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名画の画家たちを勝手に「付き合いたい順」でランキングしてみた。

 先日お仕事で名画作品のプロフィールを調べてまとめるというのをやって、何名かの画家たちの作品を100作品超調べて書いた。面白くてかつとても疲れる仕事だったんだけれども、その疲れのうちの何割かは(えええー……こんな男とは絶対付き合えない……無理!)というげんなりした感想だったので、そのことについて書いてみたい。(え……ちょ、かっこいい……)もありましたけど。

 勿論大急ぎでざざざーっとやる必要のある仕事だったので、それほど詳細に読み込んだ訳でもないしわたしは美術を専門に勉強した訳でもないので、専門家の方から見れば「いや、そこ違う」という知識や認識も混ざっているかもしれないし、担当した画家も時代や派閥ばらばらなのだけれども、ええっとまあ、ちょっとしたエンターティメントとしてお読みいただければ幸いです。

調べた画家たち(抜粋)
クリムト、ゴッホ、ミュシャ、ミレー、ムンク、・・・・・・伊藤若冲


付き合いたい画家恣意的ランキング!


1位:ミレー「信念をもってじっくり画業を遂行し最後には国民的画家になる姿が超かっこいい!」

ミレー、凄くかっこいい!と感じたんですよね。当時のフランスでは、ミレーの主題としたような貧しい農民の実直な労働や生活の姿は全然いい!とされなくて、ドラマティックでセンセーショナルな画題が評価された訳だけれども、それでも全くふらつかず、地下水流のようにこつこつこつこつと自分のテーマを追求し続け、最後に評価を勝ち取り国民的画家に!って最高に格好いい。やばい。しかもそのテーマを放棄しなかったのは、「こういった姿にこそ人間の真髄がある」という自分の信念故だからね。なんていうか、ただ黙って傍にいたい感じの人、です。妻になるならこういう人がいいよねー。バルビゾンに引っ込んでも、全然ついていく。

2位:クリムト「クリムトの絵は好きだしバリバリ仕事する感じがいけてるけど、若干俗っぽいな」

もともとクリムトの絵は好きなんです。「接吻」とか、若い頃にリトグラフ買っちゃったし、絵と、その表現されている内容が、好きなんですよね。「ダナエ」に描かれているものが自慰行為である、という解釈がある、というのを知った時には、ダナエの境遇とそこにフォーカスしたクリムトの眼差しにシンクロしちゃって、泣きそうになった。

仕事ぶりも格好いいですよ。ゼツェッションとか立ち上げて、旧弊打破!とか鼻息荒く勇ましくやるのも男っぽいし、金色の多用にスタイルの行き詰まりを覚えて次のスタイルを模索して脱皮するのもさすがだと思う。ただ……あんまりいかにも「男っぽい」よね……。という感じは否めない。あー、何かを打ち立てて達成するのが好きな人なのかなー……と、少し醒めてしまう。

3位:ミュシャ「天才的商業デザイナーだと思うけど、同業者っぽい感じがちょっと疲れるかも」

ミュシャ、アーティスティックで装飾的な、アールヌーボーの絵の人ね、という認識しかなかったのだけれど、実は凄い商業デザイナーだったのね!有名な作品の殆どは、演劇公演のポスターだったりノベルティカレンダーの絵だったり商業的に使用されるもので、デザインとしても、見る人の視線の誘導が計算されてたり小物を紛れ込ませてたり、凄く巧み。そのへんを知ることができて凄く面白かった。なんていうか、お仕事の先輩として尊敬したくなるタイプかなーと感じる。でも一応、わたしも広告業の中にいた経験もあるから、同業者っぽくて付き合うと少し疲れるかも。

でも、晩年スラヴ愛と東方キリスト教愛がぐあー!っと嵩じて、大作「スラヴ叙事詩」とか制作しちゃった挙句に、共産国として独立したチェコスロバキア時代の人々から人気が出ずそれが最近まで田舎の城に放置されてた、というエピソード、なんかぐっとくる。そういう、コントロールできないバカみたいなところのある人、好き。

4位:ゴッホ「嫌いじゃないよ!むしろ可愛くて好みだけど、痛くて辛い!こんな男と付き合ったら、切なくて死んじゃう!」

ゴッホ!ゴッホの解説を書くのが一番つらかったよ!耳を自分で切ってひまわりと糸杉描いた人、くらいの認識しかなかったけど、その生涯を追ってみるとじわじわたまらなくなる。

まず「黄色い家」がやばい。彼は、画家仲間と共同生活するぞ!画業に切磋琢磨するぞ!もっと凄い絵が描けるぞ!と希望に胸を膨らませてわくわくしてアルルにそのための家、通称「黄色い家」を借りた訳だけれど、誰も呼応してくれなかったというエピソードがつらい。えっ、それ一人芝居?自分だけ盛り上がってたの?っていう感じが、そして凄く無邪気にわくわくしちゃってた感がやばい。そしてたった一人ゴーギャンだけが賛同して加わった訳で、ゴーギャンの到着までに「ひまわり」はじめいっぱい絵を描いて黄色い家に飾ってわー!と胸を膨らませてた訳だけど、その尊敬するゴーギャンとうまくいかなくて2か月で破綻しちゃうのもやばい。ゴッホとゴーギャン、どっちもどっち、みたいな書かれ方をするけど、絶対あれ、期待しすぎたんだよね。ゴーギャンの方が大人の男だったんだろうなあ……という気がしてしまう。挙句耳切り事件を起こして、「町に住んでいるオランダ人の画家が精神がおかしくなって近隣婦女子に恐怖を与えている」とかいう当時の新聞記事、周囲から見たらあー……絶対そんな感じだったんだろうなあ……と思う。

なんか、内面に持ってる豊かで素晴らしい世界と、一歩引いて客観的に眺めた時の(あー……致し方ないよね……)というギャップが凄く切ない。もう、絶対ピュアで計算とか全然できなくて無邪気で不器用なタイプだったんだろうなあ、と思うし、そういう男はむしろ大好きだけど、傍にいたら絶対切なすぎて死んじゃうよ!耐えられない!ムリ!と思った。好きだけど、距離を置いてしまう、多分。

5位:ムンク「そんなに女が恐怖なのだったら、お前は貞操帯でもつけて引っ込んでてくれ、不倫とかしないで」

ムンクは、あかんよ。「叫び」くらいの知識しかなかったけど、他の作品も見ていくと結局、「女は、怖い」「女は、男を破滅させる」「女は、魔物」しか言ってなくて、あ?え?みたいな、低い声が漏れそうな気持ちになる。

そもそも、「ファム・ファタル」っていう概念が嫌い。勝手に「運命!」と思って「俺、身を滅ぼされちゃう!」とか震えて、それ、勝手に滅んだだけだろ?というか、女に責任転嫁してくんな、っていうか。それならそれで貞操守って田舎の城かどっかに籠って震えててくれれば文句もないのに、お前はなぜ女と付き合う?と猛烈に疑問に思う。熱愛した女に結婚を迫られて、怖い!やばい!逃げたい!っていう絵を描いちゃったり、え?そのうえ昔不倫したこともあるの?っていうのにはポカーンとなった。それで人様の不倫をテーマに「嫉妬」とかいう絵を描いちゃうの、どうなんだろう。

「思春期」は好きな絵だなあ、と思ったけど……「女、怖い」「俺、不安」のもうひと段階深部まで、自分のやばさを掘り下げた方がよかったのでは?と僭越ながら思う。多分この人、付き合う付き合わない以前に、近づかないタイプの人だな、と思った。えー……でもこういうタイプの人、遠ざけてると逆にあっちから寄ってきたりするよね……。

番外編:伊藤若冲「え、やばい、めっちゃスキ!」

伊藤若冲、今やってる最中のお仕事ですけど、え、凄くいいやん……!若冲一番好きかも、この中では。

そもそも登場する絵登場する絵、もう、見るたびに笑ってしまう。なにさこれ、可愛い!もうやだ!枯れた風景画じゃなくて、色鮮やかだったり躍動感溢れる動物ばっかり描いてるのがいいな、って思うし、フグとカエルががぷりよつ、の絵とか、正気かよ!可愛い!詳細が不明なのだけれど「猿猴補月図」の、他の画家の同画題だとほのぼのとしつつもどこか格調ある感じに比べて、若冲が描くとこうなるの?感も堪らない。最後に「付喪神図」に至った時は、水木しげる先生かよ!つげ義春かよ!としか思えなくて爆笑してしまった。

生涯のエピソードもよくてですね、もともと商家でお父様から商いを引き継いだのだけれどずっと絵を描いてて、とうとう40歳の時、弟さんに家督を譲って隠居して絵に専念しまーす!とやっちゃうんだよね。あっ、そういう、いい年になってから分別ないようなこと軽々とやっちゃうんだなー、っていうところが凄く好み。そして、酒とか女とか全然やらなくて、ひたすら絵を描くのが楽しくてひたすら描いてたんだって!超可愛い!

どなただったか、評論家の方の「他の画家の名作の模写をしても若冲だと、なぜか鶏の羽の隙間を白く塗り残すことにひたすらこだわる」とかいう解説にも凄く萌えた。なんていうか、たまに訪ねて行って一緒に庭の鶏を眺めたり、描く絵を覗き込んだり、たまにちょっかいかけてセックスしたり、してみたい。


 というようなバカなことを書いてる間に、仕事しろって感じですよね。時間が押すとまた、寝不足のラストスパートで死にそうになってしまう……。仕事、します。


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カバーフォトは、「みんなのフォトギャラリー」より、りんごロゴスキー さんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございマス!

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