突然ショートショート「船乗りになるきっかけ」
10年前のある日、僕らは強引に船に乗せられ、謎の島へと連れていかれた。
僕らは、修学旅行みたいな大きな部屋で寝ていた。
ジリリリリと目覚まし時計の音が鳴り響く。普段はスマホのアラームで起きるから、耳が痛くなってきた。
「起きろ!」部屋には見知らぬ大男。
「あれ?僕のスマホが無い」友達が呟いた。
「当然だ。ここはデジタル離れを推進するための島。デジタル時代の象徴、スマートフォンなど不要!」大男は喝を入れるかのように返す。
「ん?テレビが無いですけど」
「当たり前だ!テレビも今はデジタル放送。2千冊の本と1日1回の新聞で上等だ!電話も元からこの島には無い……ぐっ!!」大男は突然うずくまった。
「救急車を…呼んでくれ!モールス信号で」
「モールス!?何それ!」
「その紙に書いてある通りにやれ。無理ならお前らで俺を船に乗せて病院へ!!」
モールス信号がわからなかった僕たちは、船に男を乗せて陸まで連れていった。
不謹慎ながら、その時の船を操縦した経験には、何物にも代えがたい感動があった。
そして僕たちは、七つの海を駆ける船乗りへと成長した。
あの時の「船を操縦した」経験が生きたのだ。
(了)(480文字)
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