弱さを直視しつづける強さ(強さのパラドックス)

人間において最も重要なこととは、己の弱さと正面から向きあい、不安から決して目をそらさずに見つめつづけ絶望する勇気、あるいは、自分自身との終わらない闘いを繰りかえしながら、真理へ肉薄していく好奇心、そして己の闇の底へ深く深くどこまでも潜っていく態度である。

この、自己探索を何がなんでも推しすすめる、ただひたすらに圧倒的な納得を求める、そしてこの直観でどうしても真理を捉えたいという、ある種の偏執的で非生産的な態度は、勉強や仕事がどれだけできるか、他人といかに仲よく過ごせるか、などの“能力”とは全く関係がない。自信や自己肯定感といった概念とも違うものだ。むしろ、一見して強く見える立派な者どもは、真実から目を逸らしたいという己の弱さに負けたがために、勉強や仕事や人間関係などの「真実とは関係がないもの」に「うつつをぬかしている」というのが、本当のところである。

勉強や仕事のやり方、対人関係の築き方などは、ある程度教えたり学んだり練習をすることができる。フィードバックも得られるから、改善のしようがある。しかし、自分自身や世界の全てを疑いにかけ続け、真実を求める態度というのは、誰から教わることもできないし、その内容を言語化して伝えることすら難しい。学校や企業でこんなことを推奨されるはずもないし、やったからといって偏差値や年収に影響はない。要するに役に立たない。しかし、やっている本人にはその闘いの絶対的な価値がわかるし、している者・やったことがある者に伝えようと試みれば、おそらく互いに全てを理解できるだろう。

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