「考えるヒント」

小林秀雄センセは、昭和の批評家であるが故に、文章が硬くて取っ付きにくい感じもするが、時に、「ほぉ、なるほどぉ」と、鋭い視点に感心することもあるのは間違いではない。

この文庫では、エッセイだが、列車の食堂車で、大きな人形を実際の息子(多分、戦死)のように扱って、食事をさせるような行為を繰り返している(多分、正気ではない)老夫婦の話が不気味で面白かった。

後、十五夜の夕に満月にお月見に興じる日本人を不思議そうに眺めるスイス人の話かな。自然の美しさの感じ方は世界で違うということだ。

「スランプは私の常態である。職業には職業の慣れというものがあるので、その慣れによって、意識の整備のために、精神を集中するということは私にはさして難儀ではない。次は、ただ待つのである。何処かしらから着想が現れ、それが言葉を整え、私の意識に何かを命じる…」

「ある対象を批評するとは、それを正しく評価することであり、そのあるがままの性質を、積極的に肯定することであり、そのためには、分析あるいは限定という手段は必至のものだ」

「言葉には形がある。歴史を感得する感情はほとんど不透明なものであり、この感情によって直に触れていると感じてる歴史が、筋の通った解釈や議論とは何か全く異なる、不透明な鞏固な実体である」…。

昔の漫画「のらくろ」を描いた田河水泡は、小林センセの義弟だったのかぁ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。