【洋画】「ハウス・オブ・マンソン」

「ハウス・オブ・マンソン アメリカが生んだ悪魔(House of Manson)」(2014年、ブランドン・スレイグル監督)。値上げしてクソ腹立つAmazonプライムにて。

チャールズ・マンソン(83歳没)とその周辺の事件は、いくつか映画化はされて観てるけど、コレは未見だった。

両親の愛を知らずに、社会から見捨てられるように育ったマンソンは、刑務所を出たり入ったりしてたが、同様に世間から捨てられたヒッピーの若者たちを“ファミリー”として受け入れて洗脳する。そして、“ヘルター・スケルター”と呼ぶ最終戦争に備えよと、ファミリーたちを狂気の行動に駆り立てる。

やはり、シャロン・テート惨殺事件がメインだが、スターを目指して自分が作った曲を認められなくて、そのことのイライラでファミリーを駆り立てるというマンソンの小物でクズっぷりが強調されてる。

映画的にはあまり面白いとはいえなかったけどね。

確かに、マンソンは、犯罪者になるしかないような環境で育っているが、ヒッピーの唱える“ラブアンドピース”の自由な世界は一見、魅力的に写るかもしれないけど、実は地獄のような世界なのだ。

なぜなら、結局、そこには歯止めの効かない欲望が全面的に現れてくるからだ。欲望は容易に狂気に変貌して、内だけで固まると、必ず外部に対して攻撃的になる。世間や社会が自分たちを攻撃していると思い込んで。

そして、内に育ったアイデンティティは個人の常識や感情、判断能力、社会性を、いとも簡単に奪ってしまうものだ。

オウムの麻原もそうだが、どんなに個人的でチンケな出来事であっても、世界を揺るがす歴史的大事件へとすり替えられていく。

誰であっても、人は自分のアイデンティティを捨て去り、別のソレに頼り切る性質を持っている。やはり狂気と正気は紙一重なのだ。

神などという概念に心酔し、背くものを弾圧・虐殺・攻撃して、時に自分の生死をかけてまで熱狂するのは、不安や不満という自身の性質に加えて、それを社会環境が後押しして、人間の攻撃的な根源となる衝動が頭をもたげてくるからではないかと思う。

さらに現代社会でも、いや現代社会だからこそ容易に出やすくなってるところもあるだろう。ほとんどのカルトのような集団妄想や集団ヒステリーは時代の転換期に多発してるし。

やはり人間は本来攻撃的なもので、日常は理性や社会性で押さえているものの、集団のカルト的熱狂下に身を置くと、容易にそれらは崩れて本来の初源的人間性が発露するものなのだ。

ということで、マンソンは、サブカルチャーの象徴的なアイコンとなった。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。