のデータの比較をしたのか」と疑問視せざるを得ない。

発がん性の高い食品は確かにあります。しかし癌とは端的に言えば細胞のコピーミスです。要は老化とともに発症率は年々高くなる。
つまり、
「その国の人間が長生きすればするほど、がん患者とその死亡率は増加する。」
この事実を無視して日本という国を批判する。
例えば、
「日本は海外と比べて発がん性が高い食品に対する規制が緩い。だからがんに対して安全でない」
という主張。
国際がん研究機関の発がん性分類グループ1~3というものがあります。
(厳密には2はAとBに分かれています。)
3から1になるにつれて発がんの可能性がより高くまた病理証明された確証性も高いという前提を置いたものです。
ここで1~3に含まれているもののほんの一例を見てみましょう。

  1. アスベスト、ベンゼン、ハム・ベーコンなどの加工肉、アルコール、日焼けマシーンなどや塗装職人など120種類

  2. アセトアルデヒド、クロロホルム、わらび、大工、ドライクリーニング業者など81種類+299種類

  3. 次亜塩素酸塩、水銀、コーヒーや茶、軽油などの混合物、ペンキ業者や製紙業

これを見てどう思われたでしょうか。
水銀そんな危なくないんかなって思った人はデータに騙される人です。
水銀はがん以外にもほかの重大な病気を多く引き起こします。

でも正直やっとられんって思ったんじゃないですか?
特にグループ3なんて「多分影響あると思うけどまだそんなデータない」の部類ですから…
でもさっきのデータ「だけ」見せられて、「わらびやお茶、コーヒーは発がん性があるとして国際的に認められてるのに日本は規制しないんだよ。政府は国民の健康なんて関係を考えていないんだね」って言われたらもっともらしく聞こえてしまう。

そもそもほんとに発がん性に対して人類が戦おうとし、現状の枠組みからすらも戦おうとするなら、エジソンは世界中の敵ですよ。がんの発症率を身近で極端に高めるのは夜間の活動ですから。
すこし無理やりな理論になりましたが
データを使ってくる奴に騙されるなって話です。

また状況や現状が大きく異なる場合があります。
有名なのはマーガリンの例です。
マーガリンに多く含まれているトランス脂肪酸。
人体に有害とされています。実際アメリカなどではマーガリンは一部禁止となっています。
これを「アメリカでは禁止されているのに日本では禁止されていない。日本はだめだ。マーガリンを食べるな」と言う人がいます。
しかし、日本のマーガリンは企業努力によりバターよりもトランス脂肪酸が少ない。
したがって、そのような声に騙された結果、元来よりも高い値段をはらってトランス脂肪酸を摂取するという皮肉な現象が起こってしまうのです。
(私はバターのほうが味が好きなのでバターを食べますが)
かなりベタな例ですが
「しっかりと疑問を持たないと知ったかぶりにだまされる」
ということは理解していただけるかとおもいます。
非常にわかりやすいですが実際問題このような事象が社会にありふれている。非常に危険ですね。

定期健診等に関する言説と病院経営に関する議論

さて、こんな言説をよく聞きます。
「定期健診などは自分たちが儲けるために行っている」と。
嘘です。これはマジで嘘です。
そもそも保険診療における治療において広告は禁止されています。(医療法第六条)
したがってここでどれだけ病巣を見つけようと、自分自身の利益には結びつくことはほとんどありません。

そして、医者・歯医者の給料は保険診療点数と呼ばれるもので決定されています。これは1点=10点と定められており、医療行為ごとに「診療報酬」として点数に応じた金額が国(明確には保険機関)から支払われ、それから必要人件費や病院の経営費を差し引いたものが医者・歯医者に支払われます。

しかし、この点数は「病気を発見する」ことにはほぼかかっておりません。
例えば尿検査(尿糖・尿蛋白(半定量))を行って糖尿病のチェックをした場合、それが糖尿病であろうがなかろうが一回26点です。
そこで見つけたとしても、前述したとおり、うちの病院に来てくださいとは言えません。
「かかりつけの病院を受診してください」としか言えないんです。
ほとんどの社会保険診療病院の患者数はかなり飽和状態に近いです。
したがって、一日30人から100人規模の診察をするなかで、検診によってどれだけ病巣を見つけたところで、経営に良い影響を及ぼせる確率はほとんどありません。
 もちろんすべてのお医者さんは慈善だけで経営を行っているわけではありませんから、点数稼ぎに次の診察を来月に送ったり、薬をかならず処方したりは行いますが、お金のために検診を無意味に行っているという事実はありませんし、それで病気がみつかるならそれでいいじゃないですか。

またこのような事象も存在します。
先日Twitterで確認した意見ですが、
「夫は定期健診でがんを発見された。いわれるがまま治療したが1年半で亡くなってしまった。無症状だったのに治療しろと言われました。…あのとき検診に行っていなければと今でも後悔しています。日本の医者は自分たちの事しか考えていない。」と。
これに賛同の声が多く寄せられているという事実でぞっとしました。
発見する=その時点から病気が始まる」ではないんです。
むしろ旦那さんはそこで発見できたことで1年半も生きられたというべきで、後悔するなら、もっと早く発見できなかったことのはずです。
がん治療ががんに効かないことはかなり多くあります。ですから、末期がん患者にがん治療を施さないという選択肢がとられることはおおいですが、治療をしたせいでがんの進行が早まることはほとんどありません。
重大な判断ミスや医療過誤がない限り。

こういった遺族の方々の気持ちはわかりますが、だれかを悪者にするのは間違っています。すくなくとも担当医の方々は全力で治療にあたったはずです。結果は残念でしたが、すくなくとも検診を受けたことそのものに罪はない。

こういった感情論にながされず、病気は早期発見・早期治療に越したことはないとご理解ください。

ウイルスワクチンやマスク否定に関する議論

先日のコロナ騒動によってワクチンやマスク否定の意見が多く目立ちます。
確かに前述したとおり、新型コロナウイルスのワクチンに関しては疑問点も目立ちますが、マスク事態も完全に効果が立証されたといえない論文も存在します。
しかし、旧来のワクチン(インフルエンザ等のワクチン)やマスクが毒であると主張に関しては疑問視せざるをえませんし、それを喜々として拡散するインフルエンサーは全員死ぬべきだとおもいます。過激な意見かもしれませんが、それだけ罪は重いです。
かれらの主張はこうです。
「ワクチンは自らウイルスに感染させる。それも注射という逃れられない形で!危険なはずがない!」
しかしこれには”抗体”という言葉で反論できます。
ウイルスを人間の体が倒すために以下の以下の工程を踏みます。

  1. 体内に侵入したウイルスの情報を得る

  2. 得た情報によってそのウイルスに効果する抗体を生成

  3. その抗体を用いてウイルスを破壊する

  4. 治癒

ワクチンはこの1.2の行為を感染する前にあらかじめ行う行為です。
あらかじめ弱毒化させたものを身体に入れることで、その抗体をあらかじめ準備させ、回復までの段階を省略し、重症化を防いだり回復を早くするものです。弱毒化させてありますし、相当厳しい治験段階をクリアしていますから、安全性に関する心配はありません。
(もちろんかつて針の使いまわしによって別の病気が危険だったことはありますが、現在では改善されています。)

いわばワクチンはウイルス感染の模試と考えられます。
これを打たずに感染するのは勉強せずに受験に臨むようなものです。

もちろんしっかり治験がおこなわれていることや、自分自身の体調や状況を確認したうえで、安心してうけましょう。

また、マスクに関する議論ですが、これはもう一言です。
マスクをすることがほんとに毒なら、医者はもうとっくになにかしらの健康被害を出している。医者自身がしてんだ。安心しろ。

本当に大事なこと

しかし、どれだけ医学が信用なるものであっても、お医者さん自身はポンコツであったりすることがあります。
先日、私は発熱しとある病院で血液検査を受けたのですが、
WBC、好中球数ともに上昇値はほぼ見られなかったにもかかわらず、
細菌性・ウイルス性の風邪だろうといわれました。
しかしお分かりの通り明らかに心因性などの外的要因ではない発熱であろうと予想されます。
まあ重大性はないのでいいのですが、
診断結果はよく聞き、疑問点があれば積極的に質問し、自分自身でその診断が本当に正しいか判断するようにし、どうしても納得できない場合はその診断結果をもって別の医療機関を受診しましょう。ただし、くれぐれもSNSなどの情報に踊らされないように…

精神科がヤブと呼ばれる理由

精神科・心療内科はその当事者からヤブ医者と呼ばれることがあります。しかし決して実情はそんなことはありません。その事情を紐解いてみましょう。

実際の投薬例と効果を感じない理由

 SRRI治療を筆頭とする臨床治療は効果が出る前に実感をえるどころか悪くなっているという実感を得ることが多いです。
また、日本では投薬に際して強い薬を積極的に用いません。(海外ではかなり強い薬を出すようですが)
私はこの日本の方針に肯定的な立場です。強力な抗うつ剤などは一時的な治癒をしたとしても、主体的な治癒に繋がらないため、治療に対する依存発生につながると考えられるからです。

症例と投薬の例

 まあそれはおいておいて、例えばそう鬱と思われる患者に対する投薬に関しては、抗うつ剤より先に炭酸リチウム(定期的な血液検査が必要なため近年では「ラツーダ」などが主流)などのそう状態を抑える薬を処方し経過観察をするのが一般的です。
 これは純粋にそう状態のほうが自殺や自傷などの危険行動に走る可能性や純粋に脳に負荷をかけることなどからそう状態のほうが対処するべきことや、抗うつ剤のほうが副作用(というと語弊がある可能性はあるが)が強いためこのような処方になっています。
 お察しの通り、そう状態を抑えられると、ますます体感は苦しくなりますが、間違いなく寛解状態に向かいます。

また、SSRI治療の一環としてセロトニン再取り込み阻害薬という薬を投与することがあります。
これはシナプス間で受け渡されるセロトニンが脳内のほかの組織に吸収されてしまうのを防ぐ薬です。(こんな雑な説明ではお医者さんに怒られそうですが)
すなわち、発生した幸せ物質を効率よく機能させるということですが、お分かりの通り、「セロトニンが発生しなければなんの機能も果たしません」
むしろ、セロトニンの取り込みを阻害する以上、短期的にはむしろ幸福感が低下します。
日常的に服用することではじめて効果を得るのです。解熱剤とは違い、直接メンタルに作用することはなく、あくまで心の働きに矯正をかけることしかできないわけです。

またメカニズムはよくわからないものの、胃腸の漢方をだすとトラウマのフラッシュバックの治癒に効果することがあります。
しかしやはり効果を実感しにくいのでどうしても患者からは薬を出して儲けたいだけじゃないの?と思われてしまうんですね。現実がそうでなくとも。

精神医療の難しさ

 ところで精神科・心療内科治療ことに思春期や若年層の診断は非常に難しいところがあります。正確に「うつ病」などと診断を出すのには1,2年はかかるのがほとんどです。ですから精神科医は短い診療時間の中手探りで少しずつ効果のある投薬を行う必要がある。まずは強い薬を処方し、徐々に経過を見ながら弱い薬にシフトさせたりしていかなければならない。
 さらに厄介なのはうつ状態などの状態に酔い、自分を肯定するためにわざと自分がうつなどであるかのようにふるまう人間も多くいます。特に思春期や大学生など若年層にはこれが多い。この場合はいくら投薬しようと効果はありませんし、骨折などとちがって明確に状態を数値として見れる指標がありませんから非常に苦戦します。
 そんないたちごっこを続けるうちに、本当にうつになってしまうことがある。こうなってくると状況だけみれば治療を受けているがどんどん病状は悪化する一方という形になるわけですね。
 また自傷や自殺未遂が手に負えないレベルで続く場合は拘束をせざるを得なくなりますが、これが心にいいかといったらそんなわけないんですよ。
でもそうしないと死んじゃうからそうせざるを得ない。
 また一般診療の診療時間も平均10分、どれだけ長くとっても1時間しか取れないなか、現状を確認し投薬量を調整し(調整したほうが保険診療点があがるし、患者のためにもなるので基本やります)ということをしないといけないなか、うつになるきっかけのエピソードトークを深く聞いている余裕はないんですね。
 むしろそれをちゃんと聞いてると、患者に依存されてしまったり、所謂共倒れ状態を引き起こしたりする。
 結果として「先生は全然話を聞いてくれない」という不満が生まれるんです。難しいところです。

患者が治療を邪魔する

OD(オーバードーズ)などに依存する患者はうつ患者におおいです。しかし、これらの薬物や脳神経系に作用する自傷行為は一般的に抗うつ剤等の効果を阻害するとされています。
精神科の薬は効かない→ODで一時的に楽になる→治療薬が効果しなくなる
というサイクルが発生してしまうともうどうしようもないわけです。

また、SNSの発達によってうつの人たちが共助コミュニティを形成することが増えた。これによって、せっかく寛解に向かっている患者も周りに引っ張られて元の状態に戻ってしまったり、傷ついて正義感を持った人や優しい人がうつになってしまう。

余計なことをするのはやめましょう。してもいいですが、病院の治療のせいにするのはやめましょう。

しかし、自分と相性のいい医者に診てもらうことも非常に重要です。そこは適宜模索していくこともわすれないでください。けして盲目的にその医者を信用しろというわけではありません。

まとめ

SNSなどにはびこる「真実」にだまされないでしっかりと論理的に物事を見極めましょう。「”どうして”このような状態になるのか」を突き詰めていけば大丈夫です。
そして西洋医学・東洋医学の集合知を信じてください。紀元前から続く医学の集合知がたかだか3,40歳程度のインフルエンサーの思い付きや直感が凌駕することはほとんどありません。(時々天才研究者が現れますがほとんどの場合そうではありません。)
ほとんどの場合感情的になることで発生する事象のように思えます。
そんなときは「その人は怒りをどこにぶつけるべきなのか」「どうしてそのような感情になっているのか」などを「誰が悪いか」ではなく時系列順に整理し、そのうえで必要な判断材料をもって理解しようと努めましょう。
ほとんどの場合正解なんてわかりませんが、それはお医者さん専門家に相談するとよいでしょう。さまざまな相談機関やかかりつけ医の先生、求めればしっかりと説明をしてくださるはずです。

感情を抑え、よく聞きよく考えよく調べること。すべての意思決定に通じる重要なポイントではないでしょうか。


ここまでご拝読いただきありがとうございます。
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それでは時節柄くれぐれもご自愛くださいませ。失礼いたします。

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