【古典邦画】「鬼婆」

1964(昭和39)年のホラー(?)映画「鬼婆」。監督は、センセーショナルな映画が多い新藤兼人。コレも「人生で観ておくべき日本映画ベスト50」に入っていた。YouTubeにて。

B級低予算っぽいけど、日本の古い怪談に、エロス、欲望、情念を交えた見事な映画だった。

舞台は南北朝時代。
男たちが戦さに駆り出され、男手を失った姑と若い嫁の2人の女。
葦が生い茂る川辺の近くに粗末な小屋を建てて住む。
戦さから逃れて川辺に来た侍(落武者)を、隠れて槍で突き殺し、身に付ける武具や刀を奪い、元締めに売り捌いて生活していた。
死体は深く掘られた穴に投げ捨てる。
姑が乙羽信子、嫁は吉村実子が演じる。
ある日、戦さから村の若い男・八(佐藤慶)が戻って来た。
嫁の夫は戦さで死んだという。
八は、若い嫁に興味を持ち、頻繁に誘うようになる。
その強引さに負けた嫁は、夜に八の小屋に行く。
そして、2人は激しく身体を求め合う。
毎夜、隠れて八の小屋に行く嫁を苦々しく思い、嫁を失うことを恐れた姑は、“不貞行為をすると仏罰が当たるぞ”と嫁を脅すが、嫁は聞かない。
姑は、嫁の夜這いを止めさせるために、落武者から剥ぎ取った般若の面を付けて、八の小屋へと走る嫁を待ち伏せして脅す。
嫁は、鬼が出た!と驚いて小屋に戻るが、ある嵐の夜、姑が付けた般若の面が取れなくなってしまう…。

若い肉体を持て余す荒々しい八と、エロス溢れる美しい肉体を持つ嫁の絡みは、汗と汚れと激しい息遣いに、モノクロによる光と影の演出もあって、めっちゃイヤらしくて素晴らしい。

それを覗き見た姑も、ムラムラして、独り、立ち木に身体を擦り付ける。八に「ワシも相手したろうか。まだ身体は若い。どうだ?抱いてみるか?」と持ちかけるが、「ババアは相手にせん」と笑われてしまう。そこから、姑の嫉妬全開となっていく。

乙羽信子も吉村実子も、オールヌードで体当たりの演技。寝てる時もオッパイ丸出しだし。

背丈まで生い茂った葦の中の風景に、口笛や叫び、太鼓のみの荒々しいBGM。そこで繰り広げる性欲と嫉妬の、女のオドロオドロしい情念の世界。

姑が、嫁を脅すために付けて取れなくなった般若の面を、嫁がトンカチで叩いてムリヤリ剥がすと、姑の顔は恐ろしくケロイド状になっていて、面は姑の嫉妬心と一体となって顔にくっ付いていた。嫁は仏罰が当たったと逃げて行くが…。

とにかく日本的情念を描いた素晴らしい映画だった。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。