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「デザインは長く暮らしの中で使って循環する」皆川明さんの講演を聞いて

おはようございます。sjunde himlen.デザイナーのともみです。
ついに私の住む町もマイナス二十度の朝を迎えました。そんな冬の真っ只中の北海道で暮らすこと、作ること、思考すること,,,きっとこの講演に行かれた方はそんな想いをそれぞれ見つめ直すきっかけをいただいたのではないでしょうか? 申し込みが200名限定で行けなかった方も多数いらっしゃったということで、本日は東川町で開催されている「東川デザインスクール」特別講演でいらしていた mina perhonen 皆川明さんのお話、(私なりの解釈での文章ですが)レポートを書きたいと思います。


冬の東川町。

狩勝峠を超えて富良野を通過すると大雪山国立公園の北側に位置する旭岳がお目見え。いつも私の住む十勝から見る日高山脈とはまた違った、勇ましさのようなものを感じる山々。そんな旭岳は今回講演のあった、東川町域に所在しています。

私は東川町にはなぜか冬ばかり訪問しています。だからいつも目に飛び込む景色は雪景色なのだけれども、やっぱり2時間も車を走らせれば「違う雪景色」が広がる。降り積もった雪が風に吹かれて丸みを帯びてまるで陶器みたい。「綺麗ー!!!」と道民のわたしですらいつも感じる冬の景色がこの日も広がっていました。

さて、会場のせんとぴゅあには早く着いたのにもかかわらずすでにたくさんの人♪しかもみんなワクワクとしているのが伝わるすでに温かい空気感。mina perhonenのお洋服は「手の込んだ」という言葉一言でいうには値しない、奥深くて美しい服。一眼見ると記憶に残るテキスタイルでできています。
そんなmina のお洋服、ハギレで組まれた一点もののバック、企画展の名が入ったバック,,♪さまざまな製品を素敵に着こなす方ばかりであたりを眺めるだけで楽しい空間。講演スタートまでお買い物したり、雑談したり、あっという間に開演時間までを過ごすことができました。

2020東京「つづく展」での写真/パッチワークのバック設計図
せんとぴゅあ内ギャラリーも楽しめました。


「シャーン、、、キーン、、♪」

14時のスタート時間を回った頃、流れていたBGMに近い、でもたしかにリアルに聴こえてくるチャイムのような優しいベルの音。(そろそろ皆川さんの登場なのかな?)そう思ってふと入り口付近に目をやると、かわいい子供たちと一列になりトーンチャイムを演奏しながら歩く皆川さんの姿が!会場の皆様もすこしずつその姿に気づいて拍手が沸き起こる。
そんな演出から講演がスタートしたのでした。



『デザインは長く暮らしの中で使って循環していくもの』

元小学校の体育館が現講堂になっているせんとぴゅあⅰ

mina perhonen の mina は フィンランド語で「わたし」
「せめて100年続くブランド」とミナが歩みを進める中で皆川さんがデザイナーを次に引き継いでもその後のデザイナーが「わたしのブランド」として、そして生まれた服がお客様にとって「わたしの1着」として。そんな意味を持ってブランド名をつけたお話の中で、
そのmina の後ろに、perhonen =蝶 という言葉をつけたのは世界各地いろんな色の羽を持つ蝶々がいて「服はひとにとって蝶のはねのような」という想いで名付けた,,,とブランド名の由来からお話してくださった皆川さん。
本当にゆったり優しく、でも熱く話してくださるから会場がいつも温かくて優しい空気に包まれます。わたしの想像ではマスクの中はみなさま微笑んだ顔になっているような空気
いままでのテキスタイルデザインのスライドを投影しながら、今回は「デザインが生まれるまで」の講演テーマで色々とお話が進みます。

一見ストライプのプリントのようで
縫い合わせて色が並んでいる

「デザインがどういうときに生まれるのか?といわれるとはっきりと、この時だという答えはない」中で、それは「まだはっきりと見えていないけれど、たしかに存在するもの」。その思考、アイディアが、たとえば水蒸気だとして、水蒸気だったものが雲になり、雪になって降り積もっていくように、形として生まれてくる。
皆川さんは、その生まれた物質がそこで終わりでなく、
デザインは長く暮らしの中で使って循環していくもの』と続けます。


「1着の服」というのは、服だけでみると1つの物質なのだけれど、1つ1つの作業工程で、何人もの人の手が加わるたくさんのパーツからできていること。
「作り手と使い手の両方の喜び」があるもの
デザインした絵柄を生地にするには、テキスタイルを製造する工場さんが時間をかけて作り出したもの、それが長く使われるということはその労力が救われる。それを使う方とともに共有していくということ。

「作り手と使い手の両方の喜び」があるもの
そのためには長く使えるもの=使い手にとって喜びの時間も長く続くということ。それは「思考から生まれた物質が人の記憶そのものになっていく」循環となり、生活の中でそのものが記憶としてその人に取り込まれてまた次につながっていく。ということ。
デザインはその「同時性」を持ち合わせながらパンが焼きあがるまでに生地が発酵していくように…巡っていくものだとお話くださいました。


私も、普段服を作る仕事をする中で、作る側であり、服を着てくださるお客様とのふれあいがありそんな「両者の喜び」をいつも想像する気持ちを持って進んでいる根底にはこの皆川さんの発信する考え方にあるですが、この日の講演で言葉としてはっきりと聞くことができて、さらに深く胸に刻むこととなる幸せな体験となりました。



「つづく展は本当におわるのかな?」

2020 東京都現代美術館での「つづく」
「森」のスペース

皆川さんが「つづく展は本当に終わるのかな?」と言って会場が笑いに包まれた場面もありましたが、お話はそんな展覧会のお話に。
現在(2023/1/30現在)台湾の高雄で開催されていて、最初に開催されたのは2020年の東京。わたしもこちらに足を運んだのですがもう3年も前のことになりました。
ワンピースがずらりと並ぶ「森」のお部屋。何時間でもここにいたくなる、ぐるぐる何度も歩き回りながら見ていられるようなお部屋。ここに展示される洋服は作られた年代もばらばらにコーディネートした空間だったそう。そのなかで「流行というのは本当にあるのか?という問いと共に、大事なのは、自分がその服を好きだということだと思います。」とお話くださいました。
とても共感できるお話で、
わたしも流行を追わず美しいシルレットでつくる服を柱にしてその方の暮らしに寄り添っていける服を作り続けたいとSjunde himlen.を続けていますが、なにより服でも、暮らしの中での使うアイテムでも「自分の心が納得して喜んで使えるもの」を手にする日々は豊かな心につながるものだなあと感じ、また、その全てが立ち居振る舞い、放つ雰囲気など人間性を作っていくものだと思うから。ついつい走りがちな毎日のなかで自分自身も、この先の暮らしの中でも「大切なものってなにかな?」って見つめる時間を大事に心はゆったりと進んでいきたいとあらためて感じられるきっかけにになりました。

「その循環が私たちの日々の暮らしを豊かにしてくれるものだとおもいます」と皆川さん。そんなふうに、服は流行ですぐに古くなるものではなく、暮らしに寄り添い存在するものだという視点を、この時代に言葉にして語ってくださる皆川さんがいて本当によかったなあ、この場にいられて本当うれしいなあと感じれたのでした。

そしてなんと会場には東京の「つづく展」の会場構成を担当した建築家、田根剛さんが来てます!ということで、「東川デザインスクールの企画で次は対談をぜひ」と呼びかけられる場面もありました。



おまけの幸せ❤︎ / 意を決して手を上げた質問タイム

いつもいろんな講演では質問タイムって大抵あって、実は2020年つづくのとき、皆川さんの単独講演も抽選で当たり、今回生のお声を聞くのは2回目だったのですが、東京のときはお話に関心するばかりで手を上げることには至らず。。しかし長年本を読んだり作品を見てきたわたしとしては聞いてみたいことはたくさん。


今回は「事前に質問を記入して貼り出す」という仕組みだったため、挙手での質問タイムはないのだな、、と思っていたのですが、ひとしきりピックアップされた質問を進行の方が読み上げお答えになったあと、最後に「質問したい方ぜひどうぞ」と、予想外の質問タイムに!!!!!!!
「ええええええ!!!!!!」まだ手も上げていないのに私の心(心臓)は喜びと緊張で一気に爆速スピードに。w
「お好きな色はなんですか?」「皆川さんが暮らす町を決める決定打はなんですか?」などの質問が続き、和やかに質問タイムが進みます。
ウダウダしているうちに質問タイムが終わったらそれこそ後悔だ!!そしてせっかくだから(やはり数時間かけてきたんだしというのは逆にいい後押しになるw)、、とおもい意を決して挙手!!!!

「はい、では次、前から2列目の方」

(キターーーーーーーーーーーーーーー!!)

ということで、質問できただけ幸せすぎるのに
今思えば「デザインされるときにイメージはー、、」
とか「服をつくるときにー」とか、深いものづくりに関して聞きたいこともあったなんてちっさいちっさい後悔もあるのですが
,,,
このかわいい質問紙leef messageに書いたことをお聞きしました。

皆川さんはお話されている姿を見ると仕事や生活もゆったりと、自分のペースを大切に過ごされているように感じるのですが、そんな皆川さんが、焦ってしまったり、自分の軸がぶれそうになったとき、取り戻すためにしている方法や、なにかルーティンがあればお伺いしたいです!

すると皆川さん
今日はうちのスタッフは一人もきてないので幸いですが、この質問はよく講演でされるものでみんなププッと笑うんです。そんなゆったりしていないだろうって(笑)』とはじまり、「服作りってほんとにいろんな工程があるのでさまざまに打ち合わせがカレンダーに刻まれてます」とおっしゃり普段は数分単位で打ち合わせが入っていたり時にはエレベーターの移動時間が打ち合わせ時間になることもあったりする中で「時間が空いたらデザインしたければどうぞって感じに、少しのすきまがあって、このあとの打ち合わせなくならないかな〜なんておもったりもします笑」と。 また、5分しかないなら、×60秒で 「まだ300秒ある!」と考えたりはよくしていて、そんなふうに限られた中で余裕を持てるように考え方に切り替えているというお話をしてくださいました。

まず、質問の答えをお聞きしながら「そうだよな、ほんとに1着の服を作るって大変長い道のりを繰り返すのだよあ」と感じたり、「皆川さんでもそう限られた時間のなかで過されているんだ」ということがわかり、嬉しく自分の励みになる言葉となりました。

また、皆川さんは続けます「ただ時間でデザインを終わらせる、ということはなく、限られた時間のなかでもデザインは納得いくところまで時間を使います」と。
ここにもとても共感と大事な言葉をもらったなあと感じました。
本当に時間で区切ればものづくりって「これでいっか。」みたいな終わり方、いくらでもできるものと感じてます。でも、どこまで、「自分のなかにしかないそのまだめにみえないもの」を追求するか。それが「生み出される作品」となる、その向き合い方。この先も私が大切にしなくてはいけないもの、を、しっかり掴むことができました。
そんなこんなでありがたい嬉しい質問タイムを送ることができました。。♪

またまた、冒頭の質問では東川町でお直しやさんpavan-tiまいこちゃん(これまたやさしくてかわいい方!)がminaのお洋服のお直しのお話での質問があり、素敵な対話が生まれる場面があったり♪、お子様からの質問を預かってきたお母様のお話があったり、
講演そのものもそして最後の最後まで、会場一体が色でいうとレモンイエローとライムみたいな黄緑とピーチピンクみたいな色が入り混じる、楽しくて優しくて、みんながあったかい気持ちになるような雰囲気のまま終演となりました。

minaperhonenで言うとこの色合いに近いイメージ



この先のやれること

今回選んだブローチ/ 働き者のロバこそユニコーンのような存在と
これまでのはぎれがはいったもの/質感触れてさらに魅力がある

捨てられないはぎれがたくさん。服を作って事業としてはじめて私も8年経ちましたがほんとにちいさなはぎれ、捨てられません。

皆川さん「プリント、刺繍、1つの生地が生まれるまでたくさんの方が関わっている生地を、裁断を終えたあとちいさいものも一度回収して、このようにはぎれとして販売したりバッグにしたりしています」

そう、そのモノにかかる手、時間、いろんな背景を想像すれば、1つのモノの見え方が変わってくる。モノを大事に過ごせている自分は、自分のことも大切にできるようになる。そして隣の人へ、ちょっとでも優しくなれる。現在40歳の私は「たくさんの当たり前に存在しているようにみえるもの」に囲まれた、恵まれた世代と思います。
そんな私たちの世代が何を見つめ、伝えていけるか? 
私が伝えていきたいのは「ものは当たり前にあるのではなく、必ず誰かの手を通って大切につくられてきたもの」ということです。
皆川さんの想いと重ね合わせ、また強くなるもの、そんな機会に感謝しながらー自分の住む十勝で、衣、食、住、暮らしを彩るものを大切に見つめ、また作り出していくことを通していろんな方とそんなことを語ったり、プロジェクトを起こせたらいいなと感じています。

息子が大きくなるころの未来もイメージしながら、、

中富良野の森の中

今は染めのプロジェクトを新しくスタートし、地域資源から作る製品を発信していこうとしています。こちらのご案内もしっかりまもなく、、、♪
帯広での展示会は3/16,17,18を予定しています。

カタログ希望の方はメッセージください♪


ということで講演のあとは東川に住むお友達とお茶したり、旭川、富良野を堪能したりと道北もいろいろ楽しんできました。

tamjamさんにて


時間を共有できたみなさまありがとうございました。
また、こんな素敵な講演を企画してくださいました東川デザインスクールのみなさま、ありがとうございました。♪
また、足を運ぶのをたのしみにしています。
そして拙い文章ですがレポート読んでくださったみなさま、ありがとうございました。講演にきてた方と感想会などしてみたいな〜なんておもったりするのでコメントとか、DMとかで何か感じたことあったら教えてくださいね!!

これからも服作りを通して、「暮らしを問う」事、続けていきます。




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