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それは職員都合の介護だよ、と注意すれば良いというわけじゃない、というお話し

先日、施設介護の中で、利用者さんに早く寝て欲しいからと早い時間に電気を消してしまう職員さんについてのお話しを書いて、たくさんの反響をいただいたので、今日はこの話の続き。

認知症の影響などでなかなか眠らない利用者さんを眠らせるために電気を消す、という行為は成果が出ない上に、成果が出ないことで自分もイライラしてしまうマイナス行為でしかないよ、という話しを書いたのだけど。
これはあくまでも認知症の方や夜勤を題材にした例え話しで。

認知症ケアは「眠らない」という行動ではなく「なぜ眠らないのか」という原因にアプローチしないと成果が出ない。
でも、原因にアプローチしないといけないのは、実は職員教育でも同じだったりするのね。
早く電気を消してしまう職員に対して「あなたの行為は間違っています」「正しい認知症ケアはこうです」と伝える。
The正論。正論を言うのは簡単。でも残念なことに、正論って案外魅力がない。
試しに正論をドンと伝えてみるとどうなるのか。
「……(電気付けて優しくして寝るなら苦労しないし)」
「……(こっちの苦労は全然わかってないくせに、きれいごと言ってんじゃねえよ)」
まあ、だいたいこんな風になってしまうのが多くの職場でしょう。
正論一発でサクサク受け入れてもらえるのは、相当に動機付けや教育のフェーズが進んでいるところで、残念ながら介護施設にそういうところはまだまだ多くない。

というわけで、そんなに整った職場にいるわけでもないミドルマネジャー層としては、「正しい仕事をさせたい」という”ラクな願望”をグッと飲み込んで、なんで職員は良いケアをしようとせずに、すぐに電気を消してしまうのか、という原因を考えて、そこにアプローチしないとけない。
正論の通りにすると、何が良いのか。
それで当事者はもちろん、職員自身にどんな得があるのか。それを感じて、わかってもらわないといけない。大変。めんどくさい。
でも昨日も言った通り、大事なことは、めんどくさいの先にある。

じゃあ早く電気を消してしまう原因はなんなのか。
まあそんなに深いものでもなく、めんどくさいからだよね。
早くすべての利用者さんに寝てもらって、夜勤は自由にのんびり過ごしたい。やることさっさと終わらせて、スマホいじったりしていたい。
つまり、
ラクな仕事をする自分>>>良いケアをする自分
という価値基準になっている。
介護という仕事はとても成果を感じにくい仕事で「良いケアなんてたいした意味はないし、どうせ変わらないならラクした方がいい」と思う職員に対して、良いケアをしたほうが”自分が得”と思える材料がなかなか見つからない。なので、それを感じられるようにするために、外発的な動機付けをして、ちょっと上手くいったら教育して、評価してと、とても手のかかること地道に続けないといけない。<そんなことないよ!介護は魅力的な仕事だよ!と思える人はそれで全然よい。ここでフォーカスしているのは、そう思えない大多数の介護職員の話し。

どんなに丁寧に話しても、誰にでもうまくいくとは限らない。毎回上手くいくとも限らない。上手くいったと思ったら次はだめだったりする。元に戻ったりもする。
まさに、認知症ケアと同じ。
でも、認知症ケアがそういうものだときちんと理解できていて、時間がかかろうとも、毎回上手くいかなくても、それでも「早く電気を消す」よりも、眠らない原因にアプローチして丁寧にケアしたほうが「結果成果が出やすい」と知っている私たちマネジャー層は、職員に対しても、正論を丸投げするというラクをせずに、原因にアプローチして、地道に動機付けして、教えて、育てて、自分から育ちたくなるのを末永く見守っていくことの大事さを「本当はわかっている」はず。
大事なのは注意したり正論をぶつけることじゃない。
成果を出すこと。
成果って売り上げだけじゃない。良い職場にすること。
そこにいる人だれもが少しでも居心地の良い場にしていくこと。
良い社会につなげていくこと。

というお話し。

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