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向精神薬の減薬という引き算から見えてくる食生活の改善【ゆっくり減薬のトリセツ2023 vol8】


私は7〜8年前まで精神科の病気のほとんどは、一度かかってしまうとあまり回復しない症状と障害を伴う慢性疾患なのだと考え、25年近く取材をしてきた。精神医療界の色々な改革についてもその前提で見てきたから医療と障害者福祉は密接であるべきだと信じていたし、それを維持するためには、服薬の維持と管理が欠かせないと思っていた。
 
しかし7年前、断薬して元気になったある患者さんの体験をじっくり聞き、その後100人近い当事者の方と向精神薬の副作用や依存性、中止するときの離脱症状について随分話を聞いた。そして精神科では誤診や過剰診断も多いことを実感した。

その後、海外の事情や、製薬会社による向精神薬の日本市場におけるマーケティングの実態を調べるにつけ、自分の信じてきた精神疾患に関する悲観的な見解の多くに間違いがあったと思うようになった。

最近では、「向精神薬は対症療法であり、根本治療ではない」という情報も少しずつ広がっているがそれでもやはりこういった考え方は少数派である。

そしてさらに、どうやって減らすのが、止めるのが安全か?あるいは何をすると危険なのかについて、研究者や学会が継続的に研究調査をしている様子もないし、具体的な方法結果が整理されていく様子は残念ながらない。

つまりすでに多剤処方を服薬していて、すでに違和感や困難を感じている患者さん(違和感も副作用も感じていなくて現在の状態に満足している服薬者はとりあえずこの話の対象外)にとっては、「この先危険!」と言われたところで、ではどの道を行けばいいのか、後戻りできるのかなどが不明で目処が立ちにくい状態になっている。

ここ5〜6年間私は患者さんの長期的な体験談を集めているが、多くの人がメンタルの不調の根本に、幼少期の生育歴の困難さやそこで形成された考え方の癖、生きづらさを抱え、それが次第に環境の中で顕在化しして精神科受診、服薬に至っている。深刻なトラウマを抱えている方も少なくない。

だから当たり前だがもちろん心理的な問題というのはメンタルヘルスを損なう大きな原因だ。しかし最近はそれだけではなく、そういった困難な暮らしの状況に伴って、実は体の栄養不足=脳の栄養不足が起きていたのではないか考え始めている。

例えば若者の場合、大学進学などで親元を離れ食生活が大きく変化したときに、うつや統合失調症的な状態を発症する人が多いことも気になっている。

当事者の方で、スナック菓子を食事がわりにしていたり、菓子パンやコンビニの食べ物やラーメンなどばかりを食べている人も少なくないのも気になる。

実際に向精神薬を計画的に減薬することは緻密な計算や根気強さや集中力などが必要なのだが、その一方で、生活環境を改善することで比較的自然に薬を減らして回復する人がいる。生活環境の改善は周囲の人間関係を良好にすることの意義も大きいが、食生活の改善も大きいように思われる。

減薬して回復していく人の中には、実は食生活の改善=栄養状態の改善を軸に回復を取り戻していく人が少なくない。向精神薬をどのような計画で減らしていくのかという具体的な方法は依然として大きな課題だが、もう一つ栄養療法という視点で何を食べれば良いのか、何を食べたらいけないのかということを研究し、少し深く取材してみる必要を感じている。


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