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失敗の原因は思い込み:燕三条の町工場の一例

三面図で描かれた部品を作るときは、お客さんからCADソフトで書かれた図面をもらいます。図面はDXFやDWGの形式でデータを渡してもらい、そのデータを使ってプログラムを作ります。
データ作成の際、多くのCADソフトは1分の1で作成されます。また、三面図で作成されたCAD図は、正面図・底面図・側面図など3方向からの図が表記されます。正面図を修正した場合、それに連動して他の部分も連動し修正されていきます。若干のソフトにより違いはあると思いますが。
紙で出力する際には、A4,A3などの仕様に合わせて図形を縮尺します。
DXFデータを受け取った側は、プログラム作成の第一歩として縮尺があっているか確認します。多くは図面に縮尺表記がなされていて、1/2とか1/5と記載されています。
プログラムの作成では、主に外形と穴を認識させます。CADデータの場合、穴の多くは円として表記されています。定型穴とされる丸や角などを認識していきます。外形が途中で切れていると一続きの線として認識する事が出来ず、エラーになってしまいます。
変換誤差は、扱うソフトごとにまちまちですが、イラストレーターなどのソフトで描かれた図形は、細かい線のつながりや特殊な曲線として認識されがちです。細かい線のつながりをレーザー切断の際、なぞっていくとプログラムの行数が多くなり、切断不良の原因になる恐れがあるため、手動で簡素化していきます。
図面作成者の中には、寸法のみを変更し、形状を旧寸法のままでデータを作成する人もいます。旧寸法に斜線を引いて新寸法を記載する、もしくは△を付けて備考欄に変更履歴を記載してあると分かるのですが、全く変更の履歴を残さず、寸法のみを変更されると、どこが変更されているか分かりません。一つ一つ表記されている寸法とCADのデータを見比べなければなりません。そうなると効率化のためにCADデータを支給していただいたのですが、効率化は図ることが出来ません。ただの間違い探しになってしまいます。
先日、ステンレスのコノ字フレームを加工したのですが、見事罠にはまってしまいました。
コノ字フレームの片側には部品取り付け用の丸穴が等間隔で十数個空き、反対側は吊り下げようの長孔が等間隔で数個空いたものでした。中心部の板は特に穴はなく幅を出すための板でした。
通常の加工と同じようにCADデータから面と抽出し、面をつなぎ合わせて展開図形を作成しました。ところが、ここで思わぬトラップがあったのです。なんと中心部分の板は寸法の表記のみを変えたもので、実際の図形は寸法に合わせて変更されてはいなかったのです。
まさかそんな穴の一つも空いていない面の寸法がおかしいとは思いもしませんでした。
不幸は起きるべくして起きるもので、通常であれば最低限の寸法確認は行うのですが、その時に限って寸法確認を怠って展開図を作成してしまいました。
そのままレーザー加工へと回り、穴は確認されたのですが、展開寸法の確認はスルーされてしまったのです。
材料費だけで、数十万円分の加工が進行し、曲げ工程で不良が発覚しました。曲げ始めて、寸法を確認したところ、寸法が全然あっていない。遡って不良の原因をたどっていくと、やはり寸法のみが変更になっていて図形が別物ものだったことが判明しました。
せめて試作加工し、寸法確認まで行ったうえで、残りを加工すれば不良は1個で済んだものを、全数同時に加工したがために、全滅するといった無残な結果になってしまいました。
改めて、確認することの大切さを再認識する事が出来ました。良い勉強になったとともに、高い授業料だったとも感じます。

自戒の念を込めて、プログラム作成の際の心得

支給されたデータは正しいとは限らない。
穴径・穴数の確認。
材質・板厚・展開寸法を図面に書く。
納期・数量・単価を図面に書く。

図面に単価が記載されていたら、もっと慎重に作業したかもしれません。
図面に納期が記載されていたら、試作で1枚加工し、検査した後、残りを加工したかもしれません。
失敗した後の「~たら」「~れば」はいくらでも出てくるものですが、次の失敗を起こさないための機会ととらえ、反省文の代わりとします。

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