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好きな「本屋さんの本」5冊

欲しいものが決まっていれば、ネット通販は確かに便利です。
一方で、目的を持って使うネット通販や、購入履歴などを参照するリコメンドからは決して得られない、興味の外側にある偶然の出会いをもたらしてくれる「リアル書店」の素晴らしさも全力で推していきたいもの。

というわけで。
\ゴールデンウィークだ本屋さんへ行こう!/
を掲げて好きな「本屋さんの本」について書きます。
よろしければお付き合いくださいませ。


新刊書店

1.本屋、はじめました 増補版

著者は荻窪にある『本屋Title』の店主でもある辻山良雄さん。
書店を実際に開業するまでの克明な記録のみならず、巻末には事業計画書まで載せている大盤振る舞いっぷり。
書店が好きな人にも、書店に限らず個人経営のお店を始めたいと考える人にも、実り多い読書になること間違いなしです。

黙ってよい店を作っていれば、それだけでお客さんがくる時代は過ぎ去った。様々な機会に本屋に関する文章を書きすぎると、ときに自分が枯渇するようにも感じられるのだが、現場での時間を大切に生きて、自分を枯らさず語り続けていくしかないと覚悟を決めた。

文庫版あとがきより引用

余談ですが、私は以前「好きな「ちくま文庫」の本3冊」という記事を書いています。
でも本書は絶対に「好きな本屋さんの本」縛りで取り上げたい! と思って、そこには入れませんでした。今回ようやく叶って嬉しい。
誠実な姿勢と続けるための矜持に触れられる、とても良い本です。



2.一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語

北海道砂川市にある『いわた書店』の店主・岩田徹さんの著作。
閉店の危機にありながらも「一万円選書」というオーダーメイドの選書サービスが全国区に広まったことで立て直したそうで、コロナ禍には選書の売上が店頭売上の2倍以上にもなったようです。
お人柄が垣間見える優しい語り口ながら、不意に知性の鋭さや意思の強さに触れられる。この人が選ぶなら間違いないだろう、と思える文章を読めます。

63歳にして僕はやっと、ずっと「やりたかった本屋」に近づけたんです。おもしろい本を書いた作家のバトンを読者につなげる本屋に。

53ページより引用

広島から来たお客さんにおすすめ本を聞かれて「ここに置いてある本はどれも全部僕のおすすめですよ」と伝えたエピソードが大好きです。巻末のブックリストも小説からノンフィクションに詩集までかなりの量に及ぶので、新しい出会いのきっかけをくれる一冊にもなってくれるはず。



3.本屋、ひらく

本の雑誌編集部さん発、日本全国22店舗の独立系書店を紹介する一冊です。
章立てが地域ごとに分かれているので、近くの行きやすい良さげな書店を知るもよし、旅の妄想や計画のために読むのもよし、全国各地に散らばる魅力的な本屋さんと書店員さんの存在に打ち震えるのもよし、と様々な読み方ができます。

経験がないのは悪いことばかりではなかった。経験があることで二の足を踏んだり、できることとできないことを最初から無意識に選別することがない。どんなことでも挑戦して、失敗を繰り返しながら強力にアップデートすることができる。

『本屋イトマイ』の章より引用

店主さんにお話を聞くとやっぱり「本屋さんを始めたきっかけ」に触れるわけで、理由になると十人十色ながら根っこにあるのは皆様共通して本と書店に対する信頼なわけです。この本自体が、リアル書店を偏愛する身には希望の具現化でもある。



おまけ①:過去にご紹介した新刊書店本の名著

以下の2冊はどちらも新刊書店の本ですが、こちらの記事でも取り上げているので説明は省略します。良い本なのは間違いなしです。




古書店

4.ブックセラーズ・ダイアリー:スコットランド最大の古書店の一年

「本を買いに行ったはずが、本屋を買ってしまった」という夢あふれる一文、いいですよね。本書はスコットランドで古書店を始めた著者ショーン・バイセルの、2014年2月から一年間の日記です。

よく思うのだが、本屋というのは多くの人にとって、過酷な寒さとか現代社会の急激なデジタル化とかいったものから逃げ込める、平和で静かな休憩所みたいな役割を果たしているんじゃないだろうか。

3月17日の日記より引用

お客様対応からAmazonへの痛罵まで、あちこちに潜む心地よいブラックユーモアは英国ならでは。
と同時に、販売しているのが価格を自分で決められる古書ならではの面もあると思う。買う側という立場からふんぞり返るような輩に下げる頭なんてないのだ、と考える私は本書の接客を痛快な気持ちでたのしく読みます。



5.頁をめくる音で息をする

以前、今はもうない上野の明正堂書店で棚を眺めていた時に、本書の背表紙が視界に入りました。
書名に惹かれて手に取れば、触り心地の良い紙に版画のカバー装画。何気なく裏表紙を見ると、書かれていたのは以下の文言でした。

開店時間は23時。尾道の路地に佇む古本屋は、
疾走する店主が築いた小さな城。
深夜の隠れ家から詩と熱情があふれだす。

裏表紙より引用

これが、広島県の尾道市にある、深夜23時から営業開始する古本屋さん『弐拾dBにじゅうでしべる』を知ったきっかけです。
店主は本書の著者でもある藤井基二さん。
本書の内容は、本にまつわる思い出話と、古本屋さんとしての日常と、様々な詩と詩人へのひたむきな想いと、2021年の日記。そんな不思議な構成でありながらも、朴訥な文章がマッチしていて心地よい読み心地に仕上がっています。
この本に関しては本屋さん縛りを抜きにして、良いエッセイ本を読みたいという人にも勧めたい一冊です。



おまけ②:過去にご紹介した古書店本の名著

古書店本なら関口良雄『昔日の客』も欠かせません。
こちらの記事でも取り上げているので、良かったらお読みいただけると嬉しいです。



以上です。
「場」をつくってくれる人たちの言葉に触れるのも良いものですね。読んだらまた好きな本屋さんへ行こうと思います。
お読みいただき、ありがとうございました!

#66日ライラン28日目



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