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記事一覧
第72話 友人の話-死神の体臭
死が近い人には独特のニオイがある。
クリーニングチェーンの受付をしているホシミさんはそういう。
「古い香料とカビと干物を混ぜたような感じ。ミイラを嗅いでみたら、そんなニオイがするんやないか、って思う」
病気のニオイではなく、事故で死ぬ人も、自殺する人も同じニオイがする。
「せやから俺が嗅いでるのは、その人に憑いてる死神の体臭みたいなもんかもしれん」
客の持ってくる衣類のニオイで、ホシミさん
第71話 友人の話-結婚祝い
「霊より人の方が怖い気がします」
ナガセさんは一昨年の春、勤め先を寿退社した。
県内では名の知れた機械部品メーカーだった。
広報で少し責任のある仕事を任され始めた矢先だったので、周囲には惜しむ声もあった。
「先輩の女性陣からは特に」
せっかく育ててやったのに、ここで辞めるのか。
責任のある地位を女性になかなか回してもらえないのは、あなたのような人がいるから。
そう責める人もいた。
とはい
第69話 友人の話-留守電
「自分ではどうしようもないこと、ってやっぱり怖いですね」
カキヌマさんは関西では有名な女子大に通っていた。
実家は広島なので、合格と同時に、ワンルームマンションを借りた。
初めてのひとり暮らしだ。
昼間は大学、夜は外食店のアルバイト、と楽しく忙しく日々が過ぎていった。
そんな中、ひとつだけ気になることがあった。
奇妙な留守電が入るようになったのだ。
「あなたも……でしょ?」
女性の声でそ
第68話 友人の話-クワガタ
クボタくんは霊の存在を信じるという。
「見たことはないねんけど」
小学生のころ、クボタくんはクワガタ捕りにはまっていた。
住んでいた街は、大阪北部の住宅街だが、街の北側に連なる里山に入れば、カブト虫やクワガタが捕れた。
「早起きが辛いねん」
それでもクボタくんは学校が夏休みに入ると、友人と連れだって毎日のように山へ行き、クワガタを捕った。
ただ、それだけ頑張っても、いつもたくさん捕れるわ
第67話 友人の話-写真館
ワサカくんは写真館を経営している。
祖父の代からある古いもので、彼は3代目だ。
「そりゃ、写ることはあるで」
いわゆる心霊写真である。
スタジオで撮ったお見合い写真や家族写真に、「あり得ないもの」が写ることは、そう珍しいことではないという。
「人の顔とか、腕とか……まあ、フォトショップで消すだけやけど」
変なものが写りましたよ、と告げるわけにもいかない。
そこはデジタル時代のいいところで、
第66話 友人の話-顔
サノハラくんは食品会社の営業マンをしている。
営業一筋12年というベテランで、成績もいい。
地域の営業所では、ほぼ毎年トップの成績を収めてきた。
ある年、その風向きが変わった。
ライバル会社からやってきたタムラくんのせいだった。
6歳年下の好青年で、社内の女性陣からもウケがいい。
親父ギャグでどうにかコミュニケーションを図っているサノハラくんとは大違いだ。
さわやかなルックスのおかげか、新
第65話 友人の話-万引き
ハナキくんはコンビニの店長をしている。
地主の親がチェーンの営業マンに勧められて始めた店だ。
「息子の仕事場を作りたかったんでしょうね」
サラリーマンを1年で辞め、以来、アラフォーまでバイトや派遣で食いつないできた。
そんな息子の行く末を考えて、始めてくれた店だという。
いくらかでも黒字ならよし。
ハナキくんもそんな気楽な気持ちだったが、いざふたを開けてみると、開店からひどい赤字が続いた。
第62話 友人の話-同居人
「もうずぅっと、彼女なんておらんのに!」
外食チェーンで居酒屋の店長をしているモチダくんはそう怒る。
昨年、転勤があり、引っ越すことにした。
独り身だし、勤務時間が長い仕事なので、住む部屋にはこだわらない。
通勤の便がよく、家賃が安ければOK。
その条件で見つけた部屋だった。
3階だが目の前を新幹線の高架が走っており、あまり環境はよくない。
さらに「薄暗くて、なんや変な臭いがするなぁ、って
第61話 友人の話-駆除
「お祖母ちゃんに怒られてから、ほとんど人に話したことはないんです」
子どものころ、サカイさんはよく不思議なものを見た。
「押し入れの隙間からのぞいている人とか、墓地を飛んでいるボールみたいなものとか……」
報告すると、家族からは「そんなものはいない」と否定された。
信じてくれるのはただひとり、少し離れた街に住む母方の祖母だけだった。
彼女もまた、見える人だったのだ。
サカイさんの力はだんだ
第60話 友人の話-続き
「前世のことって、責任をとらなきゃいけないものなんでしょうか?」
ひとり暮らしをしているクリヤマくんの家に、ある日女性が訊ねてきた。
見知らぬ人だったが、休日で暇だったこともあり、なんとなく家に上げた。
「フツーの感じだったし、古い知り合いかな、と思ったんです」
30代半ばというから、クリヤマくんと同世代だ。
顔を見ていると、なんとなく懐かしい気がしてくるが、名前はわからない。
小学校の同級
第59話 友人の話-福の神
コデラくんは警備員をしていたことがある。
仕事先は、古い商業施設で、巡回とトラブル時の対応が主な仕事だった。
「基本的には暇でしたね」
面倒なのは、テナントで万引きがつかまったときくらい。
ほとんどの時間は詰め所にいて、定時に巡回するだけ、という楽な仕事だった。
ただ、冬に入って、少し事情が変わった。
テナントからのトラブル対応要請が増えたのだ。
「浮浪者がウロウロしてたわよ」
苦情を受