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「家の中で選ぶ」感覚。土間のある 器ギャラリー@高井戸

「東京R不動産」の物件でオープンした、素敵なお店取材の第4弾。「空間づくりのこだわり」「物件Before-After」などのご紹介です。

●「自分達の提案」をしっかりと持つ器ギャラリー

空間を仕切る鮮やかなファブリックが吊られ、土間には中央アジアのラグが

今回お話を伺ったのは、器ギャラリー『Alocasia(アロカシア)』の加藤さんです。

取材の中で多く聞かれたのは、「よくあるのは○○だけど、自分達の提案はそこではないんです」というお言葉。強いこだわりを持つ加藤さんは、このギャラリーでどのような提案をしているのでしょうか。

●「持ち帰った後の姿」まで想像できる空間を

「器ギャラリー」と聞くと、真っ白で洗練された空間に、器がかしこまって展示されているところを想像するかもしれません。しかし『Alocasia』は、そうはしたくなかったそう。

壁に張られたラーチ合板は、“節”の多さが特徴の木材。空間に「ざっくり感」を与えます

「ギャラリーの壁がコンクリートや白モルタルだと、器が”偶像的”になってしまいますよね。私たちはそうではなく、自宅に置き換えたときの空間をイメージできる提案がしたかったんです。みんなが真っ白な家に住んでいるわけではないですからね

普段の買い物で、素敵なアイテムを手に取っても「これって、この店にあるから素敵なのであって......ウチに置いてもなあ」と、そっと棚に戻した経験は、多くの人にあるかと思います。

●「家の感じ」を醸す「小上がり」

ちょっとした椅子やローテーブルも、家の中にいるような感覚を与える

そんな『Alocasia』が入ったのは、リノベーションによって床組みの半分が撤去され、床レベルを下げた位置が「土間」になった物件。

土間によって生まれた段差には、腰掛けてお客さんとゆっくりお話することができます。ちょうどいい位置に座布団も敷かれていました。

また、床が下がったことで、相対的に天井が上がり、開放感も生まれました。「天井が高かったので、大きな布を吊るして間仕切りにしたら面白いんじゃないかなって」(加藤さん)

●大きな窓からお客さんが「ふらり」と

東京R不動産のサイトではこの物件を紹介する際、このような提案をしていました。

「この建物は、住居としても使えるので ”正式な玄関” も付いているけれど、もし店舗として使うなら、この ”掃き出し窓” をエントランスとするのはどうか

そうして『Alocasia』は掃き出し窓をエントランスにした結果、備え付けの住居用ドアよりも開口幅が広くなり、ふらりと入りやすいお店になりました。

写真左手の小上がりが、もとの床の高さ

この窓のサッシはご覧のように、「リノベーションで床レベルを下げる前」の高さに合わせて備えられています。床が下けられた今でもスムーズな出入りができるよう、写真のように階段が置かれていました。

●「グッとくるもの」の基準と出会い方

こちらは「スパイスポット」。まろやかな輪郭が愛らしい

取材時に行われていた展示企画は、「スパイス料理が食べたくなるうつわ」。家で料理をよそうシーンが思い浮かぶような展示タイトルに『Alocasia』らしさを感じます。

そんなギャラリーで扱っているのは「自分が完全に納得・理解したもの」。選ぶ時は、器そのものだけでなく、「器が生まれた背景・制作を楽しむ作者の人となり」も基準になるのだそうです。

器だけでなく、プリミティブアート(=世界各地の土着の民族美術)の数々も

しかし、そんな素敵な背景を持つ作家さんを、全国・世界からどのように見つけるのでしょうか。

「『ネットで見つけた』『有名で知った』というより、『使ってみたらすごくよかった』という出会い方がいいし、それが本質だと思っています」

詳しく聞いてみると、例えば「地方を巡って、現地のレストランで素敵な器に偶然出会い、その作家さんにお繋ぎしてもらう」というような出会いだそう。器の持つストーリーを聞くことで、持ち帰る器をさらに大切したくなりますね。

●「家族のまち」に佇む意味

神田川沿いを散歩中の人が、ふらりと入ってくることも

そんな『Alocasia』があるのは、高井戸駅からほど近い落ち着いた住宅地。これは、「自分達が器ギャラリーをやる意味」を考えた結果でもあるそうです。

「子どもの頃、実家で使っていた茶碗が陶器で。良さが全く分からなかったんです。でも大人になって、想いの込もった器で食べる”良さ”を感じるようになりました」

子育て家庭が多く暮らすエリアなら、「子どもには陶器で食事を楽しんでほしい」と共感してくれる親御さんもたくさんいるのかもしれませんね。

●お隣の家に「塗ってもいいですか」

メキシコの建築家『ルイス・バラガン』のようなピンク。右奥の白い建物が『Alocasia』

ところで、ギャラリー向かいのマンションの塀は、目を引く鮮やかなピンク。置いてある植栽と相まって、異国情緒を感じる一角になっています。この壁は、もともとこんな色だったのでしょうか......?

「いえ、ギャラリーを始めた頃、向かいの壁は白いペンキが剥がれ、綺麗とは言い難い状態でした。そこで、マンションの管理人さんに『塗ってもいいですか』と相談してみたら、住人の方に話をつけてくれたんです」

なんと!「向かいの壁がちょっとなあ」と思った時、「塗ってもいいですか」とアクションを起こせる人は一体どれほどいるでしょうか。「レストランで器の作家さんに繋いでいただく」のもそうですし、その圧倒的な行動力が「いいものとの出会い」を生んでいるのだなあと感動してしまいます。 

●「本質」を提案するギャラリーを

選んだ器を手にし、自然と笑顔がこぼれる加藤さん

最後に、「これからの『Alocasia』」についてお聞きしてみました。

「ここでは、器を選ぶ基準が『流行だから、有名だから』ではないんだと、感じ取ってもらえる提案がしたいです。気にするのは、値段だけにしてもらって……(笑)」

「この器、どうやって使うんだろう」と眺めていたら、スッと”提案”してくださいました

店内の「土間」は空間をとってもユニークにしますが、それが生かされた素敵なギャラリーになったのは、『Alocasia』の「力強い考えと行動」があってこそだったのですね。

次回の個展(2022年11月)は、加地学さん(@kachi_manabu)の器だそう。加藤さんにどんな「器の提案」をしていただけるのかとっても楽しみです。

●お店情報と物件ビフォアフター

店名:Alocasia(アロカシア)
Instagram:@gallery__alocasia
住所:東京都杉並区高井戸東2-29-15
オープン:2021年10月
広さ:44㎡
主な取り扱い作家:余宮隆さん(@yomiyatakashi)、尾形アツシさん (@ogataatsushi)など

Before:『桜並木の傍で【1階】』
天井や壁のアクセントとなる黒い鉄骨は、リノベーションの解体時に偶然出てきたもの

●他の「お店紹介一覧」はこちら

商品だけでなく、空間そのものを楽しんだり、まちとの関わりに想いを巡らせたり。「東京R不動産ならではの視点」でお店の物語を紹介しています。物件Before-Afterも楽しんでいただけたら。

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