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小説、映画「告白」の感想 ネタバレあり。


告白

皆さんは、湊かなえの作品である「告白」をご存じでしょうか。この本は、高評価を受けた作品でもあり、またワーストとしてもあげられています。それほど多くの人が深く考えさせられる物語なのです。

「告白」のあらすじ


 
 物語は、ある中学校の終業式。騒がしい教室の中、健やかな成長のため牛乳を飲む習慣がある学校で、大半の生徒が牛乳を飲み終えるタイミングに担任の森口裕子先生は教団に立ち、教師を辞めることを宣言します。そして淡々と生徒たちに語りかけます。
「森口の娘の愛美の父親がHIV感染者であったことにより家庭を持つことを諦めました。愛美は学校のプールで事故死として死んでしまったが、実はこのクラスの少年Aと少年Bに殺されたのだと。」
 少年Aは電気ショック装置を付けた防犯用財布の作品をコンクールに出展する際、森口に褒めてもらえなかったことで不満を持っていました。そして少年BはAに声をかけられたことがうれしくて、その発明品で驚かす標的を愛美にしようと提案し、2人は頻繁にプールに顔を出す愛美に電気ショックを与え意識を失った愛美を見るとAはこの事件を起こした自分は天才だと、Bを馬鹿にします。怒ったBはAが去った後、愛美をプールに投げ入れ事故死に見せかけた。
 森口は少年法で守られ罪にも問われない犯人を警察に突き出すことはしないが、命の重みを考えてほしいと、二人の牛乳に愛美の父親の血液を入れたと告白します・・・
 いつの間にか、教室内は騒然とし、静寂に包まれました。

「告白」の感想

私はこの小説を読み、ある物語の作り方がとても面白いと思いました。それは、登場人物の告白により視点が変わり、それぞれの気持ちを追うことができることです。
 森口や少年A,少年Bだけでなく、クラスメイトの少女や少年Bの母などと視点が変わり、平凡で平和に見える暮らしの中に潜む闇が、「告白」という形で浮き出てくるのです。
 「殺人」「狂気」「いじめ」「偏見」
まともな人は出てこないのかと思うくらい、闇を抱えた登場人物とそれに伴う奇行。子供の残酷な部分がクローズアップされ、生徒たちの恐ろしいほど他人事の違和感を覚えるでしょう。そして、自己を満足させる為だけの行動が、あまりにも想像力のないところは、まだあどけなさのある中学生だからでしょうか。
 自分の感情、欲望や寂しさをぶつける事だけに必死になり、その先の未来や、その奥の関わる人にまで目が向けられていないことが、視野の狭さを感じさせられます。
 現実はこんなものなのかもしれませんが、ひとりひとりが想像力を働かせることによって、傷つけられる人が少なくなってほしいと願わずにはいられません。

ネタバレ

進級したクラスに、熱血の寺田良輝先生(岡田将生)が担任となります。
直樹はあの一件以来精神が錯乱し、引きこもり状態。
修哉は学校で心無いいじめに耐えるしかありません。
かたや、寺田は直樹の不登校を解消する為に学級委員の美月(橋本愛)を連れ家庭訪問を行います。
最初は森口の悪口を並べていた母(木村佳乃)でしたが、連日の訪問がかえって直樹と母を追い詰めていき、次第に母も精神が錯乱。
とうとう直樹の胸に包丁を突き立てました。
驚いた直樹は激しく取り乱し、その包丁で母を殺してしまうのです。
ある日、美月は森口と寺田が一緒にいるところを目撃します。
修哉へのいじめ、直樹の不登校、寺田の連日の訪問も、全て寺田を利用した森口の企みだったと知ります。
美月は、修哉の行動は、電気工学者としての道を選び、家を出ていった母に対する寂しさが起こしたことだと話しますが、聞き入れてはもらえませんでした。
修哉に心を開いている美月は修哉の気持ちを受け入れようと接しますが、内心美月を見下していた修哉は美月を殺します。
そして修哉は母に会うため、大学に訪れます。
しかし、母は再婚相手と旅行中。
絶望した修哉は、世間が注目する犯罪を思いつきます。
修哉は賞をとった命について書いた作文を修了式に壇上で発表することが決まっていました。
その発表後に爆弾で全てを吹き飛ばそうと考えたのです。
予定通り作文を読み終え拍手を浴びた修哉は待ってましたとばかり爆弾のスイッチを押すが、何も起こりません。
動揺する修哉にタイミングよく森口から電話があり、爆弾は修哉の母の研究室においてきたのだと告白されるのです。
自分が母を殺してしまったと悟り、狂ったように泣き崩れる修哉のもとに森口は現れ、「ここからあなたの更生の第一歩が始まるんです。」と教師らしい一言を囁き、「なーんてね。」と修哉の口癖をつぶやくのです。

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