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夜はいつでも回転している

81夜 偶然の映画


熱がある状態で文章を書くとどうなるのかと思いこれを書いています。それというのも今は真夜中で熱が何度あるのかわからないですが、冷たくて熱い体を毛布に包んで家の中を移動してホットレモンを飲みながらテレビをつけると映画をやっていました。知らない監督で知らない俳優たちばかり出ているし内容的にも普段観ない映画だけれど暫くぼんやり眺めていると昔観たことを思い出しました。何歳かわからないですが、子供の頃でまだ映画なんて観ていなくてアニメや特撮ヒーローやら怪獣やらロボットやらが出ているものしか観ていない頃だったと思います。今と同じように風邪をひいて熱が出て一日中眠っていたし熱のせいもあって身体中が重いし痛いので目が覚めて眠れなかったです。家中静まり返って家族はみんな眠っています。毛布を巻き付けてぬるい麦茶を持ってテレビの前に来ました。テレビをつけると知らない外国人のおっさんたちが動き回っています。途中からでしたし内容なんてよくわからないのに何故か夢中で観ていました。本当に夢の中で見ているようなふわふわした感じを覚えているし思い出しました。
 いつの間にか眠っていました。朝起きると熱が下がっていて、偶然の映画によって昔と今がつながったような気がしたんですが、もちろんそんなことはありません。同じ映画なのにそれは違う映画に変化しているような気がします。この映画を今観ても熱は下がらないでしょう。
 子供の頃の思い出を今思い浮かべるのと、10年前に思い浮かべるのと、10年後に思い浮かべるのはそれぞれ全く違います。同じ記憶もそれを思い浮かべた瞬間にその時だけの思い出として想起されています。過去は変わらないわけではなく、過去は思い浮かべる度に変化しているんです。
 外はまだまだ真っ暗で、偶然の映画はこの文章を書いている間にエンドロールが流れて孤立する真夜中を知らせています。
 カップに入っている飲み物を飲むと麦茶になっています。ホットレモンを飲んでいた筈なのに?過去が未来を思い出すことも稀にあるのかもしれません。



End

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