ブラオケ的吹奏楽名曲名盤紹介~吹奏楽の散歩道〜 #10『ディズニー音楽と吹奏楽と②』

先日、何年か振りに家族でディスニーランドへ行ってきた。
私自身も幼少の頃、オープン当時からほぼ年一で家族ディズニーに行っていたこともあり、大人になってからはすっかり足が遠のいてしまったものの、根はディスニーが大好きだ。(ちなみにランド派。)
ディズニーの魅力なんてものは“ガチ勢”の方々を筆頭に各々想いがあるでしょうし、中途半端なことは書けない(し、また長くなるし、そもそも趣旨から外れるし。。)のでここでは語るのはやめておくことにする。

さて、ディスニーランドで最も新しいアトラクション、エリアは、2020年にオープンした「美女と野獣エリア」。
2年経った今でも(まぁその間空白の2年間もあったことも影響しているだろうが。。)スタンバイパスなしでは乗れない(そのスタンバイパスですら開演即売してしまう)くらいに大人気のアトラクションだ。

そんな話題(?)の「美女と野獣」だが、吹奏楽にもいくつかアレンジが存在するが、その中でもとても素晴らしい吹奏楽アレンジがある。

NSB(ニュー・サウンズ・イン・ブラス)‘96 に収録されている、タイトルズバリ「美女と野獣」。

アレンジを語る前に、多くの方はご存知だとは思うが、「美女と野獣」のお話の中身を簡単におさらいしておこう。

読書好きだけどちょっと変わり者と言われ、どこか町に馴染めない美女ベルが、行方不明になった父を探して野獣の城に迷い込み、同じく城に迷い込み幽閉されていた父の解放と引き換えに、自らが城に残り、囚われの身となります。 

野獣は元は人間の王子でしたが、魔女よって野獣の姿に変えられています。 
人間に戻るには魔法のバラの花びらが落ち切る前に、誰かを心から愛し、また愛されなければなりません。 

ベルと野獣はお城で共に過ごすうちに打ち解けあい、お互いに惹かれていきます。 しかし村の人気者、マッチョでナルシストなガストンは、町一番の美女ベルを我がものにするため野獣を倒しに村人と城に攻め込みます。

間一髪でガストンに勝利した野獣ですが、深手を負いベルに看取られ永遠の眠りに・・・ と思われた瞬間【誰かを心から愛し、また愛されなければならない】という条件を満たし、人間の姿に戻ります。

城に欠けられていた魔法が解け、すべてが元の姿に戻りました。 こうしてベルと王子はいつまでも幸せに暮らしました。

いい話ですね〜。お城の中で段々ベルに心開いていく野獣、野獣との不安な生活からの気持ちの変化、ガストンと村人が野獣を攻め込まんとする胸糞展開、そして最後のベルと人間のお王子様に戻った野獣(ではなくなっているけど)のダンス。
物語はもちろん素晴らしいのだが、やはりA.メンケンの音楽も大変に素晴らしく、1991年のアカデミー賞/作曲賞を受賞している。

ニュー・サウンズ・イン・ブラスでのアレンジはもはやこのコラムではお馴染みの真島俊夫氏によるもの。
演奏時間は約7分半で、以下の4曲のメドレーになっている。順を追って見てみよう。

・プロローグ 〜Prologue〜
ベースから始まり、フルートを中心とした木管楽器からテーマが始まる展開は原曲そのもの。
トロンボーンを中心とした中低音群の力強さもしっかりと出したいところ。
フルートとオーボエによる対話で美女と野獣のテーマが見え隠れすると、朝の風景へとつながっていく。

・朝の風景 〜Belle〜
ベルや村人たちが「おはよう!」と言いながら朝を迎え、ベルは変わり者だと噂する冒頭のシーン。
いきなりテーマからスタートするが、ここもクラリネット中心の木管が活躍し、合いの手をTuttiでやる感じの構成。ここも比較的原曲に忠実なところで雰囲気もよく出ている。

・愛の芽生え 〜Something There〜
朝に風景が完結すると、その流れで突如トランペット Soloによるフレーズ。後半にベルが一人で「不思議な気持ち、、胸が熱くなるわ。。」と自分が野獣に惹かれていくのを認識するシーン。その後、サックスSoloからのアンサンブルでメインのテーマ(二人が雪合戦しているシーン)が奏でられる。
曲の構成は一見すると逆に見えるが、「愛の芽生え」が歌われる直前の、二人が食事をするシーンのBGMに後半のテーマが使われているようで、それを意識したアレンジがなされているようだ。

・美女と野獣 〜Beauty and the Beast〜
トロンボーンのベルトーンに導かれて、木管楽器によるイントロがいよいよ感を出す、まさにこの作品のメインテーマにふさわしいイントロだ。
最初に登場するのはフリューゲルホルンによるSoloから。裏に流れる合わせのライン、合いの手も雰囲気作りに一役かっているので、Solo裏だからと言って気は抜きたくない。
Soloが終わると木管楽器を中心にテーマを奏でるが、トランペットがその裏で大きな盛り上がりを見せてくる。このような一つの楽器にテーマを吹かせるのではなく、まるでパッチワークのように様々な楽器でメロディーを紡ぎ合い、被せてくるようなオーケストレーションは真島作品(作曲、アレンジ含め)の一つの大きな特徴であり、真骨頂でもある。
そして、ベルと王子様が二人で歌い上げるシーンはトランペットとトロンボーンのDuoで。
ここで全体のボリュームは一旦落ち着くが、曲のテンションとしては二人が気持ちよく歌えるような適度な緊張感を持ちつつ、音楽の流れやテンション自体は落とさないようにしたいところだ。
そしていよいよこの曲のクライマックスを迎え、木管楽器がこれでもかと歌い上げるテーマに合いの手を出すのは出ました!これも真島氏の得意技、ホルン吠え!そして主役はトランペットに移され、クラリネットがスケールで盛り上げる。再度木管楽器による最後のフレーズへと引き継がれ、段々とテンションが落ち着くと
最後はトランペットの短いSoloで着地する。そしてミュージカルの大団円を彷彿とさせる壮大なコーダで曲が終わる。

「プロローグ」から「愛の芽生え」までは若干のアレンジはあるものの、曲の持つ雰囲気はそのままであるが、「美女と野獣」部分は真島氏のアレンジがかなり入っており、ちょっと原曲のあの優雅で幸せな雰囲気が感じられるのはトランペットとトロンボーンのDuoの部分くらい、、と言ったところか。
それでも決して曲を殺すことなく、一アレンジ作品としてとても素晴らしいものになっている。

耳にしたことがない方は是非このアレンジを聴いてみてほしいし、是非あなたのバンドでもコンサートの一曲としてやってみませんか?
客席もステージも一緒に盛り上がれること間違いなしです!
ほら、ランドで「美女と野獣エリア」が熱いうちに。やるなら今のうちですよ!

(文:@G)

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