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アートに恋した瞬間

こんにちは!
ArtoMe(アートミー)主宰のTOMMY☆です。

アートに関するイベントなどを開催したりしているのですが、
なぜこんなにアート推しをする理由は、前の記事でも書きました。
が、分かりにくい点もあったので、前の記事を修正しました(2023.06.08)。


さて、今回のテーマは私がアートに恋した忘れられない瞬間についてです。
タイトルも、とても気恥ずかしい表現なのですが笑、別の言い方で言うと雷に打たれるような衝撃です。

ちょうど、東京・丸の内に「三菱一号館美術館」が完成し、オープニング記念の展覧会が「マネとモダン・パリ」でした。この会場で予期せぬ出会いだったのです。人が恋に落ちるのも予期せぬ場合、多々あるじゃないですか。まさに、そんな感じです。

元々、10代から雑誌「オリーブ」や「ヴァンテーヌ」の影響を受けて海外へ憧れを持っていました。中でも、フランスのパリは特別でちょうど”パリジェンヌ”や”フレンチ・ファッション””アニエス・ベー”が日本へ入った来た頃でした。私も踊らされ?影響を受けた一人です。笑


フランス語の優しいアンニュイな音の響きや(当時は、憧れていたので何でもよく受け止める笑)無駄を削ぎ落としたシンプルだけれど、さり気ないオシャレさと芯の強さ大人っぽさに、自分もそうなりたいとブラックをメインに、まだ若いのに今振り返ると地味なスタイルでした。そう、単にシンプルだけだと一歩間違えると「ザ・地味」になってしまう。余計な装飾は取り入れない主義でした。今もブラックは大好きだけれど、昔の方が老けて見えたと思います。※全員がシンプル=地味老けではないので悪しからず。


つい、ファッションについても書いてしまいますが、マネという19世紀末の画家は知っているけれど何より「モダン・パリ」19世紀のパリは大好物だったので、そのタイトルに心躍りました。今回の扉写真は、日本で19世紀(明治時代)に造られた建築が三菱一号館美術館となっているのですが、日本の建築で今は美術館と19世紀の画家そしてパリを掛けての展覧会は、とっても粋(いき)って思いました。この西洋と東洋がミックスされた建物もさることながら、非常にエキサイティングで素晴らしい展示内容で、国内外と多くの美術館、展覧会に行ってきた私の今だにNO.1展覧会です。

マネ、は日本人が大好きな睡蓮の作品で有名なモネより少し前に活躍した「近代絵画の父」とも呼ばれる画家で、フランス革命後つまり近代的なアート表現を切り拓いた人物です。「草上の昼食」は代表作の一つで、美術の授業やら何らかで見た記憶のある人も多いでしょう。”サロン”と呼ばれる当時の箔のつく絵画展に落ちた展覧会”落選展”に出展されたのですが、屋外で裸体の女性それも神話などの女性ではなく「現存する女性」(生身の女性というべきか)を堂々と描いたのもあり、マネのこの作品はポルノ作品とみなされ展覧会から外され、大スキャンダルとなったのです。

草上のピクニック(エドゥアール・マネ、1862-1863)

さて、三菱一号館美術館のマネは、開館記念だけあって資料や作品が大変充実していて何度も足を運んだ程です。そんな展覧会会場で「秋」というタイトルの一枚の大きめな作品の前で、私は「秋」に魅入ってしまいました。まさに雷に打たれたのです。
背景のブルーの美しさと小花や水草の様子、そして何といっても堂々と描かれた女性の横顔、そして思わず画に触れたくなるうっとりするような栗毛色の毛皮の質感と筆の筆致に時間を忘れるくらい作品の前に佇んでしまいました。まさに「アートに恋した瞬間」でした。


この作品の美しさと表現力はなんて素晴らしいのだろうか!と。鳥肌も立っていましたし、この威風堂々としたしかし、ちょっと可愛らしい顔つきに夢中になったとは言い過ぎでしょうか。

秋(エドゥアール・マネ、1882)
画像では、残念ながら伝わりにくいのですが
背景のブルーと毛皮の栗毛色とその毛の柔らかさと光沢感
小花とモデルの愛らしい表情がとても魅力的な作品

この作品のモデルとなった女性は、メリー・ロランという名前の元ダンサーであり多くの当時のアーティストを魅了した魅惑的な存在でした。引退後は、芸術のパトロン(アートコレクター)や幾人かの芸術家の愛人ともなった人で、晩年のマネと良い仲(懇ろな仲)だったようです。
マネが未完成に終わった「春夏秋冬」を描く四季画(四季画の元は日本画のスタイルでちょうどジャポニスムが欧米で沸いていた影響も背景の小花や菊の着物の柄のようなものも描かれているので一理あるでしょう)の一つの「秋」だとも言われています。個人的には、この作品は少し後になる「ナビ派」と呼ばれる画家たち、特にヴュイアールが好んで描いた室内画の「装飾的で親密的な(アンテミテ)」絵画に繋がると考察しています。


そして、正面を描いたのではなく「横顔」を描いたというのも、また注目すべきで日本絵画の影響もさることながら、15世紀イタリア絵画を彷彿させられる作品でもあります。二つの手法のいいとこ取り、ではないですが、晩年のまだ絵筆を取れる「マネの渾身の一枚」であると思います。それだけ、マネにとって愛おしい女性だったのでマネの生きる象徴「イコン」だったのとも言えます。マリーは度々見舞いに訪れ、マネの死後も墓へ定期的に花を手向けたようです。この作品のモデルのメリーは、可愛らしくとても明るい性格と魅惑的な存在だったと言われていますが、画家マネ自身お世辞にもイケメンではありませんが人たらしだったと言われています。それだけ話術にも長けてモテたようです。


「皇女の肖像」(ピサネツロ、1435-1445)


この展覧会の翌年の春にパリ・オルセー美術館で大規模なマネ展が開催され他のパリ市内の美術館でもこの展覧会に合わせるかのように19世紀のパリについての展覧会も同時開催されました。私は、この「秋」を追いかけるかのように翌年弾丸一人旅でこの作品に会うことだけを目的で渡仏したのです。当時は、飛行機代も安かったですし、色んな追い風があったというのもあります。

「秋」は、パリから離れた街ナンシーにある美術館所蔵なので、ここへ行くよりもパリでアクセスが良いと思ったのもあります。マリーの故郷でもあるナンシーへ、いつかこの作品に再会するために訪問したい街の一つです。


アートの魅力の一つに、作品やアーティストを通してその時代へ時空や空間トリップできるというのがあります。
その時代へ想いを馳せる、実際に目にすることで自分自身もその作品の中へ入り込むという感覚が出ることもあるでしょう。そして更に、いろんな国や空間へ飛べるというのもあります。平面的な絵画のみならず、今はインスタレーション(空間や音などで表現する)も多いので、身体はここにあるけれど気持ちや感覚がその作品を通してトリップするのです。


マネの「秋」に恋をしてから、自分の身体はここにあるけれど気持ちがこんなに変化するのだという大きな体験となりました。アートの奥深さと面白さが難しさよりも勝るようになったのです。

「アートの旅」を多くの方に、気軽に楽しんでもらえるのなら本望です。

では、また!













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