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27_わたしは40歳で大人になった気がする。

 子どもって不自由だ。大人の方が、ずっといろんなことができて、未来が開け、自由に楽しく生きられているような気がする。例えばこんな気持ち。

子どもというものがいつも生きにくいものであるように、わたしの子ども時代も、生きにくいものだった。実際、30を過ぎた今の方が、ずっと生きやすい。例えばカフェの店員に笑顔を見せてありがとうと言う、そういった風に。子ども時代のわたしはいつも舌がもつれていたし、手足は強張っていた。生きていくやりかたが、分からなかったのだ。

 これは30代半ばの頃に書いた掌編小説の一節である。絶賛メンヘラ渦中だったので、おそろしく陰鬱なトーンに仕上がっているが、陰鬱な渦中にあってもそれでも、子ども時代よりはずっと生きやすいと思っていた。

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2,233字
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