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さみしさの本質に迫る 人は、なぜさみしさに苦しむのか?を読んでみた

人は、なぜさみしさに苦しむのか?この本は脳科学者である中野信子さんの著書なのですが、このタイトルが自分のアンテナに引っかかりました。自分の今の状況にぴったりとはまるため、購入し、読んでみました。

人間とさみしさ。その切っても切れない関係は、私たちの日常生活や心の中に深く根付いています。

この記事では、その感想をシェアしたいと思います。

この本は脳科学の観点からさみしさという感情に切り込んでます。さみしさがなぜ生じるのか、そしてそれを解決するためには、どのようなアプローチがあるのか。これらの問いにどのような解が得られたのかをシェアしていきます。

さみしさは生存本能

さみしさは、人間が社会的な生物として生き抜くために本能として設計された感情です。私たちは集団で生活し、協力して狩猟し、食事を分かち合い、お互いに支え合うことで生存しました。この集団での生活は、個体の安全性と生存率を高めるために重要でした。

そこでさみしさという感情が登場します。この感情は集団から孤立することへの警告として機能しました。人間が集団から離れた場合、食事や保護を共有できず、生存が危ぶまれます。そこでさみしさを感じることで、個体は集団に戻ることを促され、生存率が向上するというわけです。

つまり、さみしさは生存本能の一つであると言えます。

さみしさ=共有の難しい感情

さみしさは、他の感情とは異なり、共感されにくい感情です。なぜなら、さみしさは人によって感じ方が異なるからです。

さみしさを感じるよくあるケースとして、一人で過ごすことが挙げられますが、逆に他人と一緒にいるからこそ、分かりあえないさみしさを感じる人もいます。(私も集団の中にいると逆に孤独を感じるタイプです)

個人的にはそれが人間の感受性の豊かさにもつながっていると思えるんですよね。さみしさを感じる対象も、人だったり、社会だったり、移り変わる時の流れ、夕暮れの住宅街といったように、人により様々です。人間が持つ感情の中で、こんなに多様性のある感情って他にないんじゃないでしょうか。

という具合に同じ状況でもさみしさを感じる人もいれば、そうでない人もいます。正にさみしさは千差万別な感情です。故に共感がされづらく、扱いづらい感情といえます。

さみしさは成長と成功の原動力

さみしさは、多くの場合、ネガティブな感情として捉えられがちです。ただし、この本ではさみしさが実は個人の成長と成功に寄与する原動力であるという視点が示されています。さみしさがどのように成長と成功につながるのでしょうか?

先ほど、さみしさは人間の生存本能の一つであると書きました。能力が劣っていると集団から取り残されるかもしれない。さみしさは私達にそのような不安をもたらします。

「こんな自分では嫌だ」そんな思いは、人々に目標を設定させ、それに向かって努力する原動力となります。

さみしさとよりよく付き合うには

この本のなかで、見知らぬ人とも会話を弾ませることができる会話の達人のエピソードがあります。

「さみしさを解消するためには、親しい友達を作らないと意味がない」と真面目に考えすぎなくてもいいのです。もしかしたら、他愛ない会話のその話し相手も同じようにさみしさを抱えていることだってあるかもしれず、あなたの語りかけがその人の癒しになるかもしれないのです。

人は、なぜさみしさに苦しむのか?本文より

何気ない会話を交わすことで、自分もそうだし、もしかしたら相手のさみしさも癒すことができる。そう考えると人にもっと優しく接することができる気がしてきます。

また、この本ではイギリスでの孤独問題の対策についても触れられていました。

イギリスで行われている対策で、特に男性の孤独感の解消に効果が高いと注目を浴びたのが、「メンズ・シェッド(Men's shed)=男たちの小屋」です。メンズ・シェッドは定年後の男性が定期的に集まり、大工仕事を一緒に行う日曜大工の施設です。手を動かして一緒に物を作ることで人とのつながりや友情が生まれ、生きがいに通じるといいます。この効果は作業療法にも通じるところがあると考えられます。

人は、なぜさみしさに苦しむのか?本文より

人々が家や仕事以外で時間を過ごす、サードプレイス(第三の場所)というのも最近よく聞くようになりました。新しい人々との出会いやアイデア交換の場所という面もありますが、さみしさの解消にとても効果がありそうですね。

まとめ

この記事では、中野信子さんの本「人は、なぜさみしさに苦しむのか?」の感想を書きました。私の感想をまとめたいと思います。

  • さみしさは、私たちの生存本能の一部であり、集団から孤立することへの警告として機能。この感情は、単なるネガティブな感情ではなく、進化的な観点から見ると重要な役割を果たしている。

  • さみしさは人間の感受性の多様性を示しており、共感が難しい感情である。

  • さみしさは生存本能として、強い不安を人にもたらし、成長や成功の原動力として機能する。

  • さみしさを解消するためには、親しい友人を作る必要はなく、他人との浅い会話や新しいコミュニティに参加することが有益かも。

個人的に何気ない会話が自分や相手のさみしさも癒すことができるかもしれない、という考え方が良いと思いました。

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読んでくれてありがとうございました!

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