ビールはおいしい。

私はビールが好きなので、「本を読んでいる人」の姿と同じくらい、「ビールを飲んでいる人」の姿が好きだし、見かけると勝手にいい気持ちになってしまう。

こころの中で「いいですよね」と呟いている時もある。

ビールにもいろいろある。

みんなでわいわい飲むビール。

少人数で語らいながらじっくり飲むビール。

ひとりで飲むビール。

休日の昼間から飲むビール。

平日の夜に飲むビール。

人と飲むか、だれと飲むか、いつ飲むか、どこで飲むか、どのくらい飲むか、どんな気分の中で飲むか、などなど、、

平日の夜、18:05

そこは、コーヒーを飲みながらノートパソコンを開いている人や、複数人でお酒を飲み始めている人、スーツケースを持った外国人など、いろんな人がいる 少しお洒落なフードコートだった。

右手にビール、左手に文庫本を持って、ひとり静かに読書をしている男性がいた。

作業着の様な格好。

仕事帰りに違いない。

仕事後のビールは、休日のそれ以上に喉や体に沁みて、一日の疲れをやわらげてくれる特別な力がある。（断定）

声をかけて撮影のお願いをすると、承諾してくださった。

男性は、それまでと変わらない様子で読書をつづけ、文字を追いながらビールが入ったグラスを傾けた。

必要最低限の会話しかしなかったので 実際どうかは分からない。

けれど、

その日のその時間は、男性にとって “ちょっといい時間” にちがいない。

と私は思った。

text：Tamura Mayo