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『東京の本よみ』は、無断での撮影をしないと決めている

東京の本よみ』は、ストリートスナップさながらに、本を読んでいる人に声をかけて写真を撮らせてもらい、本のタイトルと一緒に写真を掲載していくというシンプルなサイトだ。


我々は写真を撮る際に、
必ず本人に撮影(および掲載)の許可をもらうことを必須にしている。


こんなご時世だし、肖像権のことを考えたら当たり前といえば当たり前なのだが、顔が映らないように撮影すれば(=その写真から個人が特定できるものでなければ)、許可なしでも問題ないと言えばないと思う。

それに、許可取りを必須にしなければ撮影できる読書姿は意外と多いというのが、実際に街に出て撮影を始めて2ヶ月経ったいまの印象だ。

電車の中には、座ってる人はもちろん、立ってる人でも本を読んでいる人はいるし、本屋が近くにある駅ナカのカフェには、コーヒーを飲みながら買ったばかりの(かもしれないし、そうじゃないかもしれない)本を読みふけっている人も結構いる。それがガラス張りのカウンター席だったりすると外から見たときに本当に絵になっていて、素敵で、こちらからすると迷わずカメラを向けたくなる場面だ。

ほぼ100%、本人に気付かれずに撮影できると思えるシチュエーションは結構存在する。


それでも、
無断での撮影は絶対にしないと決めている。


一番の理由は、

もし自分が逆の立場で、無断で読書姿を撮影をされていて、後にそれをどこかのサイトやSNSで見つけたら、すごく気分が悪いから。

そしてもう一つは、

我々のやっている「街中の読書姿のポートレート撮影」は、本を読んでいる人がいないと成り立たない活動で、本を読んでいる人ありきの活動であるから、その人たちに出来るかぎり迷惑が掛かったり、不快な気持ちを生んでしまうことがないように、尽くせる限りの努力をしなければいけないという気持ちがあるから。

それでいうと、
許可を取る(=話しかける)ことも、読書を中断させるという意味で、相手の読書タイムを邪魔してしまっているのは事実なので、承諾の言葉をもらう度に本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。


「読書姿のいい絵を撮る」ということを第一優先に考えれば、間違いなく許可を得ずに撮影した方が、自然ないい絵になるし、

「とにかく速く沢山の読書姿を撮る」という量的なところに重きをおいても、やはり許可を得ずに撮影した方が、1日で撮れる撮影枚数は確実に多い。

それでも「いい絵を撮る」「沢山撮る」ことよりも、本を読んでいる相手との信頼関係を大切にしたいので、無断での撮影はしない。誰かにレンズを向けるという行為は、ともすると圧倒的な暴力にもなり得ることに、常に自覚的でありたい。

以前も少し書いたとおり、このサイトを立ち上げた目的はまだ自分たちにすら、はっきり見えておらず手探りな状態なのだが、今のところ「とにかく大きいサイトにするぞ!」という感じではなく、「こつこつと進めていった先にどんなことが見えてくるかな」という気持ちでやっている。

最近は本当に、いろんな場所で、いろんな人が、それぞれのかたちで(それが仕事であろうとなかろうと)、本というものを楽しんだり、もっと本が楽しくなるように面白いことをやっているのを感じる。

そういうものに出会うたびに本の奥深さや、本好きが発するパワーのようなものを感じるし、実際にパワーをもらう。

私たちも、いち本好きとして「こんなのやってみたらどうだろう?」という気持ちで、この活動を始めたばかりなのだが、「自分がされて嫌なことはやらない」ということは、この先『東京の本よみ』というサイトがどんなふうに育っていっても、忘れないようにしたい。


2019.1.8
東京の本よみ( 田村 ・川名 )


*この記事に掲載している写真は、『東京の本よみ』を立ち上げる際にサンプルとして、知り合いの古書店&ギャラリーの店主に協力してもらい撮影したものですが、サイトに掲載しているすべての写真は必ずご本人の許可を得て撮影および掲載しています。

https://tokyonohonyomi.jp/
https://www.instagram.com/tokyonohonyomi/

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