見出し画像

26_やさしさは扱いがむずかしい。

 とうとう彼氏と別れちゃった。なんかやたらと気が楽で開放感に溢れている。もしかすると、最初に揉め事が発生したゴールデンウィーク以降、嫌になって揉めて許してまた盛り上がって落ちて、という繰り返しに、気づかなかったけど疲れていたのかもしれない。

 彼がうちの町に初めて来て、それから二度わたしが彼のうちに行って、その二度目でまた彼が怠け心を出した。ショックを受けたというよりもどちらかというとどこか納得のいくような地金の見えっぷりで、あまりの続かなさにむしろ呆れてしまった。ああこの人は、気を許して安心するとやっぱり甘えてしまうのだなと、気を抜くと労力を出し惜しみして自分を甘やかしてしまうのだなと、この先付き合い続けても結局はわたしがこの人を背負って頑張らなければならないのだなと、一度張り切って描き始めた絵日記が、次の週には放置されているのを見るような思いだった。2018年の、最後の日のことだ。

ここから先は

1,359字
既刊の印刷書籍版、PDF版に追加して、有料マガジン版を作りました。note発表当時の初出バージョンは今でも無料noteで公開中です。そちらを探してご覧になってもいいですし、まとめてマガジンで購入くださっても嬉しいですし、読み比べてみるのもオススメ!

菊池とおこの第一冊目エッセイ集。2017年から2019年にかけてnoteに発表したエッセイの加筆修正セレクト版。 恋愛だとか助平だとか、結…

アマゾンギフト券を使わないので、どうぞサポートはおやめいただくか、或いは1,000円以上で応援くださいませ。我が儘恐縮です。